WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグから発表がない「マイナビ仙台レディース複数選手の登録遅延・特例承認」 

スポニチの記事に対して沈黙するWEリーグ、日本サッカー協会、マイナビ仙台レディース 

2024年3月25日にスポニチがスクープ。「日本サッカー協会(JFA)とWEリーグが選手登録事務手続き期限を遅延したマイナビ仙台の複数選手を特例で承認し、試合に出場させていることが24日までに分かった。複数の関係者が明かした。」という記事を掲載しました。 

2020年にWEリーグ設立が発表されて以来、筆者にとって最も悲しいニュースです。選手のエントリー(登録)はリーグを運営するにあたり基本中の基本。事務手続きは厳密に運用されており。原則として遅延が許されることはありません。 

スポーツである以上、統一のルールで競わなければならない 

厳密に運用されている理由は、スポーツである以上、統一のルールで競わなければならないからです。試合終了のホイッスルの後にシュートがゴールネットを揺らしても審判が得点を認めることはありません。若く有望な選手だから試合終了後の得点を認めることも、この試合に負けたらチームが解散だから試合終了後の得点を認めることもありません。どのような事情があっても、それはスポーツのルールだからです。 

例えば2015年にマンチェスター・ユナイテッドからレアル・マドリードへの移籍に合意していたスペイン代表のダビド・デ・ヘア選手は必要な書類提出が間に合わなかったため移籍が実現しませんでした。書類が届いたのは期限から28分後と伝えられています。 

Jリーグではエントリー資格を持たない選手を出場させたとされる試合が0−3の没収試合となった例があります。当該クラブはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴しましたが申し立てが認められず懲罰を受け入れています(懲罰を争えるのは勝利したチームに限られるため)。 

適切なエントリーなのであればWEリーグ迅速に説明すれば良い 

このエントリーが、スポニチの記事にあるように「WEリーグ理事会では議題に挙がっただけで特に問題視はされず」ということであれば、理事会は、この選手登録を適切と考えたわけです。単純に、その理由と経緯を説明すれば良いだけのはずです。しかし、実際には発表のないまま時間だけが経過し日付が変わりました。 

WE Love 女子サッカーマガジンではスポニチ掲載記事についてWEリーグに「本日、リーグからの発表は何時頃にあるのか」とメールで質問しました(12時39分)。 

発表が行われる前提で質問した理由は、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会が「危機管理としての広報・PR」として示している通り「危機が顕在化したとき、取材の受け口となるのは広報・PRである。正確な事態の把握と情報の整理を行い、危機の状況によって、被害の全貌や自社の責任、原因究明と再発防止策などを迅速に発表しなければならない。」のが広報・PRの原則だからです。 

Jリーグ5代目チェアマンの村井満さんは、この原則を頑なに守り「天日干し経営」と言われました。 そして、Jリーグの数多くの危機を救ってきました。

WEリーグからは「こちら現在関係各所に状況確認中でございますので、なにかしらお伝え出来ることが決まりましたらご連絡いたします。」という返信がありましたが、その後、連絡はありません。2024年3月25日5時にネットで公開された記事は19時間という長い時間に拡散されました。「WEリーグはルールを守れないのではないか」と憶測や批判が広がり、WEリーグへの信頼と価値が毀損しています。 

(なお、マイナビ仙台レディースにも問い合わせメールを送信しましたが返信はありません)

沈黙で得をすることは何もないはず 

繰り返しになりますが、 このエントリーが、スポニチの記事にあるように「WEリーグ理事会では議題に挙がっただけで特に問題視はされず」ということであれば、単純に、その理由と経緯を説明すれば良いだけのはずです。発表を行わないことで得をすることは何もありません。 

一つ、気になることがあります。WEリーグは発足以来、開催された理事会の進行表、決議資料、報告資料を公表資料として公式サイトのNEWSで公開してきました。しかし、2023年8月度を最後に、公式サイトのNEWSに掲載されることがなくなりました。 そのため「WEリーグ理事会で議題に挙がった」という話を、ほとんどの人は記事を見るまで知ることができませんでした。そして、記事が正確なのかどうかを照合する方法もありません。

このまま説明がなければ、これまで、みんなに見える方法を重視し、共に話し合い、オープンでフラットだったはずのWEリーグがクローズドな運営に移行しつつあると考えざるを得ません。 これは「みんなが主人公になるためにプレーする。」をクレド(行動規範)にしてきたWEリーグの根本に関わります。 理由と経緯を説明すべきです。

 

クレド(行動規範)

WE PROMISE

私たちは、自由に夢や憧れを抱ける未来をつくる。
私たちは、共にワクワクする未来をつくる。
私たちは、互いを尊重し、愛でつながる未来をつくる。

みんなが主人公になるためにプレーする。

(2024年3月26日 石井和裕)

「マイナビ仙台レディース複数選手の登録承認」取材で明らかになった「問題になること」と「問題にならないこと」 

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