WE Love 女子サッカーマガジン

スペインから千葉Lに吹く追い風 WEリーグを変える期待の若き指導者 ビジャレアルCFのメソッドを浴びたイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチが逆襲を誓う

巻き返しを図るジェフユナイテッド市原・千葉レディースの新体制が動き出しました。始動は2023年7月4日。そして、待望の新ヘッドコーチとしてイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョさんが7月16日にトレーニングに本格参加。17日には、新加入の加藤千佳選手、山口千尋選手、上野紗稀選手と共に2023−24シーズン新体制発表会見を行なっています。なお、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは昨シーズンの選手から引退・移籍等で7人の選手が離脱。今回、発表となった新加入選手は3人だけですが、今後も加入選手獲得を目指していくことを明かしています。

左から上野紗稀選手、山口千尋選手、加藤千佳選手

走れる、戦える3人の選手を補強 

2013年シーズンから2019年シーズンまでジェフユナイテッド市原・千葉レディースでプレーし、当時、なでしこジャパン(日本女子代表)でもプレーした上野選手は久々の古巣復帰です。以前は、左サイドから精度の高いアーリークロスを送り込むプレーの印象が強かった選手ですが、2020年シーズンからプレーした三菱重工浦和レッズレディースでは中央のポジションも経験し、プレーの幅を広げてきました。

山口千尋選手、上野紗稀選手

山口選手は2019年シーズンに愛媛FCレディースに加入。いきなりレギュラーポジションを獲得しサイドアタッカーとして大活躍。チームのスタイルを変更するほどのインパクトを与えました。活躍が目に留まり翌年にはなでしこチャレンジトレーニングキャンプに招集されました。サンフレッチェ広島レジーナからの移籍。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの「走る・闘う」にマッチする選手です。

加藤千佳選手

加藤選手は三菱重工浦和レッズレディースで11シーズンにわたりプレーした後にちふれASエルフェン埼玉に移籍しました。アグレッシブなプレースタイルが常にサポーターから人気で、会見では「ボールのないところでのポジショニングを見てほしい」とアピールしました。加藤選手も黄色のユニフォームで円陣ダッシュする姿を想像しやすい選手です。

トレーニング後に主将の林香奈絵選手と会話する山口千尋選手、上野紗稀選手

新しい世界を見るためにスペイン出身のヘッドコーチを招聘

これまで、日本人指導者だけでリードしてきたWEリーグに、はじめて海外の指導者が加わります。

今回のWE Love 女子サッカーマガジンでは、イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチがなぜ来日したのか、三上監督は何を期待しているのか、さらには選手から見たイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチの印象と本格参加した最初のトレーニングについてお伝えします。

ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは1年目のWEリーグで3位の日テレ・東京ヴェルディベレーザと勝ち点で並び得失点差で4位となりました。皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会で準優勝と、予想を上回る躍進を遂げました。しかし、2年目のシーズンはエースの千葉玲海菜選手、主将の林香奈絵選手が前半戦で負傷し長期離脱。苦戦を強いられました。序盤は勝てない試合が続きウィンターブレイク前に猿澤真治監督が退任(WEリーグ史上初のシーズン途中での監督交代)。GMだった三上尚子さんが代わって指揮を執り最終順位は8位。三強からは勝ち点差22も引き離されてしまいました。特に、複数得点を奪える試合が少なくアグレッシブな攻撃力の向上が求められます。また2シーズン連続で引き分けが多いのも特徴です。

三上尚子監督

今シーズンは、三上さんが女子チーム全体を統括するG Mの業務を兼任するような役割の監督となり、新指導体制で臨みます。三上さんは「新しいスタッフも選手も加わりワクワクしています」「新しいジェフユナイテッド市原・千葉レディースを見せるサッカーをしたい」とのこと。イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョさんをヘッドコーチとして招聘した狙いを説明してくれました。

「今年はFIFA女子ワールドカップがあります。どうしたら、もう一度、なでしこジャパン(日本女子代表)が優勝できるか、より高いところに行けるか……。WEリーグは世界一のリーグを目指しているので、チームとしても目指してやっていきたいという思いから、スペイン人のヘッドコーチを招聘し、いろいろな新しい世界を見てみたいと話を進めています。

年目2年目で上位3チームが変わらないWEリーグを、どうにか勝ち上がっていきたいです。昨シーズンは本当に結果が出なかったので、何かを変えていきたいというチャレンジングな気持ちです。(イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチには)インターナショナルな実績があります。いろいろな話をしながら、選手一人一人が成長していける指導をしていきたいと思います。」

トレーニング後に選手と談笑するイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチ

ビジャレアルC Fのアナリスト出身で誠実な指導者

イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョヘッドコーチはスペイン出身の29歳。指導資格はスペインサッカー連盟ライセンス レベル3。これは日本のJFA公認S級コーチライセンスと同じように全国リーグのチームの指導をできる上位のコーチライセンスです。これまで、ビジャレアルC Fのアナリスト、マッカビ エメク ヘファー(イスラエル女子プレミアリーグ)のヘッドコーチ等をされています。

以前、ビジャレアルC Fフットボール・マネージメント部に勤務する佐伯夕利子さんはイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチを「とても誠実でWEリーグと共に成長・進化し続けてほしいと願う人材」と表現していました。三上監督は「新しいサッカーを見せていけるスタッフと選手が集まった」と、2023−24シーズン新体制発表会見の冒頭で話しています。

ビジャレアルC Fフットボール・マネージメント部 佐伯夕利子さんが語るスペイン女子サッカー躍進の本当の理由 前篇 日本が突きつけられた欧州の現実

イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチは「フットボール指導者は選手とのコミュニケーションに尽きる」と考えている指導者です。佐伯夕利子さんはイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチについて「ビジャレアルC Fのメソッドを浴びて指導者として成長してきたので『主語は選手』をしっかりと理解し、実践できる指導者だと思います」と話していました。

上野紗稀選手

「主語は選手」コミュニケーションを重視し日本語も交える

上野選手は、初対面時のイスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチの印象を話しました。

「練習の後に気軽にお話ができ、すごく話しやすく選手とコミュニケーションをとれるので、これから一緒にジェフユナイテッド市原・千葉レディースを作っていけると思いました。」

イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチは29歳です。山口選手は、その点について触れました。

「年齢的にも私たちとは近いので、選手とコミュニケーションをとりながらチームを作っていけると思います。」

加藤選手は、初対面時に重要な言葉を引き出していました。

「今シーズン中には日本語でミーティングをしたいみたいと言っていたので、すごく勉強熱心な方なのだと思いました。」

イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチ

ジェフユナイテッド市原・千葉レディースのトレーニングは雰囲気が変わりました。イスマエル・オルトゥーニョ・カスティージョ ヘッドコーチはトレーニングに本格参加した初日に熱く指導しました。

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