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女子1級審判員資格が1級審判員に統合 変わる女子サッカー審判員の未来 山岸佐知子さん(審判委員会) 前篇

女性審判員の世界に大きな変革、女子サッカーの審判員の何が変わるのか?

審判の世界で大きな変革があったことをご存知でしょうか。女子1級審判員資格が3月から1級審判員に統合されたのです。女子1級審判員資格の技能区分は「本協会管轄の第2種、第3種、第4種及び女子の試合の主審を行う技能を有する者」とされていましたが、JリーグやJFL等、第1種の大会を担当する女性審判員が増えていることから、性別に限定した審判資格をなくしたのです。男性も女性も1級審判員に統一されました。

WEリーグの担当審判員を「プロ化」するには長い道のりが必要

Jリーグを担当する審判員はプロフェッショナルレフェリーと1級審判員です。WEリーグを担当する審判員と何が違うのでしょうか。そして、WEリーグを担当する審判員がプロフェッショナルレフェリーになる日は来るのでしょうか。

一つ言えるのは、今回の変革で、1級審判員に男女の違いがなくなったということです。そうなると、さらに上のカテゴリーに性別を限定した「女子プロフェッショナルレフェリー」が新設されるとは考えにくく、 WEリーグを担当する審判員がプロフェッショナルレフェリーになるためには、性別に関係なく設定されているプロフェッショナルレフェリー基準を女性のレフェリーが超えていかなければならないであろうと推察されます。

審判委員会副委員長(取材時)の山岸佐知子さんに尋ねる

女子1級審判員資格が1級審判員に統合される節目となる3月に、日本サッカー協会審判委員会副委員長(取材時)の山岸佐知子さんを訪ね取材しました。 山岸さんは女性では2人目の(女子1級ではなく)1級審判員資格取得者です。AFCの選出する年間最優秀女子レフェリー賞を5回受賞。FIFA女子ワールドカップ カナダ2015はアメリカ女子代表VSスウェーデン女子代表を担当しています。現在は、審判委員会の中で特に女性審判員の育成、審判技術の向上等に取り組んでいます。

主審・朝倉みな子さん、副審・一木千広さん、國師えりなさん、第4の審判員・田中真輝さん 写真提供:WEリーグ TOP写真も

競技規則の周知に力を入れる審判委員会 

現在、女性の審判員は日本に何人くらい登録されているのでしょうか。

山岸コロナ禍以前に登録者数は1万5千人にまで増えました。その後、減少したのですが、また、1万5千人近くまで戻ってきています。

映像(動画)を積極的に活用している日本サッカー協会 

最近、日本サッカー協会では、YouTubeの活用も含め、映像(動画)を活用したルールの周知に努めていますね。

山岸 映像を使用すると文字では伝わらないシチュエーションも理解しやすいので、最近は積極的に活用しています。JFA Passport(日本サッカー協会 公式アプリ)でも発信していて、審判資格を取得していただくと、より詳しい映像も見られるようになっています。

日本サッカー協会 審判委員会 副委員長(取材時) 山岸佐知子さん

女子リーグ開幕前に実施するルール講習会 

女子リーグの選手たちへの競技規則の周知はどのようにされていますか?

山岸 なでしこリーグのチームを対象としたルール講習会は、先日、終わったばかりです。今回は初めて競技規則のテストを実施してみました。なでしこリーグと相談し、昨シーズンに実際に起きたことを4択のテスト問題にして回答いただき、その後、映像で確認しました。以前にお伝えしたり見ていただいたりしたことの確認なのですが、正解率は様々でした。チームごとに解答率の違いが出てきているところもあると感じます。

プロリーグにふさわしいレフェリングをするために行うこと

答えが白黒で割り切れないことも多いサッカーのジャッジ

ジャッジには白と黒とグレーがあると思います。先日、Jリーグ開幕前のレフェリー研修の見学をさせていただきました。ある難しい状況をどうジャッジするか審判員たちが映像を見ながらディスカッションしたのですが、半分以上の審判員が審判委員会の結論と違うジャッジを支持したというシーンもありました。プロフェッショナルレフェリーを含む日本のトップレフェリーでも、周辺状況をどのように理解するかでジャッジが別れるのですから一つのジャッジを「正解か・不正解か」で単純に語りすぎてはいけないと思いました。

Jリーグを担当する審判員の前で事例説明する佐藤隆治さん(審判マネジャー)

山岸 そうですね。ラフプレーの判断は選手の安全に関わることなので、ある程度はっきりしています。しかし、例えば遅延行為の判断は一律には語れません。リスタートする選手の目の前に立っているところだけを見ればイエローカードに相当すると考えるのは当然ですが、その前に何が起き、なぜ、そこに立っているのかによって判定の考え方が変わります。ただ一律に警告を出してしまうと「ロボットレフェリー」になってしまいます。

女性のトップレフェリーが担当するWEリーグ

—WEリーグが始まって、女性のレフェリーにとって大きく変わったところはありますか?

山岸 まず、私たちが身近に接しているトップレフェリーは、皆さんワクワクしていたと思いますね。用具ではコミュニケーションシステムを使用できるようになったことです。それまで、日本の女子リーグでは使用してこなかったので、開幕前にトレーニングを繰り返して準備しました。

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