WEリーグから始まる女の子の夢 思わぬ副産物が生まれる予感 ALL WE ACTION DAY 渋谷と相模原
ALL WE ACTION DAY全国13箇所で一斉開催から見えた未来
一人でも多くの女の子の夢を叶えるために
選手たちが真剣な表情で語り続けたALL WE ACTION DAYのトークイベントは、この記事のトップの写真のように笑顔でフィナーレを迎えました。日本の女子サッカーは2024年2月24日(土)からの女子オリンピック サッカートーナメント パリ 2024最終予選を控えています。対戦相手はDPR KOREA女子代表です。かつて、20年前に「伝説の北朝鮮戦」で朝鮮民主主義人民共和国(DPR KOREA)女子代表を迎え撃ったレジェンド・山郷のぞみさんが壇上に登り、なでしこジャパン(日本女子代表)に選出された山下杏也加選手を激励しました。オリンピックは女子サッカー選手にとって夢の大舞台です。
WE ACTION DAYとは何か?WEリーグは、このように定義しています。
WEリーグに所属する選手、クラブ、そして、サポートするパートナー企業を始めとする様々な人が、リーグの理念「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する。」の実現のために輪となり、私たちみんな(WE)で起こす行動(ACTION)です。
WE ACTION DAYの存在意義は「女子サッカーならではの取り組み」
サッカーというスポーツがそうであるように、何事にも必ず相手が存在し競合します。WE ACTION DAYはJリーグとも他の社会貢献活動とも異なる独自性を打ち出しています。
今シーズンのWEリーグは2024年2月10日をALL WE ACTION DAYと定め、全国13箇所で一斉に活動を行いました。今回は3シーズン目のWE ACTION DAYについてお伝えします。
筆者は渋谷で開催されたトークイベントを取材しました。そして、午前中に行われたノジマステラ神奈川相模原によるWE ACTION DAYも取材し、これまでにないWE ACTION DAYの未来を感じました。ここから、思わぬ副産物が生まれる予感がします。
渋谷スクランブルスクエアで語られた選手のストーリー
渋谷スクランブルスクエア15階にある渋谷QWS スクランブルホールでは13時からトークイベントが開催されました。WEリーグ各チームから選手1名ずつが参加しています。
マイナビ仙台レディース 茨木美都葉選手
三菱重工浦和レッズレディース 水谷有希選手
大宮アルディージャVENTUS 杉澤海星選手
ちふれASエルフェン埼玉 浅野菜摘選手
ジェフユナイテッド市原・千葉レディース 蓮輪真琴選手
日テレ・東京ヴェルディベレーザ 西川彩華選手
ノジマステラ神奈川相模原 常田菜那選手
AC長野パルセイロ・レディース 橋谷優里選手
アルビレックス新潟レディース 武田あすみ選手
セレッソ大阪ヤンマーレディース 福永絵梨香選手
INAC神戸レオネッサ 山下杏也加選手
サンフレッチェ広島レジーナ 小川愛選手
WEリーグでプレーする選手となった彼女たちは「夢を叶えた女性」の代表です。登壇した選手は、自らの持つストーリーを話しました。多様性あふれるその姿が、これから夢を追いかける女の子たちにキッカケを与えてくれるはずです。
確立されてきた女子サッカー選手という職業
水谷有希選手(浦和)は「誰かの憧れの存在になりたい」と話しました。幼少期を東南アジアで過ごした小川愛選手(S広島R)は、言語や国籍、宗教を超えて人々をつなぐサッカーの素晴らしさを実感してきました。サッカーを通して社会に貢献したいと考えています。
「アーティストの方が本当に全力で楽しんでるライブを見て元気をもらえるのと同じように、自分たちサッカー選手も試合を本気で楽しんでいる姿を見せていきたい」と話したのは杉澤海星選手(大宮V)です。
そうした話を聞いていると、やっと女子サッカー選手が職業として認知されてきたと感じます。ただ試合をエンターテイメントとして見せる以上の役割や魅力が女子サッカー選手にはあるのです。
参加した選手は成功者。各々の個性と決意
ほとんどの選手がパンツスーツで臨みましたが、特に目を引いたのはAC長野パルセイロ・レディースの橋谷優里選手です。橋谷選手のポジションはディフェンダー。身体を大きく見せてピッチで対戦相手と勝負するポジションです。
「かっこよくピシッとしたいと思ったので、ファッションは自前のスーツ一択でした。自分の場合は身長を高く見せた方が目立ってかっこいい感じになると思いヒールのある靴にしました。」
細身のフレアパンツから覗くパンプスが、髪の色以上に橋谷選手を伝える表現手段となりました。
「私たちは、職業が女子サッカー選手なのでスタジアムでプレーすることが当たり前になっています。育成年代の子たちがスタジアムに入ったとき、スタンドを見渡して感動している姿を見ときに(自分たちは注目されている存在なのだと)実感しますね。いろいろなことを伝えられる選手になりたい。人としてもそうなりたいと思います。」
女子サッカー選手という職業に限らず、性別による壁は低くなり、今まで「女の子だから無理」「女の子らしくない」と思われていた夢でも実現できる可能性が少しずつ増してきました。
水谷有希選手(浦和)は27歳。アマチュアリーグだったなでしこリーグの時代と今との違いを教えてくれました。
「昔、自分を個人的に応援してくれる人は、本当に身内が多かったです。今は、私と直接的な接点のなかった人が個人の応援グッズを買ってくださったり応援してくださったりすることが増え『プロサッカー選手なんだな』と感じます。」
小川愛(S広島R)は、女の子たちの視線を感じます。広島県では選手が頻繁にテレビに登場し、注目を集める機会が多くなっています。
「サッカーをやっている女の子に『どうしたら上手くなれますか?』と質問されます。会話の中から、広島の女の子が私たちを目指してくれていると感じることが増えました。」
杉澤海星選手(大宮V)は、お子さんから人気があるそうです。ピッチとスタンドの距離が近いNACK5スタジアム大宮では、選手に声援がよく届きます。
「スタジアムに小学生くらいの少女サッカーチームが見に来てくれたとき、こちらから手を振ると、すごく喜んでくれます。『杉澤選手!」「海星ちゃん!』と呼んでくれるのがすごく嬉しいです。」
怪我をしている選手の特別な思い
ウィンターブレイクも後半に入り各チームが2023−24 WEリーグ再開に向けトレーニングを行っています。今回登壇した12人の選手の中には、怪我で戦列を離れている選手が何名か含まれています。
茨木美都葉選手(マイ仙台)は、この日を特別な思いで迎えました。茨木選手は日体大FIELDS横浜(現・日体大SMG横浜)で主将を務めていた2020年に右膝前十字靱帯を損傷し長期離脱した経験があります。それでも怪我が完治する前にアルビレックス新潟レディースと契約し、迎えた2021ー22シーズンのWEリーグで17試合に出場しました。現在、マイナビ仙台レディースに所属していますが、今シーズンの開幕前に再び右膝前十字靱帯を損傷。今は、まだ戦列に復帰していません。
「今の私のように怪我をしてピッチで活躍できない選手は、WE ACTION DAYやスタジアム外の活動が『自分の価値を証明できる機会』になります。私は積極的に取り組みたいと思っています。女子サッカー選手はプレーを見せるのが、もちろん一番かもしれないですが、それができないときに『自分はどうするべきか』自ら考えなければいけない。今回、クラブが自分をALL WE ACTION DAYに参加させてくれたことに感謝したいです。
スタジアムに若いお客さんや小さなお子さんが増えていると思います。私たちが小さい頃、憧れの選手を見ていたことが、今、逆の立場になって起こっていると思います。(女の子にとっても)サッカー選手が憧れの職業になるように、これから先も、私たちがやらなきゃいけないことを継続してやっていけたらと思います。」
エリザベスこと福永絵梨香選手(C大阪)は巧みな話術で会場を沸かせました。プロリーグの女子サッカー選手であることに確かなやりがいを感じています。
「小学校でのサッカー教室が終わった後に『やってみたら楽しかった』『サッカーをちょっとやってみようかなと思いました』という声を聞いたり、その後、その女の子にサッカースクールに来ていただいたりして、自分がキッカケを創ったことがいくつもあります。『女の子の夢につながる貢献』にやりがいを感じています。」
無限の可能性と拡張性を秘めたノジマステラ神奈川相模原のWE ACTION DAY
渋谷でのトークイベントが始まる4時間前に、相模原市のユニコムプラザさがみはらでノジマステラ神奈川相模原のWE ACTION DAYがスタートしました。参加したのはWEリーグに所属するトップチーム、ドゥーエ(U-18)、アヴェニーレ(U-15)チーム、スクールの選手たちです。4つのカテゴリーの選手が混在する13グループを作り「目標設定」に関するワークショップを行いました。
ここからはノジマステラ神奈川相模原の素晴らしいプログラムについてお伝えします。
トップチームの選手がした経験自体に価値がある
ノジマステラ神奈川相模原のWE ACTION DAYには、華やかなイベントも手の込んだ演出も必要ありませんでした。極めてシンプルなプログラムです。
ファシリテーターはNPO法人ユメイク.の飯島沙織さん。ノジマ相模原ライズ(アメリカンフットボール・Xリーグ1部)の元アシスタントマネージャーで、相模原市をホームタウンとするスポーツチームや相模原市に所縁のあるアスリート等と連携したこころの教育事業を展開しています。
ワークショップでは、参加者がグループ内でディスカッションしながら「今の目標、やってみたいこと」「なぜ、その目標を達成したいと思ったのか」等、4つの項目を細かく書き出していきます。
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