ほぼ公開【マリノス航海誌】[舩木渉コラム]”大一番”神戸戦の敗因と教訓(前編)武藤嘉紀の言葉の重み
タイトルを左右する大一番と言われたヴィッセル神戸との首位攻防戦。横浜F・マリノスは悔しい敗北を喫しました。微妙なジャッジがマリノス側に転ばないシーンもいくつかありましたが、出足の鋭い神戸に対して押し返すことができず、内容的にも妥当な結果だったと言えます。
気鋭の”マリノス番”舩木渉記者が、水沼宏太の証言を軸にこの戦いを振り返ります。
取材&記事:舩木渉
【前編】武藤嘉紀の言葉の重み
試合終了と共にピッチに倒れ込んだ選手の数が、戦いの激しさを物語っていた。とりわけ多かったのはヴィッセル神戸の選手たち。試合後、ミックスゾーンで取材に応じた神戸のFW武藤嘉紀は「今日にかける思いは本当に強かった」と言葉に力を込めた。
先制点につながるPK獲得に、自らの追加点。両チーム最多7本のシュートを放つなど、蹴って、走って、跳んで、戦ってと獅子奮迅だった武藤はピッチの上で全てを出し切った。7月上旬から肺炎のような症状に悩まされてコンディションを崩していたが、ようやくベストな状態に戻りつつある中で横浜F·マリノスとの大一番を迎えた。
「本当にギリギリでチームに迷惑をかけてしまうかなとも思いましたけど、何がなんでも勝ち点を積み重ねたかったし、この試合に出ないで負けてしまったら後悔するなと」
12試合ぶりのゴールも挙げ、フル出場した元日本代表FWは神戸を2-0での勝利に導いて自らの責任を果たした。この結果により2位マリノスとの勝ち点差は4ポイントに。優勝争いで一歩前に出た。
「チームが勝つなら何でもします。たとえ『センターバックで出てくれ』と言われても、100%を出すつもりです」
この果てしないチームスピリットが、今の神戸の強さを象徴している。同じマインドを持っているのは、もちろん武藤だけではない。1ヶ月半ぶりに先発のチャンスをもらって右ウィングに入った飯野七聖はフル出場し、チーム最長の12キロを走破。スプリント数も最多の37回と、チームのために走りまくった。
翻ってマリノスはどうか。
数字が全てではないが、チーム走行距離で神戸を4キロ下回り、チーム全体のスプリント回数も50回以上少ない。20回を超えるスプリント数を記録した選手の数は、神戸が3人だったのに対し、マリノスはゼロだ。
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