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アルビレックス新潟レディースはなぜ面白い? 躍進の理由7種と存在意義

WEリーグ優勝を狙える3位につけるアルビレックス新潟レディースの魅力、そして「OUR TEAM」の意味

2024年3月のWEリーグはミッドウィークにも試合を行う過酷な連戦となりました。3月27日に浦和駒場スタジアムで三菱重工浦和レッズレディースとの大一番を終えたアルビレックス新潟レディースの選手たちは、関東エリアで宿泊しリカバリー。連戦の締めくくりとなる30日のノジマステラ神奈川相模原戦に備えました。

豊富な経験をチーム力向上に活かす川澄奈穂美選手(新潟L) 写真提供:WEリーグ TOP写真も

「当初は浦和戦後、新潟に戻り練習する予定でしたが、クラブに相談した結果、関東に滞在できるように調整してくれ、負担を軽減することができました」

3月最後の試合を終え、アルビレックス新潟レディースの橋川和晃監督は涙で声を詰まらせながら話しました。なでしこジャパン(日本女子代表)でも活躍する平尾知佳選手もミックスゾーン取材で宿泊について触れました。

「(川澄奈穂美)キャプテンをはじめ、たくさんの経験を持った選手たちとチームが動いてくれました。チームのためにも結果で返すことができて本当に良かったと思っています。」

「最後は気持ち」だけでは勝ち切れない

アルビレックス新潟レディースの選手たちを取材すると、チーム全体に「OUR TEAM」が浸透していることを感じます。第13節を終えて、優勝を狙える3位につけています。

なかなか勝利に届かない時期はは勝負の分かれ目を「最後は気持ちの差」という結論に落とし込みがちです。しかし、橋川監督は「気持ちだけでは無理です」と明言しています。では、何が、今のアルビレックス新潟レディースの勝負強さを形作っているのか取材してみたくなりました。ここまで、1点差の勝利が7つもあるのです。

ホームゲームの試合終了後にファン・サポーターとの接点を設けるアルビレックス新潟レディース。ホーム・アウェイ関わらず、実施できるときはバス出発前に丁寧にファン・サポーターに対応している 写真提供:WEリーグ

アルビレックス新潟レディース躍進の理由7種

1.日本の女子サッカーに夢と自信を抱いている
2.苦しいコンディションでも、守るべきことは守る
3.仲間が前向きに言い合えるトレーニング環境がある
4.選手・スタッフ・経営サイド、全員が全力を尽くす
5.女子サッカーを「より良くしていきたい」と口に出して言える
6. WOMEN EMPOWERMENTの象徴として地元でポジションを築いている
7.「OUR TEAM」が浸透している

7種の理由から強さと面白さが見えてくる

試合後の監督会見は、その日の試合内容ややり方をメディアに明かすものです。ただ、橋川監督の会見では、選手やチームスタッフを誇らしく表現している場面が多々みられます。

1.日本の女子サッカーに夢と自信を抱いている

「女子サッカー選手はすごくポテンシャルを持っていますよ。輝く選手たちをどうやってエンターテイメントの一つとして興行で売り出していくかというと、やはり入場者数3千人がレバレッジポイントだと思います。そこを越えると収益が変わってくる。そのために選手を輝かせる。そのためにメディアの皆さんが発信してくれるサイクルも創っていく。可能性がありますよ、選手を近くで見ていて感動しかないです。時々、見とれてしまいます。」

5連戦のフィニッシュとなるノジマステラ神奈川相模原戦の監督会見は、筆者がもらい泣きをしてしまいそうなくらい心を揺れ動かす言葉の連続でした。

スポーツ業界で働く人材を育てるJAPANサッカーカレッジなど NSGグループの教育機関で学ぶ人材が、毎年、アルビレックス新潟レディースの門を叩きます。こうした若い人材は、キラキラと輝く瞳で選手たちを見つめます。アルビレックス新潟レディースに関わる多くの人が、日本の女子サッカーの未来に夢と自信を抱いて働いています。

チーム全員が共通目的に向けて前進するアルビレックス新潟レディース 写真提供:WEリーグ

2.苦しいコンディションでも、守るべきことは守る

「三浦(紗津紀選手)、山谷(瑠香選手)が中心に、ラインコントロール、コンパクトにやる、どのゾーンに(守備のブロックを)中心になって考えてプレーしてくれています。それが、この失点の少なさに表れていると思います。ズルズルとラインを下げて(ペナルティ)ボックス内にずっといたら危ないシーンがもっと増えて、失点する展開です。ここは、我々が自信を持って積み上げてきたところです。」

これは、ノジマステラ神奈川相模原戦後の監督会見で質問をした際に得た橋川監督の回答です。筆者が驚いたのは、疲労の蓄積された連戦の後半でも最終ラインを上げるスピードがとても速いことです。

「彼女たちは、なかなか結果がついてこず苦しい2シーズンをおくったと思います。それにも意味があったと思います。苦しいシーズンを戦ってきた守備が今のベースになっていると思います。」

センターバックを務める三浦選手はどうでしょうか。

「そのような(ラインコントロールの)プレーを見ていただけるのは嬉しいです。チームとして本当にそういうところが徹底できている。それが、このような順位にいる要因だと思います。監督含め全員で意識を統一できているのが大きいと思います。」

最終ラインで奮闘する三浦紗津紀選手(新潟L) 写真提供:WEリーグ

3.仲間が前向きに言い合えるトレーニング環境がある

何名かの選手に聞くと「練習は試合以上にバチバチにやり合っている」と話します。筆者は、アルビレックス新潟レディースほど「やり切る」ことに強い意志を感じるトレーニングを見たことがありません。

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