WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグの国際女性デー ハードルを一気に下げた2024年 地域との関係強化に役立つ女子サッカーならではの取り組み 

TOP写真提供:WEリーグ 国際女性デー  Xーgirl × WE LEAGUE 

女子サッカーから、誰もが輝ける社会の実現をめざし各地でチームが活動 

3月8日は国際女性デーです。女性たちの勇気と決断を称える日とされています。国際女性デーは女性の地位向上や男女平等を目指すだけではなく、様々なジャンルで活躍する女性をサポートすることで人々が暮らしやすい世界を目指すものです。 

1904年3月8日にニューヨークで行われた婦人参政権を求めたデモが、この日の起源です。1975年に国連によって制定されました。 

『国際女性デー  Xーgirl × WE LEAGUE』の取り組みとして配布された国際女性デーのシンボルカラーのリストバンド

未だに解決していない日本社会の課題が凝縮した日本の女子スポーツ 

 WEリーグでは発足当初から、この国際女性デーを大切な日として、さまざまな施策を投入してきました。しかし、昨年は、各チームの取り組みや発信が目立たず、やや後退した印象となりました。今年はどうだったのでしょうか。ネットでの発信、試合会場での取り組み等をレポートします。 

女子スポーツ振興には日本社会全体に変化が必要 

まず、女子サッカーと「一人ひとりが輝く社会」の関係を確認しましょう。女子スポーツの振興や女子リーグの集客には見えない壁があります。女子サッカーだけではありません。筆者はVリーグ(バレーボール)理事、Wリーグ(女子バスケットボール)事務局長、大学の研究者とディスカッションする機会を得ましたが、行き着くところは「日本の社会全体がもっと女性の活躍しやすい環境にならないことには女子スポーツは普及も集客も限界に打ち当たる」という結論でした。 

WEリーグから始まる女の子の夢 思わぬ副産物が生まれる予感 ALL WE ACTION DAY 渋谷と相模原 

女子スポーツの課題に目を向けるとジェンダー平等の意味がよくわかる 

例えば、女子サッカーでいえば女子中学生のプレーする受け皿が少ない「12歳の壁」。そして、中学校や高校に新たに女子サッカー部を創設しようとしてもすでに存在する男子の部活でグラウンドが埋まっているので空きがなく実現しないといった問題は、これまで全国に多く見られました。これはサッカー以外の競技でも共通で女子スポーツ特有の問題です。仕事でいえば「実況アナウンサーは男性の仕事」という思い込みがそれに類似します。 

偶然ではない女子サッカーの強豪国の多くがジェンダーギャップ指数上位の国 

日本のジェンダーギャップ指数が125位で過去最低となったことからわかるように、日本社会には、残念ながら根強く男性優位が残ります。グラウンドの例のように先に社会進出した男性の既得権が重視されがちです。スポーツでもビジネスでも、男性では当たり前にできることを同じように後発の女性がしようとしたときに、思わぬところから抵抗に遭うことが多々あります。 

女子サッカーの強豪国は、一部の例外を除いでジェンダーギャップ指数上位の国です。FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023に出場した強豪国といわれる国の中でジェンダーギャップ指数が50位以下の国はブラジルと日本しかありません。これは偶然の相関関係ではありません。ジェンダーギャップ指数上位の国は、社会全体で女性の活躍の場を広げ、それが競技人口の増加や競技力向上につながってきたのです。 

FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023で準優勝したイングランド(英国)はジェンダーギャップ指数15位

女子サッカー大国のアメリカは50年以上前に改革、スペインは近年に大変革 

アメリカでは、タイトル・ナイン(Title IX of the Education Amendments of 1972)という法律が成立したことで、女子スポーツが飛躍的に発展しました。なんと50年以上も前の1972年の出来事です。 

米国女子代表が世界最強に向う第一歩 タイトル・ナイン(Title IX)成立50周年 日本人との意外な接点

スペインではEU基準に合わせるため、近年、人権をはじめとする社会の仕組みをアグレッシブに大変革してきたことで女子スポーツに大規模な投資が行われ、スペイン女子代表は世界の頂点に立ちました。 

ビジャレアルC Fフットボール・マネージメント部 佐伯夕利子さんが語るスペイン女子サッカー躍進の本当の理由 前篇 日本が突きつけられた欧州の現実

「女性がスポーツを楽しむのは当たり前」「世界で最も人気のあるスポーツであるサッカーをプレーしたい女性がいたら男性と同じように誰もがプレーできる環境を提供すべき」が世の中の常識となるべきです。そうすれば、女性であることを理由に、やりたいことを断念せざるを得ない人が減少します。「一人ひとりが輝く社会」に近づきます。そして、競技人口が増えれば、WEリーグの集客や女子サッカー全体の強化にも役立っていきます。

そのためには、制度、法律をはじめとする社会変革が必要です……日本政府がスポーツの成長産業化を方針として定め支援したことで全国にアリーナやスタジアムが建設されたように。 

 

WEリーグ各チームによる発信はミモザのフレームで 

では、まず、国際女性デーにおける各チームによるネットでの発信を見ていきましょう。WEリーグの広報担当者は多忙です。そのためか、昨年は、多くのチームが国際女性デーに意思表示せず、社会から注目を集める手段を一つ放棄してしまったように見えました。今シーズンは、WEリーグが、チームごとに手軽に発信できるようサポートしたこともあり、発信するチームが増えました。WEリーグアプリ内に実装されているフォトフレーム機能をアップデートし、特別フォトフレームを提供したのです。 

各チームのSNS発信 

マイナビ仙台レディースは、唯一、Xおよびインスタグラムの発信がありませんでした。INAC神戸レオネッサのポストは他のチームと比べて遅く22時なので気づいていない人が多かったかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男性の視界には入りにくいのですが、WEリーグのスタートで勇気やチャンスを得られた人がたくさんいます。大宮アルディージャVENTUSのスタジアムDJを務める國領浩子さんも、その一人です。こうした社会へのポジティブな影響についてWEリーグ関係者は胸を張って良いと思います。 

 

 

スタジアムでの取り組みはファン・サポーターと地域への意思表明に  

続いては、スタジアムでの取り組みについてレポートします。取材したのは2024年3月3日に相模原ギオンスタジアムで開催されたノジマステラ神奈川相模原VS日テレ・東京ヴェルディベレーザと3月10日に熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で開催されたちふれASエルフェン埼玉VSノジマステラ神奈川相模原です。 

相模原ギオンスタジアム

ノジマステラ神奈川相模原は相模原市長・市民と共に歩む意思を表明 

相模原ギオンスタジアムでは、国際女性デーを祝した3つの取り組みの他に相模原市民DAY、試合当日にお誕生日を迎えるマスコット応援団長・ももちゃんのお祝いイベント行われました。 

国際女性デーの象徴・ミモザの苗木を配布

パートナー企業である石井造園株式会社の協力により国際女性デーの象徴であるミモザの苗木をファン・サポーターに進呈しました。 

先着200名様が対象ということで、早くにスタジアムに来場された方に嬉しいプレゼントとなりました。予想よりも大きな苗木に驚く方もいらっしゃいました。 

石井造園株式会社の協力による苗木の無償配布 提供:ノジマステラ神奈川相模原

なぜ国際女性デーにミモザなのでしょうか。イタリアでは国際女性デーが「ミモザの日」としても知られており、母親や妻、友人、会社の同僚など女性に愛や幸福の象徴でもあるミモザが贈られてきました。 

(残り 1971文字/全文: 8214文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ