サッカーの羅針盤

【山雅探報】元川悦子と激論。柴田新監督で松本山雅の何が変わったのか:序論

布啓一郎前監督が解任。強化部長から内部人事で就任した柴田峡監督のもと、松本山雅は強豪の徳島ヴォルティスに挑み、アウェーで勝ち点1をもぎ取りました。長年、松本山雅を観続けている元川悦子記者は柴田山雅の初陣をどう観たのか、激論まじりに聞きました。

河治 布啓一郎前監督から柴田峡監督に代わって最初の試合、結果は1−1の引き分けでしたが、首位に立とうという徳島ヴォルティスを相手にアウェーで奮闘というか、昨年はJ1でやっていた松本山雅の本来のチーム力を確認できた試合になりました。理想を言ったらキリがないですが、前向きになれる引き分けだったと思います。

元川 まず3ー5ー2に替えて、ソリさん(反町康治元監督・現JFA技術委員長)の時にやっていた、慣れたフォーメーションで、あの時は3ー4ー2ー1がメインだったけれども、まず3バックで布さんの時は両方やっていて、最近は4枚だったけど、けっこう試合で変えてたから。試合中にも変えたりしていて、ソリさんが1つの形でもあれだけ時間かかってやっていたのに、そんなに短い時間で両方をこなすなんてザッケローニだってできないんだから。

河治 ベースを作っていた段階ですからね。

元川 そう、そういうのがかなり混乱していたように見えていたから私は。そういう意味では多くの選手が慣れている3バックで、橋内優也は両方やっているから僕は問題ないというコメントをしているけれども、とは言っても慣れていてオートマチックに動ける3枚からスタートしたというのは柴田さんとしてはソリさん時代の遺産を活用したのかなと。

布さんが作ってくれたと口では言ってるけれども、長い間の松本山雅の歴史を分かっている人だから、原点からスタートしようとしたのかなと私には見えた。しかも、メンバーが村山でしょ。普通だったら6失点した後に村山を使わないけど、ちゃんと続けて使って、しかも怪我明けの橋内を強引に55分だけ出したでしょ。それで左には高橋を戻して。真ん中に藤田息吹、あとは杉本太郎とか去年からいた選手が前の方にいるわけだよね。

河治 なるほど。

そういう意味では真ん中のラインとサイドの髙橋、去年までの軸をになっている選手をちゃんと置いて、本当に原点回帰してやろうとしているように見えたから、それによってかなり守備が落ち着いたし、球際とかハードワークとか、ボールに行って簡単にミスして取られないというのが前半からできていたから。最近の失点シーンはありえないミスパスから取られて、あっさり決められてたり。ビルドアップで取られて、2パスぐらいでシュートが入るみたいなのが多かったから。

さすがにそういうのはもうやらなというのが見えていたし、橋内は前半に下がりすぎたとコメントしていたけれども、それぐらい守りで序盤に失点しない、ゼロで抑えるという反町時代を思い出せる。前半は0-0でオッケーよという。前半のシュート数は徳島より下回ったし、前半の後の方はかなり下がっちゃってたんだけど。

河治 ああ、確かに。

元川 飲水タイムぐらいまでは山雅ペースだったけど、前半の前半は。球際やハードワークで徳島より優勢だったけど、飲水の後ぐらいから徳島に回され出して、厳しい状態になったけど、しのいで後半という流れだった。

 

⛰本論に続く⛰

 

元川悦子(もとかわえつこ)プロフィール

1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学卒業後、夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。日本代表は練習から通っており、アウェーにもほぼ毎試合、足を運んでいる。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地取材。著書に「U-22」(小学館)、「黄金世代」(スキージャーナル社)、「僕らがサッカーボーイズだった頃14」(カンゼン)、「勝利の街に響け凱歌松本山雅という奇跡のクラブ」(汐文社)ほか。

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