渋谷から世界へ 渋谷で仲間作りをリスタートするWEリーグ 6月と7月の #女子サカマガ(無料記事)
女子サッカーが渋谷に帰ってきました。全日本女子サッカー選手権大会(現・皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会)で初代王者に輝いたF.C.ジンナンは日本初の女子サッカークラブチームといわれています。その名の通り、F.C.ジンナンは1972年に渋谷区神南からスタートしました。当時の渋谷区神南には岸記念体育会館があり、その中に日本サッカー協会がありました。F.C.ジンナンの創設メンバーは日本サッカー協会の職員だったのです。
日本サッカー協会の本拠となったJFAハウスを売却するに伴い、2023年6月に WEリーグはJFAハウスから渋谷区に移転しました。7月から本格的に稼働します。今も変わらぬ渋谷区と女子サッカーとの縁を感じます。
あれから50年以上が経ち、今、渋谷区には多種多様な人が集まっています。渋谷カルチャーは世界に知られ、スクランブル交差点は海外でも有名な観光名所となっており、コロナ禍がピークを超えてからインバウンド観光客がどっと押し寄せています。
ちがいを ちからに 変える街。渋谷区
渋谷は世界を変える。
いや、「渋谷が」世界を変える。
本気でそう信じてみよう。
上記の文章で始まる渋谷区の基本構想は世界に目を向けています。そんな街にWEリーグはやって来ました。2023年6月26日に、渋谷区と連携協定を締結。そして、一般社団法人渋谷未来デザインのパブリックパートナーに参画。渋谷区から世界を変えるアクションを始めます。渋谷未来デザインは、多様性あふれる未来に向けた世界最前線の実験都市・渋谷区に集う多様な人々のアイデアや才能を、領域を越えて収集し、オープンイノベーションにより社会的課題の解決策と可能性をデザインする産官学民連携組織です。約120社のパートナー企業・団体、そして渋谷区内に多数存在する大学等が参画し、8事業13プロジェクトを展開してきました。
「渋谷区をWEリーグのホームタウンに」の意味
最も注目すべきところは、各クラブのホームタウン活動に加えて、WEリーグが渋谷区をホームタウンとして仲間づくりの活動していくという考え方です。 V・ファーレン長崎で長崎県全域21の市町を巡回するサッカー教室を展開する等、ホームタウン活動と社会連携活動の重要性を誰よりも知るWEリーグ チェア 髙田春奈さんが率いるWEリーグならではの発想といえるでしょう。WEリーグは渋谷区と女子サッカーとのタッチポイントを増やしていきます。試合を渋谷で開催することは難しいですが、共に未来を切り開く仲間を得られることが WEリーグにとっての最大のメリットです。
1993年にJリーグがスタートした際は、潜在的に存在したサッカーファンが集結し、熱狂的にJリーグの理念と興行を後押しする「リーグ全体のサポーター」になりました。残念ながら、WEリーグは、そうした共に未来を見つめる仲間の熱狂をリーグに集結させることができなかったのが、これまで最大の弱点でした。しかし、その弱点を克服できるかもしれません。渋谷へのオフィス移転を機に、WEリーグは、渋谷未来デザインを通じて共創の機会を多方面に広げることができます。これは、スタッフの人数に限りがあるWEリーグにとって、とてつもなく大きな味方を得られるチャンスです。渋谷区をホームタウンと位置付け、多様な主体と共創。ソーシャルイノベーションを起こすために、産・官・民・学と連携して活動していきます。6項目のアクションを計画しています。 世界への一歩が渋谷から始まります。
⚫ 女子サッカーを支援する企業の誘致連携、渋谷エリアの特産品・商品との連携
⚫ 渋谷の街やリソースを活用した女子スポーツの促進やジェンダー平等、ダイバーシティ&インクルージョンのメッセージ発信
⚫ 渋谷未来デザインが主催する活動であるSIWやWomen Wellness Actionと連携した多様性とインクルージョンを促進するイベントの開催
⚫ 渋谷区の学校や学生と連携したぷログラム企画やWE ACTION、WEリーグでのインターンシップ(リーグ主管試合でのアクティベーションや試合の共同運営)
⚫ 渋谷区民、渋谷区の勤務者や学生へ、女子サッカーイベントの無料招待企画、渋谷区が応援するストリートスポーツ等と連携したハーフタイムショーの実施
⚫ デジタル技術やデータ活用により、地域での新しいファンエンゲージメントの形を企画・実証
日本サッカー協会と協力し渋谷に女子サッカー拠点を構築
髙田チェアは渋谷区について「渋谷区は世界から認知をされている、日本中のいろんな人たちが憧れる場所……でありながら、解放された自由な空気感がすごくWEリーグが目指すものと近いと思った」と表現しました。WEリーグ 理事でマーケティング本部ゼネラルマネジャーの松岡けいさんは「渋谷区はマーケティングプラットフォームになる」と捉えています。渋谷未来デザインの理事・事務局長の長田新子さんは、WEリーグがパブリックパートナーに参画し、渋谷区で共に活動することは、WEリーグのファン・サポーター育成にも効果があると考えています。
「スポーツを身近で目に触れる機会をいかに創るか、選手と触れ合いインスピレーションを受けて何かをする機会をどれだけ創れるかが大事だと思います。スタジアムにあるものを街中に持ってきて見てもらうみたいなことによって、ファンやサポートしてくれる人が増えると思っています。」
渋谷区での活動は女子サッカー界全体のアクションとも連動します。例えばFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023を前にして7月6日(木)に催される「なでしこジャパン壮行会- B E YO U R B E S T S E L F -」は渋谷区が開催地となりました。若年層の普及拡大を目指し2023年からスタートするJFA Magical Field Inspired by Disneyなでしこ広場“Second Touch”の第一回は7月15日(土)に渋谷ストリーム前広場で開催予定です。まさに、長田さんの言われる「スタジアムにあるものを街中に持ってきて見てもらう」機会は、すでに用意されています。そして、WEリーグは 11月5日(日)に国立競技場で開催する2023−24 WEリーグカップ 決勝戦に渋谷区民を招待する計画をしています。この試合により、女子サッカーの面白さに気づく渋谷区民がたくさん生まれることでしょう。逆に、渋谷区で開催されるイベントにWEリーグは積極的に参加していきます。
渋谷カルチャーがサッカー界に新風を吹き込む
WEリーグ コミュニティーオーガナイザーの海堀あゆみさんは、このようなメッセージを記者会見の来場者に伝えました。
「WEリーグが、老若男女、年齢・性別を問わず、本当に皆様から愛されるように、そして、なでしこジャパン(日本女子代表)が世界一になったときのように日本だけでなく世界の皆様からも本当に愛されるように、この渋谷区から、全力でガンガン発信していきたいと思います。楽しいイベント企画を、渋谷区の皆さんと考えていきますので、ぜひ追いかけてください。」
髙田さんはあいさつをこのように締めくくりました。
「私たちが目指すのは世界です。海外リーグと渡り合えるようなリーグになる。老若男女に愛されるリーグになる。輝く女性の象徴になり、日本の社会を明るくする存在になっていきたいと考えております。これから渋谷区の皆様とさまざまなことをご一緒させていただくのを楽しみにしております。」
渋谷区から世界へ。渋谷区は、新しい女子サッカーの本拠地になります。
今月の #女子サカマガ を振り返る
FIFA女子ワールドカップのテレビ中継はなぜ決まらないのか 「放映権契約のプロフェッショナル」が考える「JFAが優先すべきこと」
FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023の放映権問題にすいて、放映権契約のプロフェッショナル・株式会社小西FCの小西孝生さんに解説していただきました。実は2023シービリーブスカップでも同様の問題が露呈していました。しかし、当時、多くの人は放映権への関心が薄く、生中継が実現しない理由を誤解していました。今回はプロフェッショナルに、その構造や社会環境を解説していただくことで、この問題への関心を高めることができました。
これまで、多くのJリーグ・クラブの取材をしてきましたが、松本山雅は独自の考え持ち松本山雅F Cレディース設立しました。「女子スポーツ支援スポンサー」というパートナー・メニューがあり、地域のスポーツ環境を改善していこうという強い意志を感じます。噂が先行した北信越女子サッカーリーグでのスタートで、公式サイトのアクセスが過去最高に迫る勢いで跳ねたとは驚きです。松本山雅のスタンスとビジョンを詳しくお伝えしています。
「WEリーグの託児室はほとんど使われていない」という先入観をお持ちの方も多いようですが、実際には、この記事で紹介したちふれASエルフェン埼玉のように託児付き観戦シートが完売しているチームもあります。2年目のシーズンで最も大きな変化を遂げたちふれASエルフェン埼玉の独自色についてお伝えしました。熊谷スポーツ文化公園陸上競技場は、最もWEリーグらしさを感じるスタジアムです。
閉幕・WEリーグ入場者数低迷の本当の理由は? 数字で検証する秋春制の影響 さらに重大な「WEリーグ3月問題」と「憧れの形成」を振り返る
WEリーグは「寒い12月と1月の集客に苦戦している」というのも、実際の数字とは矛盾する意見です。本当に入場者数が落ち込むのは3月中旬からなのです。その理由はなぜなのかを考察。さらには、女子サッカー先進国アメリカから学ぶプロ選手のあり方を提言しました。「選手たちを女子の憧れの対象に!」……そのようにテキストで訴えかける発信を目にします。しかし、それをテキストで発信するだけでは実現に近づきません。
34年の時を越え大復活し『風雲!たけし城』で活躍しS N Sを賑わせた仙石來夢さんのインタビュー記事です。バニーズ京都S Cを引退後にアイドルに転身。現在は松竹芸能でタレント活動をしています。番組の中で繰り返し「元なでしこリーガー」と紹介された意味について、改めて考えます。「サッカーに頼りたくなくてサッカーを引退した」のに「やっぱりサッカーに頼っていくのかな」と思った仙石來夢さんですが、違う感情も浮かび上がっています。
次月の #女子サカマガ をご紹介
このような記事を予定しています。一部をご紹介します。FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023が開幕します。7月は日本国内から8月は現地からの記事を盛りだくさんでお届けする予定です。仙台で開催する壮行試合も現地取材する予定です。みなさん、次月も #女子サカマガ をよろしくお願いします。
・大宮アルディージャ フットボール本部長 原博実さんが見つめてきた女子サッカー
・代表選手を輩出するJFAアカデミー福島の歩み
・日本サッカー協会は女子サッカーの競技人口を増やすことができるか
・女子サッカー選手を起用するブランドとその狙い