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セレッソ大阪ヤンマーレディースの「勢い」と大宮アルディージャVENTUSの「経験」 紙一重の差で劇的決着 #女子サカマガ WEリーグ ピックアップ(無料記事) 

WEリーグ初参入・セレッソ大阪ヤンマーレディースと三年目の大宮アルディージャVENTUSに現れた小さな差

WE Love 女子サッカーマガジンが週末のWEリーグから一試合をピックアップ。今回は大宮アルディージャVENTUSとセレッソ大阪ヤンマーレディースの一戦(第2節 NACK5スタジアム大宮)をお届けします。 

足りなかった「経験」 

決着は鮮やかでした。90分+4分のプレーで大島暖菜選手が右足のボレーシュート。ボールはセレッソ大阪ヤンマーレディースのゴールキーパー・山下莉奈選手の手をかすめゴールネットを揺らしました。その瞬間、2千753人を集めたスタンドは大歓声と総立ち。試合終了のホイッスルで、再び総立ちとなる興奮のフィナーレでした。大島選手の目には光るものがありました。 

敗れたセレッソ大阪ヤンマーレディースの鳥居塚伸人監督は、試合後の記者会見で「経験」という単語を何度も使いました。セレッソ大阪ヤンマーレディースの前半のシュート数は8。大宮アルディージャVENTUSの前半のシュート数は1。「勢い」よく大宮アルディージャVENTUS陣内に攻め込み続けながら得点することができませんでした。 今シーズンに参入したセレッソ大阪ヤンマーレディースは、WEリーグを、まだ二試合しか「経験」していません。

「慌ててしまったり、フリーなのにパスをしてボールをロストしてしまったりする場面が、この試合では多くありました。改善していかなければいけないと思います。」 

脇阪麗奈選手も「経験」を口にしました。

「私たちの若さや『経験』不足が試合に出た、という感じです。」「大宮さんは後半に立て直してきたので、賢くサッカーをされたと思います。」

若さを上回った柔軟性 

大宮アルディージャVENTUSの柳井里奈監督は、セレッソ大阪ヤンマーレディースの前からのプレッシャーが嫌だったと話しました。「前線から激しくプレスをされたときに、ボランチが入っていくタイミングをちょっと変えてみよう」とトレーニングで準備し、この試合に臨みました。しかし、その効果は生まれず、前半は防戦一方になりました。 

「セレッソさんの『勢い』で、少しボールをつなぐというところが上手くいかなかったのですが、ハーフタイムに選手たちが、ものすごくポジティブに話し合いをしていた。」 

結局、選手たちの意見も活かし、後半は選手の距離感を元に戻し大宮アルディージャVENTUSが主導権を握り返しました。逆に、後半はセレッソ大阪ヤンマーレディースがシュートを1本しか打つことができませんでした。 

柳井監督は、76分にピッチ上に送り出した大島選手が「ちょっと気合が入りすぎている」と見るや、84分に左サイドから右サイドへポジションチェンジを指示。選手の心理とピッチ上の情勢を把握した巧みな采配が光りました。両チームとも最後まで走力の落ちない激戦は、「経験」豊かな選手が生み出す大宮アルディージャVENTUSの「柔軟性」が、若さ溢れるセレッソ大阪ヤンマーレディースの「勢い」を上回りました。 

激しい攻防を繰り広げる林みのり選手(大宮V)と田中智子選手(C 大阪) 写真提供:WEリーグ  TOP画像も

前節のノジマステラ神奈川相模原戦でも徹底したマンマークに苦しみながら試合を組み立て続けた林みのり選手は、次節に向けて、さらに気を引き締めました。 

「あの時間帯で勝ち切れたことはすごく自信になりました。連勝で勢いづくものにできたとは思うのですが、先週も今週も中身では、課題が浮き彫りになっているところがあります。中身と結果に、しっかりとこだわって、次からやっていきたいと思います。」 

ゴールキーパーの望月ありさ選手は、再三のピンチをファインセーブで救いました。攻撃の起点としては、セレッソ大阪ヤンマーレディースの走力でパスコースを塞がれビルドアップに苦しんだように見えましたが、強気でポジティブな姿勢は変わりません。 

「ビルドアップは得意でストロングにしています。もっと能力を上げていきたいです。」 

大宮アルディージャVENTUSは連勝の勝ち点6。まだ失点がありません。得点は二試合とも終盤にこじ開けた1点ずつ。しぶとく3位につけています。 

(2023年11月18日 石井和裕) 

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