WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグ3連勝で5位浮上 「耐えて勝ち点」から「攻めに転じて勝ち点」へ ちふれASエルフェン埼玉の成長と思想家・フリードリヒ・ニーチェの引用 

4バックへの移行、積極的な選手交代……ちふれASエルフェン埼玉からWEリーグ成長を感じる 

ちふれASエルフェン埼玉が躍進しています。2023−24 WEリーグ第9節を終えて5位に浮上。皇后杯 JFA第45回全日本女子サッカー選手権大会では準決勝に進出しました。 

過去2シーズンは WEリーグで最下位に甘んじてきましたが今シーズンは違います。第8節のノジマステラ神奈川相模原戦は2−1の逆転勝利。ビッグ3の一角である4位の日テレ・東京ヴェルディベレーザを勝ち点差2の射程圏内に捉えました。 

ボール支配率は12チームの最下位だが順位は5位 写真提供:WEリーグ TOP写真も

5バックで耐え続けるサッカーだった今シーズンのちふれASエルフェン埼玉  

WEリーグは世界の女子サッカーの潮流を察知し、それを取り入れ進化してきました。できるだけ相手陣でボールを即時奪回し、ショートカウンターで相手ゴールに迫るのがトレンドとなってきました。最終ラインを高く上げ、コンパクトな陣形で相手を自陣に入れさせないのが王道です。例えば、三菱重工浦和レッズレディースは自陣サード(ピッチを三分割したときの自陣寄りのエリア)でボールをリカバリーした比率は32%。アルビレックス新潟レディースは33%。INAC神戸レオネッサは37%です。 

一対一の守備に強い選手を揃えた5バックが特徴 

ちふれASエルフェン埼玉は自陣サードでのボールをリカバリーした比率が上位チームよりも多い43%。これは最終ラインに5人の選手を並べ自陣で守る方法を採用しているから生まれた数字です。5バックの両サイドには一対一の守備に強い金平莉紗選手と佐久間未稀選手を主に起用しています。 

数字に表れている通り、ちふれASエルフェン埼玉は対戦相手の猛攻を少し引き気味に待ち構え、少ないチャンスをモノにして勝ち点につなげるサッカーをしてきました。ウィンターブレイク前の第7節までの得点は5。失点は7。その失点のうち4は76分以降ですから、いかに耐え切れるかが、このチームの見どころといえました。 

相手を前進させない強さが必要となるちふれASエルフェン埼玉の中盤3枚 写真提供:WEリーグ

自陣前のスペースを埋める「リアルサッカー」で相手チームの隙を突く 

ちふれASエルフェン埼玉を率いる監督の池谷孝さんは66歳。女子チームの監督をするのは初めてです。これまでは、主に育成年代の指導でキャリアを重ねてきました。就任当初は4−3−3の布陣を採用していましたがWEリーグ特有のプレスを受け、押し込まれ失点することが多かったため5−3−2を基本陣形としました。 

「他の(個々の選手の技術が特に高い)チームと同じようなサッカーをやると、傘下に入ってしまうので、他のチームとは違う、相手チームの隙を突く『リアルサッカー』をやっています。 

これからどんどんとレベルアップしてくると思いますが、今の女子サッカーは、スペースを埋められると、なかなか自由にプレーできな傾向がある。そのため、守備のところはしっかり固めて、素早いカウンター的なスペースを使った攻撃ができればと考えております。」 

例えば、日テレ・東京ヴェルディベレーザはちふれASエルフェン埼玉の5バックを大の苦手としており、今シーズンの対戦成績は日テレ・東京ヴェルディベレーザの0勝2敗1分(うち1敗は延長戦)です。 

ノジマステラ神奈川相模原の攻勢に耐えたが前半ラストプレーで失点 

第8節で対戦したノジマステラ神奈川相模原でテクニカルダイレクター兼監督代行を務める小笠原唯志さんは、ちふれASエルフェン埼玉の5バックの特徴を分析し、明確な狙いを定めて試合に臨みました。 

「サイドを突破すること、それから、サイドが突破した後に、もう1回やり直して楔を打っていくことです。(最終ラインの)5枚と(中盤の)3枚がゴール前に並ぶので、中央はなかなか難しい。中盤くらいからクロスを入れてしまうと跳ね返されるので、1回(相手のラインを)下げておいて、深いとこからクロス入れるか、やり直して(パスを下げ)目線を変えて入れるクロスを狙っていました。」 

ノジマステラ神奈川相模原の榊原琴乃選手は、試合後に前半のプレーを振り返り、相手の嫌なところにパスを入れながら多くのチャンスを創れたと考えていました。前半のラストプレーに不用意な反則から得たフリーキックが先制点につながり、1−0で試合を折り返すことになりました。 前半はノジマステラ神奈川相模原が優位に試合を進めました。

守備から攻撃への切り替え時に前線と最終ラインをつなぐ重要な役割を担ってきた園田悠奈選手(EL埼玉) 写真提供:WEリーグ

5バックにこだわることなく選手交代から逆転へ 

「今日は1−1の引き分けで良いよ」という指示の意味 

池谷監督は、常に本音を隠さない「昭和」の親父や学校の先生を感じさせるキャラクターですが、この試合ではハーフタイムに打ちひしがれて戻ってきた選手に、一風変わった指示を出しました。「今日は1−1の引き分けで良いよ」と話したのです。 

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