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U-20日本女子代表対決 辻澤亜唯選手のINAC神戸レオネッサが笹井一愛選手のノジマステラ神奈川相模原を下し先にリスタート #女子サカマガ WEリーグ ピックアップ(無料記事) 

INAC神戸レオネッサ、ノジマステラ神奈川相模原、それぞれのリスタート 

2024年4月21日に相模原ギオンスタジアムで行われた2023−24 WEリーグ 第16節は前節で初黒星を喫したINAC神戸レオネッサが快勝。0−3でノジマステラ神奈川相模原を圧倒し、逆転優勝に向けリスタートしました。 

力の差は歴然だった両チーム 

22分に守屋都弥選手が右サイドからペナルティーエリア脇の奥深くに侵入し鋭いクロス。これを左の大外からペナルティーエリアに入り待ち受けていた北川ひかる選手がヘディングシュート。ゴールキーパーの岩崎有波選手が辛くも防いだものの、この攻撃を皮切りにINAC神戸レオネッサの猛攻が始まりました。 

先制点を決めた守屋都弥選手(I神戸) 写真提供:WEリーグ TOP写真も

どうしても勝ち点3が必要だったINAC神戸レオネッサ 

先制は38分。左サイドからの狙い済ましたグラウンダーのクロスを、ゴール前中央に走り込んでいた守屋選手が合わせました。アメリカ遠征を含む過密日程を戦う守屋選手は、明るい表情で試合後に話してくれました。勝った試合と負けた試合では疲労の感じ方が違います。 

「ここからは、絶対に落としてはいけない試合が続きます。浦和にプレッシャーを与えたいので、勝ち続け、直接対決(第21節)で絶対に勝ちたいと思います。」 

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次代を担うアタッカーが切磋琢磨するWEリーグ 

先日、Uー20日本女子代表監督の狩野倫久さんが筆者に声をかけてくれました。Uー20日本女子代表の選手たちは、ウズベキスタンで素晴らしい経験をしました。そして、帰国後にWEリーグで活躍の機会を得て挑戦を続けています。ぜひ、注目してほしいとのことでした。 

この日、INAC神戸レオネッサは2トップの一角に辻澤亜唯選手を起用しました。ノジマステラ神奈川相模原はワントップに笹井一愛選手を起用しました。 AFC U20女子アジアカップ ウズベキスタン2024を戦ったチームメイトが対戦することになりました。笹井選手は、辻澤選手のスタメン入りを知り、心高鳴りました。 

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得点まであと一歩のところまで迫った辻澤亜唯選手(I神戸) 

「アンダー世代で、すごく上手いと思っていた選手です。対戦相手として意識してプレーすることになったのは初めてで、負けたくない気持ちでした。とても楽しみでした。辻澤選手のプレーは、守備をする際に、すごく嫌だったので、自分もああいう選手にならなければと思いました。」 

対する辻澤選手はチャレンジ精神を胸に、ディフェンスラインへ勝負を仕掛け続けました。最もスタンドを沸かせた選手です。しかし、試合後は、予想に反して反省の弁が多かったです。 

「まだまだ学ぶことが多いです。点を決めるべきところが何回もあったのですが、決め切れる能力がまだない。もっと練習して磨きたいと思っています。」 

自分の長所を最大限に出せるよう、毎日のトレーニングでアピールを続け、この日、初めてのスタメンを勝ち取りました。 

ジョルディ フェロン監督は、試合後の監督会見で取材陣からの質問が辻澤選手に集中すると、満足そうな笑みを浮かべました。「持っているもの」をトレーニングで示した辻澤選手を起用し、それを取材陣が高く評価したからでしょう。 

「この試合に臨むにあたり、辻澤選手を上手く使うことを求めていました。ワイドハーフで活躍できる選手です。でも、今のチームに彼女がワイドハーフでプレーできるポジションはありません。ですからインサイドハーフで練習してもらいました。ボールを受けて勝負するプレー、飛び出すプレーをかなり上手くやってくれます。今後、学んでいくことが多いと思いますが、プレーしていくことで、将来、もっともっと有望な選手になっていくと思います。」 

テクニカルダイレクター兼監督代行を務めるノジマステラ神奈川相模原の小笠原唯志さんも若い選手のプレーを楽しみにしています。 

「若い笹井や榊原(琴乃)に期待しています。彼女たちが伸びていくとチームは変わります。」 

笹井選手と辻澤選手は、これから何度も対戦するはずです。共に成長し、ファン・サポーターの心に何を残してくれるのかが楽しみです。 

奮闘する笹井一愛選手(N相模原)と違いを見せた松原優菜選手(I神戸) 写真提供:WEリーグ

トレーニングの成果を表現できなかったノジマステラ神奈川相模原に大きな課題 

2点目には、INAC神戸レオネッサらしさが現れました。フリーキックの縦パスを受けた松原優菜選手が、素早く前にボールを送り、これを受けた成宮唯選手が決めました。アンカーを務める松原選手は、INAC神戸レオネッサのキープレーヤー。パスの起点となりゲームをコントロールしています。ノジマステラ神奈川相模原は、マークを受け渡すトレーニングしてきましたが、このプレーでは、なぜか全くプレッシャーをかけることなく松原選手を自由にしてしまいました。 

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プレーの熱量が、どれほどスタンドに伝わったのだろう?という問い 

小笠原さんはノジマステラ神奈川相模原の監督代行に就任後「一番残念なゲームになった」と、来場したファン・サポーターにお詫びしました。「熱意というか汗をあまり感じなかった」と試合を振り返りました。そして、選手同士が協力し前を向いてプレーすることが必要だと考えています。 

試合途中で3バックに変更したのはピッチ上の選手による発案で、小笠原さんはそれを評価しますが、そうした積極的な姿勢に乗り切れなかった選手が存在したことも見逃せない事実です。 

「僕が与えるものではなく、選手が自分たちで作り上げるものです。ベテランを中心に課題を深掘りする話ができていません。ベテラン選手は自分のミスもあるから、ちょっと言い切れない……ではなく、ミスをしようが何をしようが引っ張るのが仕事です。若手選手も、誰かのミスを気にしすぎることなくついていく……『やりましょう!』という結束を作ってほしいです。 」

巻き返しを誓う川島はるな選手(N相模原) 写真提供:WEリーグ

理想と現実のギャップを埋める必要があるノジマステラ神奈川相模原 

取材の最後に、ベテランの川島はるな選手に聞いてみました。質問は「思い切ったプレーを出すために何が今必要なのか」ただ、それだけです。川島選手は、長く沈黙しました。そして、力強い口調で答えてくれました。 

「自分が良いプレーをするとかではなく、とにかくチームとして勝つ……何が何でも勝ちたいというベクトルをチーム全員で持つことが一番大事だと思います。」  

その言葉は、きっとチームメイトとファン・サポーターに響きます。INAC神戸レオネッサと同様に、ノジマステラ神奈川相模原にもリスタートが必要です。  

(2024年4月21日 石井和裕) 

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