WE Love 女子サッカーマガジン

「マイナビ仙台レディース複数選手の登録承認」取材で明らかになった「問題になること」と「問題にならないこと」 

わかりにくいプレスリリースに書かれていないことを知る必要がある 

(文中に2024年3月28日14時30分追記あり)
WEリーグは2024年3月27日16時30分に「WEリーグプレスリリース マイナビ仙台レディース選手登録に関する一部報道について」を取材メディアとフリーランスの取材者に配信しました。
 

14時より2023−24 WEリーグ 第20節が開催されており、試合終了後の監督会見が終わる時刻に合わせたものと思われます。浦和駒場スタジアムには、小林美由紀理事、松岡けい理事および職員が訪れ取材陣の質問に対応しました。筆者は、松岡理事よりプレスリリース配信を知らされており、報道陣への対応を目的に訪れたものと思われます。 

プレスリリースは読んだだけではわかりにくい内容であり、筆者は、松岡理事と職員2名の計3名に質問することで理解しました。 

質問から得た回答に加え、その場で行ったディスカッションにより明らかになったことがあります。このコラムの前半では主に「問題にならないこと」を説明、後半では主に「問題になること」を説明します。「問題にならないこと」は規約上、制度上の解釈です。これまで、各種締切を厳守し、WEリーグが円滑に運営できるよう努力してきた、マイナビ仙台レディースを除く各チームの強化担当者・責任者、広報担当者・責任者の「それでも今回のことを許せない」という感情を理解します。それについては、今回の登録承認とは別の機会で、今一度、取材、検証したいと考えています。 

問題にならないこと 

該当選手3名は試合に出場できる(選手登録は間に合っていた) 

日本サッカー協会が定める登録申請締切は2024年2月14日正午までです。原則として当該期日までに登録を行う必要があります。しかし、これは申請事務手続きの期日です。出場(登録)できるかできないか根拠は、FIFAの国際規則に基づき、日本サッカー協会が定める登録期間(ウインドー)の締め切り(2023−24 シーズンの第2登録ウインドー締切)は2月16日であり、その締め切りに登録が間に合っていると日本サッカー協会が見解を表明しため該当選手3名は出場することができます。つまり「特例承認」は行われておらず、シンプルに登録が間に合ったので出場できるというのが、その根拠です。 

なお、選手登録はWEリーグではなく日本サッカー協会が行う業務ですので、判断は日本サッカー協会が行います。今回、WEリーグが迅速な説明を行わなかった理由として、WE Love 女子サッカーマガジンに「現在関係各所に状況確認中」と回答していましたが、これは、主に日本サッカー協会が確認先です(先に確認できていなかったことの是非は記事の後半で説明します)。 

WE Love 女子サッカーマガジンは、松岡理事および職員2名に2つの質問をしました。いずれも明確な回答をいただいています。 

「今回、登録申請締切日後である2月15日に正式な登録への切り替え作業が漏れていたことが発覚し、WEリーグは日本サッカー協会に登録できるかどうかの確認を行ったが、もし、第2登録ウインドー締切締め切り後の17日に発覚した場合も日本サッカー協会に確認を行ったのか?」 

WEリーグは明確に「行わない」と回答しています。登録ウインドー締切厳守は国際規則だからです。 

「リリースには髙田春奈チェア名で『通常の登録とは状況が異なり、既に「育成組織トップ可」選手又は「特別指定」選手として同チームに所属しプレーしていた選手らの正式登録への移行という性質がある』と表記しているが、もし30歳以上の年齢、あと1年で引退、外国籍の選手が同様に第2登録ウインドー締切締め切りに間に合った場合と「育成組織トップ可」選手又は「特別指定」選手に違いがあるか?」 

WEリーグは「判断は日本サッカー協会が行うのでWEリーグが判断することではないが、今回、日本サッカー協会から受けた説明は『育成組織トップ可』選手又は『特別指定』選手を条件としているものではない」と回答しています。 

今回、この問題の理解を難しくしているのは、髙田春奈チェア名でリリースされた文章に「通常の登録とは状況が異なり、既に「育成組織トップ可」選手又は「特別指定」選手として同チームに所属しプレーしていた選手らの正式登録への移行という性質があると記載していることです。 

浦和駒場スタジアムに髙田春奈チェアは来場しなかったため、なぜ記載する必要があったのか理由がわかりません。これについては、引き続き回答を求めていきます。また、同時に、日本サッカー協会から説明を得られるよう働きかけていきます。 

(2024年3月28日14時30分追記)

2024年3月28日になでしこジャパン(日本女子代表)が行われたため、筆者は日本サッカー協会を訪問しました。選手登録は女子委員会、審判委員会等、WE Love 女子サッカーマガジンが日頃から接点を持つ部署とは全く別の部署で行なっているため、この件について、具体的な取材をすることはできませんでした。髙田春奈チェア名でリリースされた文章が、公開された文章の全てだということは確認できました。そして、WEリーグまたはマイナビ仙台レディースが日本サッカー協会に働きかけを行わない限りは、登録申請締切日後に申請作業が進むことは考えにくいことと、働きかけの過程で「通常の登録とは状況が異なり、既に「育成組織トップ可」選手又は「特別指定」選手として同チームに所属しプレーしていた選手らの正式登録への移行という性質がある旨が触れられていたであろうということまでは掴むことができました。それ以上の具体的なことは、これからもWEリーグに説明を求めていくより他なさそうです。

没収試合(0−3敗戦)処分は行われない 

ここまで説明した通り、第2登録ウインドー締め切りに間に合っているため該当選手3名はエントリー資格を有しています。過去、Jリーグで事例のある「エントリー資格を持たない選手を出場させたため0−3の没収試合」という処分を行う根拠はありません。 

「問題になること」 

ここまで「問題にならないこと」を説明してきました。では「問題になること」は何でしょうか。WEリーグは、いくつもの問題を残しています。また、これまで顕在化していなかった問題を抱えていたことが見えてきました。 

1.WEリーグ内で日本サッカー協会の見解を理解できていなかったこと
2.迅速な情報公開をしなかったこと
3.説明するための記録を示していないこと
4.多くのチームから信頼を失っていること
5.Jリーグ等への影響 

特に「2.迅速な説明を行わなかったこと」については多くのファン・サポーターが厳しい声を挙げています。「隠匿ではないか」という指摘に対して、今のところ、WEリーグは否定できる材料を提示できていません。髙田春奈チェアが自らリリースの文面で「この措置についての報道が複数なされ、詳細の説明が必要だと考え、今回の発表に至りました。」と明かしています。複数の報道がなければ、この問題は闇に葬られたと言わざるを得ません。その責任は極めて重大です。 

WEリーグはファン・サポーターのみならず、多くのステークホルダーからの信頼を失い価値を毀損しています。「WEリーグプレスリリース マイナビ仙台レディース選手登録に関する一部報道について」をリリースした後も批判は止まることを知りません。「問題になること」を認識し、いますぐ対応することが必要です。

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