なでしこリーグからWEリーグへの移籍 秘訣は「コミュニケーション」「観察眼」「理解」「要求」 鈴木陽選手と神谷千菜選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の活躍
ウィンターブレイクに加入した2023プレナスなでしこリーグ1部最優秀選手と得点王が移籍当初から活躍までを振り返る
日テレ・東京ヴェルディベレーザは前線に2人の選手が加入し攻撃のバリエーションが増えました。ウィンターブレイク明けからの戦績は5勝1敗3分。第10節から7戦負けなしです。勝ち切れず引き分けが多いシーズンですが、前線に力強さが甦りつつあります。
2023プレナスなでしこリーグ1部最優秀選手の鈴木陽選手
鈴木陽選手はオルカ鴨川FCからの加入。2023プレナスなでしこリーグ1部最優秀選手を受賞しています。初ゴールは第12節のサンフレッチェ広島レジーナ戦でした。88分の貴重な決勝点。ゴールネットを揺らすと、チームメイトが勢いよく鈴木選手に駆け寄りました。
「そのときは、自分はいっぱいいっぱいだったの気付かなかったのですが、後から映像を見たら、チームメイトがすごく喜んでくれていて嬉しかったです。友人・知人、お世話になった方からもたくさんの連絡をいただきました。オルカ鴨川FCでプレーしたときに監督をされていた野田(朱美)さんからも連絡がありました。」
2023プレナスなでしこリーグ1部得点王の神谷千菜選手
神谷千菜選手は朝日インテック・ラブリッジ名古屋からの加入。2023プレナスなでしこリーグ1部の得点王です。加入直後の第8節、ノジマステラ神奈川相模原戦で2得点。鮮烈デビューを果たしました。
「ゴール前での迫力は、私が出していきたいと思います。苦しいときに前で起点を創るプレーを増やしていけば、チームの勝利につながっていきます。そういう部分を、もっと伸ばしていきたいです。」
日テレ・東京ヴェルディベレーザでの追加登録以来、鈴木選手も神谷選手も3得点。どのようにして短期間でチームに適応したのでしょうか。
チームメイトと複雑なトレーニングに励む毎日
日テレ・東京ヴェルディベレーザは誰もが認める日本の女子サッカーの歴史をリードしてきたチーム。下部組織から継続してテクニックを磨き、共通理解から生まれる独特のリズムでパスを回し対戦相手を翻弄してきました。今シーズンから復帰し指揮をとる松田岳夫監督は、毎日のトレーニングに複雑なメニューを投下します。ミニゲームでは、ゴールが6つも置かれていることもあります。そして、それぞれのゴールで、得点方法に関して異なるルールが設定されていることもあります。今シーズンはビブスを4色も買い足しました。
加入当初、神谷選手は頭の中がパンクするほど疲れたそうです。
「ルールも難しいですし、移籍するまでやったことがなかった練習ばかりです。でも、日テレ・東京ヴェルディベレーザのサッカーは『つなぐ』『しっかりとボールを動かす』『後ろからゲームを作り上げる』。こうやって身につけていきます。皆、上手いしボールを持てるので、最初の頃は、対戦相手だけではなく自分もパスを受けるタイミングがずれてしまって『対戦相手の気分』になったこともありました(笑)。
シュートを打ちやすいパスを供給してもらうためには自分の特徴を理解してもらうことが必要
神谷選手は、なでしこリーグの朝日インテック・ラブリッジ名古屋加入1シーズン目(2021シーズンと2022シーズンに特別指定選手として出場)から大活躍し注目を集め、大学から卒業して1年を経ず、いきなりWEリーグにステップアップしました。
「WEリーグでデビューする不安よりも、このチームに馴染めるかの不安の方が大きかったですね。どのようにしてチームに溶け込めるかが課題でした。チームメイトは優しいので、チームの輪に入りにくいと思ったことはないのですが本当に上手いですから。」
加入直後の神谷選手は「味方に上手く使ってもらいながら、ゴール前に飛び込むのが自分の持ち味」と話していました。朝日インテック・ラブリッジ名古屋でも、毎日、一緒に練習するチームメイトとコミュニケーションをとり、自分の特徴を知ってもらうことで、シュートを打ちやすいパスを供給してもらうことを心がけてきました。
「自分のプレーを知ってもらうことが、まずは大事だと思います。ここまでの3得点は全てへディングシュートからです。味方が、自分の得意とするクロスを入れてくれるから奪えた得点です。自分が今までと違う風を吹き込んで、結果を残さなければいけないと常に感じています。自分の欲しいボールを要求していくことが大事です。ヘディングは自分の特徴です。でも、足でもとりたいな(笑)。」
自分に足りないところを見つける努力も必要
鈴木選手は移籍後初出場から初得点までに5試合を要しました。「得点するまでが長く苦しかった」と振り返ります。得意とするカタチを持ったストライカーです。自分を知ってもらう努力、そして、逆に、自分に足りないところを見つける努力も怠りませんでした。
「とにかくコミュニケーションをとることを心がけました。喰らいつくために、コーチやフィジカルコーチに自分の足りない部分を聞き、それを意識してトレーニングしてきました。」
共通理解を身につけるために欠かせない観察眼
「たぶん、移籍をすれば誰もが緊張するだろうし、焦りも不安もある」……鈴木選手は、過去に移籍の経験があります。その経験と、自分からチームメイトに話しかけることが苦手ではないことが幸いしました。
ただ、一つ疑問が浮かびました。明文化されたルールではないプレーに関する共通認識を、誰からどのように教えてもらうことができるのでしょうか。
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