WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグのダブルヘッダーは告知効果が大きい ただし集客成果を生み出せてこなかった 理由と改善方法をサポーター視点で考える 【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】

2022−23 YogiboWEリーグではゴールデンウィークに2つの「ダブルヘッダー」が開催されました。いずれもJリーグの試合が第一試合でWEリーグの試合が第二試合。2023年4月29日に開催されたINAC神戸レオネッサとヴィッセル神戸のダブルヘッダーの第二試合の入場者数は3千12人。月3日に開催されたマイナビ仙台レディースとベガルタ仙台の第二試合の入場者数は1千721人でした。第二試合の入場者数は、1年目のシーズンに開催されたダブルヘッダーと同様に多くありませんでした。

しかし、画期的な取り組みも生まれました。マイナビ仙台レディースの男女「ダブルヘッダー」は両試合のマッチスポンサーを株式会社エス・ブイ・シーホールディングが務めました。これは新しい挑戦です。なぜなら、2つの試合の主催者はベガルタ仙台とマイナビ仙台レディース。別のクラブだからです。

今回は男女「ダブルヘッダー」の歩み、効果、そして、効果を高めていくための方法について提言します。

1990年台から繰り返されてきた男女「ダブルヘッダー」

以前から、男女「ダブルヘッダー」は多く開催されてきました。古くは1994年9月27日に雨の国立競技場で開催された第12回アジア競技大会壮行試合となった男女オーストラリア代表戦。女子サッカーを初めて見る人がほとんどだったスタンドから女子の試合でも大きな日本コールが湧き上がり、白熱したゲーム展開となっていったことを覚えています。野田朱美さん、高倉麻子さん、当時の女子サッカーの二大スターが活躍し2−2で引き分けました。第一試合(日本女子代表)は16時30分キックオフ、第二試合(日本代表)は19時キックオフで、インターバルは30分間でした。

2012年7月11日に国立競技場で開催された『キリンチャレンジカップ2012』の第一試合は17時10分キックオフ。なでしこジャパン(日本女子代表)がオーストラリア女子代表を3−0で撃破する大勝。第二試合のU-23日本代表×U-23ニュージーランド代表は19時55分キックオフ。インターバルは45分間でした。

最も成功した事例として多くのサッカー関係者の記憶に残るのが2011年8月6日に東北電力ビッグスワンで開催された男女「ダブルヘッダー」です。なでしこリーグの入場者数2万6049人は今も更新されていない女子サッカー国内リーグの最多入場者数記録です。

2011プレナスなでしこリーグ第2節
アルビレックス新潟レディース × INAC神戸レオネッサ
15時30分キックオフ 入場者数2万6049人

(インターバル90分間)

2011Jリーグディビジョン1第20節
アルビレックス新潟 × 清水エスパルス
19時キックオフ 入場者数3万7830人

当初、なでしこリーグは補助競技場の東北電力スワンフィールド(約2千人収用)で開催を予定していましたが、なでしこジャパン(日本女子代表)が世界一になると「女子の試合もビッグスワンで見たい」という声が上がり試合会場を変更。男女「ダブルヘッダー」が実現しました。第二試合(Jリーグ)の入場者数3万7830人はアルビレックス新潟にとってこのシーズンの最多入場者数でした。アルビレックス新潟の、このシーズンの1試合あたりの平均入場者数が2万6049人だったことを考えると、女子サッカーの試合も楽しみに、いつもより1万人以上のファン・サポーターが多く集まったという計算になります。

第一試合が女子サッカーの男女「ダブルヘッダー」で集客できるのには理由がある 

WEリーグ開幕以前では、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースも2019年5月19日にフクダ電子アリーナで男女「ダブルヘッダー」を開催し成功しています(https://www.youtube.com/live/4F9Ejnl1-9Y?feature=share)。2019プレナスなでしこリーグ1部 第節・INAC神戸レオネッサ戦はJ2・F C岐阜戦とのダブルヘッダーです。第一試合となった12時キックオフ、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの試合の入場者数は3千306人でした。同年のホームゲームの平均入場者数が1千70人であったことを考えると、いつもの3倍のファン・サポーターの前でプレーできる機会を選手に提供できました。集客成果が生まれた原因は女子の試合を第1試合に設定できたからです。

フクダ電子アリーナ

WEリーグ以前に開催されたリーグ戦の男女「ダブルヘッダー」の多くは女子が第一試合。かつての皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会は天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会と同日の午前中に開催されていた男女「ダブルヘッダー」でした。では、第一試合と第二試合では何が違うのでしょうか。女子が第一試合の男女「ダブルヘッダー」を観戦した経験のあるファン・サポーターに聞いてみました。

理由1 男女両チームを応援したかった。

理由2 自由席全盛の時代は開門が早まれば早く行く。

多くの男女「ダブルヘッダー」観戦を経験されているファン・サポーターは記憶されていると思います。第一試合のスタンド風景は、発表される入場者数よりも寂しく感じます。なぜでしょう。それは、かなりの人数のファン・サポーターが試合を観戦せず、スタンド外のコンコース等でおしゃべりを楽しんでいるからです。彼らにとっては、サッカーそのものよりも、いつもの仲間と一緒に過ごす時間が大切であったり、目当ての第二試合のために力を温存することを優先したり、それぞれの理由があって第一試合を観戦しないのです。つまり、男女「ダブルヘッダー」開催により開門が早まれば、希望する自由席を確保するためスタジアムに早く来ざるを得ない……それが、女子が第一試合の男女「ダブルヘッダー」での集客要因の一番手でした。

2シーズンに渡り、WEリーグでは女子が第二試合の男女「ダブルヘッダー」が開催されてきました。開催前から、その集客効果に大きな期待を抱く女子サッカー関係者もいましたが、男女「ダブルヘッダー」の観戦経験が豊富なファン・サポーターは、あまり期待しておらず、その意識……というより経験値に大きな乖離があった印象です。

ノエビアスタジアム神戸

集客だけが目指すべきゴールではない男女「ダブルヘッダー」

では、これまで開催した男女「ダブルヘッダー」の効果が薄いかというと、そのようなわけではありません。いつもは女子の試合に無関心のJリーグのファン・サポーターと接点を設けることができるという意味では良い機会作りになります。日頃からJリーグを観戦するファン・サポーターに対して、女子サッカーの存在を告知するP R効果は十分にあったものと考えられます。

(残り 3352文字/全文: 6489文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ