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22戦無敗首位・ヴィアマテラス宮崎と今季無敗2位・日体大SMG横浜 タフでなければ勝ち抜けない2024プレナスなでしこリーグの異変 

世界のトレンドを察知し急激に変化する日本の女子サッカー 

2024プレナスなでしこリーグ1部は第4節を終えました。首位を走るのはヴィアマテラス宮崎。今シーズンから1部で戦う昇格1年目のチームですが、予想を遥かに超える強さを見せつけ、快進撃を続けています。今シーズンは開幕から4連勝です。勝ち点差2の2位には日体大SMG横浜がつけています。こちらも3勝1分けで無敗。好スタートを切りました。 

1位 ヴィアマテラス宮崎        勝ち点12
2位 日体大SMG横浜         勝ち点10
3位 朝日インテック・ラブリッジ名古屋 勝ち点9
4位 オルカ鴨川FC          勝ち点7
5位 ニッパツ横浜FCシーガルズ    勝ち点7
(第4節終了時)

今回は、2024プレナスなでしこリーグ1部の異変をお届けします。無敗の2チームを中心に、どのようなサッカーが繰り広げられているのか、当事者のお話からお伝えします。 

第4節・スフィーダ世田谷FCで技ありの決勝点を決めた渡部麗選手が日体大SMG横浜の10番を背負う

丁寧なパス回しを潰したい守備のプレッシャーと、パスをつなぐテクニックの対決 

2024プレナスなでしこリーグ1部は強度に難のあるチームは勝ち点を積み上げられなくなるかもしれません。昨シーズンまでと比べると、プレーの強度の高いチームと低いチームの間で差が開いた印象です。強い当たりとハードワークが勝負を分ける要因になっています。 

静岡SSUボニータの本田美登里監督は3シーズンぶりになでしこリーグに帰ってきました。ニッパツ横浜FCシーガルズとの対戦を終え「相手の身体が一回り大きく感じた」と話しました。なでしこリーグは急速に変化していました。 

最前列でニッパツ横浜FCシーガルズを応援する子どもたち

秀でた選手は移籍で去ったはずだが明暗別れる上位と下位 

ASハリマアルビオンは、過去2シーズン連続で上位争いをしてきましたが、今シーズンは2024年4月7日にニッパツ三ツ沢球技場で行われた第4節・ニッパツ横浜FCシーガルズ戦に敗れ4連敗のスタートです。小野鈴香監督は楽に勝てる試合がなくなったと感じています。 

「全体の力が均一になったというか、ストロングな選手がWEリーグに移籍したこともあり、どのチームもあまり力の差がなくってきました。」 

ASハリマアルビオンも一部の主力選手が移籍し、まだ、今シーズンの軸が定まっていません。新しいメンバーの個性も考慮し、パスをつなぎポゼッションを高めることを目指していますが成果が表れていません。迫り来るニッパツ横浜FCシーガルズの守備のプレッシャーによってパスは乱れ、フェアなフットボールコンタクトであっても、何度も選手がピッチに倒れました。 

全体の力が均一になったはず……しかし、ボール保持者に余裕を与えない激しい守備に対抗できるタフなチームでなければ、パスはつながらず勝てないリーグとなってきたのです。 

試合終了直後に輪になって課題を再確認したASハリマアルビオン

強度を維持するためのチームづくりを進めるニッパツ横浜FCシーガルズ 

ASハリマアルビオンに勝利したニッパツ横浜FCシーガルズは勝ち点7の5位。昨シーズンの序盤に白星を重ねましたが、シーズン途中で失速しました。そのため、石田美穂子監督はシーズンを通して、タフに戦えるチームづくりを進めています。2年目の今シーズンは、疲れの見える選手は起用せず、スタメンを入れ替えます。 

球際の強さを発揮する奈良美沙季選手(ニッパツ)

ASハリマアルビオン戦で主将を務めた奈良美沙季選手は、厳しいプレッシャーの中でも、怯まずにボールを前に運べる意思統一について話してくれました。 

「練習の中からそういうプレーを意図したメニューは多いです。石田監督になって2年目。一緒にプレーしてきた選手が多いので、トレーニングがしっかりと身に付いて、少しずつ積み上げられていると思います。」 

ボランチとしてチームの舵取りをする田村かのん選手(ニッパツ)

日体大SMG横浜から加入した田村かのん選手は、チームの戦う姿勢を肌で感じながらトレーニングを重ね、4試合連続出場(スタメン3試合)しています。第4節では移籍後の初ゴールを記録しました。 

「ハードワーク、運動量、戦う姿勢が自分の長所だと思っています。ニッパツ横浜FCシーガルズにはすごく戦う選手がたくさんいるので、自分もフィジカルコンタクトの部分はしっかりやっていきたいです。」 

圧倒的な強さを見せつけ首位を快走するヴィアマテラス宮崎 

そのニッパツ横浜FCシーガルズも第3節でヴィアマテラス宮崎に敗れています。4連勝で首位を走るヴィアマテラス宮崎の強さはどこにあるのでしょう。石田美穂子監督は試合後に「相手からの圧力に耐えきれずに失点してしまった」と話していました。ボール保持者への寄せが早く、なかなか自由にボールを動かすことができませんでした。 

上位陣を相次いで倒した4連勝

ヴィアマテラス宮崎は開幕戦でスフィーダ世田谷FCに3−1で逆転勝ち。第2節は昨シーズンの王者・オルカ鴨川FCに0−4で圧勝。第3節は優勝争いのライバルと見られるニッパツ横浜FCシーガルズに2−0で完封勝ち。第4節は首位攻防戦となり、昨シーズン2位の朝日インテック・ラブリッジ名古屋から連続得点で勝負を決めた3−1の勝利。実力あるチームを4試合連続で撃破しています。これぞタフなチームです。 

嘉数飛鳥選手(宮崎)

2020年に設立。3年目の昨シーズンは、なでしこリーグ2部に昇格。「なでしこリーグ1部でも優勝争いをする力がある」と対戦チームから高く評価されていました。2023プレナスなでしこリーグ2部を無敗優勝し1シーズンで通過。1部に昇格した今シーズンも合わせると、実は、なでしこリーグ22戦負け無しの記録を続けています。 

小さな町の期待を背負いなでしこリーグ2部、1部を通じ22戦負け知らず 

ホームタウンは宮崎市にほど近い人口1万6千人の新富町。今シーズンからいちご宮崎新富サッカー場でホームゲームを開催できるようになり、2戦連続で1千200人を超えるファン・サポーターが詰めかけています。同じスタジアムで開催されるテゲバジャーロ宮崎のホームゲーム(J3)の平均入場者数(今シーズン)は約950人(昨シーズン平均は約1千500人)ですから、この集客力には驚愕です。 

YouTubeの生配信の実況アナウンサーを宮崎放送 (MRT) のアナウンサー・古田とわさんが担当していることからも、この街で女子サッカーが愛されている様子が感じられます。 

地元のために全力を尽くし迷いを感じないヴィアマテラス宮崎の強さ 

ヴィアマテラス宮崎のサッカーの特徴は、なんといってもパワー溢れる前線の選手たちです。ニッパツ横浜FCシーガルズの奈良選手は「宮崎は蹴って走って前に強い選手がいて勝ち切るチーム」と表現します。 

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