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田中隼磨さんも応援する松本山雅F Cレディースが目指す場所 女子サッカーで地域のトップランナーへ

2023年春、長野県の女子サッカー界に衝撃を走りました。県内のサッカー人気を二分する松本山雅が松本山雅F Cレディース設立を発表したのです。ネット上には、松本山雅F Cレディースに託す夢、思い、希望……様々な口コミが広がりました。

松本山雅には「女子スポーツ支援スポンサー」というパートナー・メニューがあります。女子サッカーだけではなく、広く女性がスポーツに取り組めるように企業に支援していただくためのメニューです。現在、6社が契約しています。こうしたクラブの取り組みも含め、今回は松本山雅が、松本山雅F Cレディースを設立することで女子スポーツにどのようなアクションを起こそうとしているのかをお聞きしました。

小林陽介さんは松本山雅でプレーした元選手。2019年から2021年3年間はコーチとして女子サッカーの指導に関わりました。2022年から松本山雅F CレディースU-15の監督を務め、今シーズンからは松本山雅F Cレディースの監督も兼任しています。そして、もう一人、N P O法人松本山雅スポーツクラブの理事長を務める柄澤深さんにもお話をお聞きしました。柄澤さんは松本生まれの松本育ち。株式会社松本山雅の取締役営業部長も務めています。スポンサー営業とホームタウン活動に従事してきました。

このインタビュー記事を読むと、もしかしたら、松本山雅F Cレディースと松本山雅のイメージが少し変わるかもしれません。

国宝松本城

U-15チーム立ち上げ4年後の松本山雅F Cレディース設立

なぜ、松本山雅F Cレディースを立ち上げたのでしょうか?

柄澤女性が松本でサッカーを続けられる環境を作っていきたいと考え松本山雅F Cレディースを立ち上げました。松本山雅F Cレディースは最終ゴールをプロチームと決めずに始めました。まずは、生涯スポーツとしての受け皿になればというところからです。

現在、女子チームはトップチームを運営する株式会社松本山雅ではなく、N P O法人松本山雅スポーツクラブで運営されています。これは、どのような理由からですか?

柄澤総合型スポーツクラブの活動の一環としてスタートしたからです。N P O法人の理事の中に娘さんが女子サッカーをしていて強い思いを持っている者がおります。その人が中心になって、まず、松本山雅F Cユースアカデミーのサッカースクールにヤマガールズクラスを立ち上げました。それから、2019年にU-15チームを立ち上げました。そのときに集まった選手たちは中学校3年から中学校1年生まで17人でした。それから4年が経ち、松本山雅F Cレディースを設立することになりました。

小林陽介さん

小林さんは、女子選手の指導をするようクラブから依頼を受けたとき、どのようなお気持ちでしたか?

小林僕は松本山雅で2年間のプレーをさせてもらいました。その後、東京(横河武蔵野F C、現・東京武蔵野ユナイテッドF C)でプレーし、いろいろなご縁をいただいたことから、また松本に戻ってきました。サッカースクールコーチ、フロントでホームタウンの仕事等を経て、立ち上がったU-15チームのコーチをすることになりました。声かけていただいたときは、もう迷うことなく「やります」と答え、話が進みました。男子と全く違う環境でスタートしたチームなので、新しく作り上げていく魅力を感じました。今は三代目の監督です。

小林U-15チームを立ち上げた当初にセレクションはありませんでした。選手の中には、これまで男子のチームで、細々とプレーしていた子たちも何人かいました。女子だけのチームでサッカーをする喜び、やりがいを感じ、一生懸命、サッカーに取り組んでいた選手の姿が印象に残っています。

トップチーム(男子)と同じようにハードワークも求めながら指導しました。しかし「サッカーだけじゃない」話も選手たちに常にしてきました。いろいろなところに気配りができる人としても成長してほしいと伝えています。

地域を牽引する女性のリーダーを育てたい

そうした選手が、高校等でのプレーを経て、今、松本山雅F Cレディースに参加してくださっているのですね。

小林少しずつ女子のサッカーのプレー環境、普及環境が良くなってきました。ただ、まだ現場に関わるスタッフが男性しかいません。ゆくゆくは、松本山雅F Cレディースに関わってくれた子たちが指導者やトレーナーとして帰ってくる場所ができればと思っています。

柄澤小林は、私と一緒にホームタウンの活動をやっていたメンバーの一人です。小林が話したように、クラブとしては、競技性だけを極めようとは全く思っていません。この地域を引っ張っていける女性のリーダーを育てていきたいと考えています。ですから、U-15チームの初年度から、選手にはホームタウン活動に参加してもらっていました。「スマイル山雅農業プロジェクト」では種まきや収穫もしてもらいました。

クラブのプロモーション活動に参加することを通じて松本山雅を知ってもらい、クラブのメンバーがどのような思いで活動しているのかに気づいてもらいました。松本山雅が地域に支えてもらっているということをすごく大事にしてもらいたいと考えてきたからです。

柄澤深さん

過去最高に迫る勢いの反響があった設立のニュース 

柄澤2023年3月29日に松本山雅F Cレディースに設立をリリースしました。S N Sを連動させている関係もあり、公式サイトのアクセスが過去最高に迫る勢いで跳ねました。ただ、皆さんの捉え方は様々でした。お隣のAC長野パルセイロ・レディースと肩を並べるようなチームを創ると捉えた方もいらっしゃいます。私はずっと「生涯スポーツの一環として松本山雅F Cレディースを始めます」と伝えてきたつもりなのですが、もしかしたら、そこがうまく伝わり切っていなかったから大きな話題になったのかもしれません。

私が最も気を遣ったのは「周囲の女子サッカー関係者に対して誤解を生みたくない」というところでした。「結局、山雅は自分たちがやりたいことをやりたいようにやっているだけでしょ」と見られたくない。あくまで、地域と共に女子サッカーのより良いプレー環境を整備していきたいです。

エグゼクティブアドバイザーを務める田中隼磨さんが、松本山雅F Cレディースに設立直後の練習現場に足を運ばれました。地元のスーパースターが駆けつけてくださったことは、U-15チームからプレーをされてきた選手の皆さんにとって、すごく嬉しいことだったのではないでしょうか?

小林目の色が変わるというか、すごく刺激にはなったと思います。

柄澤不定期ですが、最近も練習に顔を出してくれています。

小林トップチームの選手たちが身近にいることはこのクラブの提供できる価値であり魅力だと思います。ただ、選手には「これが当たり前ではない」とも伝えています。いろんな人の思いがあって、応援してくれる人がいるということを常に話しています。

松本山雅F Cレディースの環境は、北信越女子サッカーリーグの中でトップレベルだと思うので、そのことを選手たちには感じてもらいながら、ピッチで結果を出してもらうことが一番大切。勝利に向かう姿勢を見せることが、まず必要だと思っています。

田中隼磨さん

苦戦のスタートとなった北信越女子サッカーリーグ北信越2023

北信越女子サッカーリーグ北信越2023では第4節を終えて1分3敗と苦しんでいますね。

小林結果がついてきてないです。大量失点の試合もあり、選手たちも少し下を向きがちになるところがありました。もう少し互角に戦えるかなと思っていましたが、やはりそれほど甘くはない。最初から北信越女子サッカーリーグでやらせていただいていること、いろいろな人に応援していただいていることを踏まえると、早く結果に結び付けられるように指導してあげないといけない。

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