女子サッカーと働く人 職場・川崎フロンターレの場合 地域に笑顔を広げる元プレーヤー3人のやりがい
Jリーグ・クラブのスタッフにも多くの女子サッカー経験者が含まれる
あなたの身近な場所で、元女子サッカー選手が働いているかもしれません。意外な場所に、女子サッカー経験者が働いていることがあります。女子サッカー選手特有の明るさや行動のリズム、そしてチームワークが高く評価されていることも多いと聞きます。
WE Love 女子サッカーマガジンでは「女子サッカーと働く人」をテーマに取材記事を掲載していくことにしました。現役選手としてプレーできる期間は限られています。しかし、プレーヤーとして得た経験は、引退後も錆びつきません。職場でそれを活かし、皆さん、生き生きと働いています。その姿をご紹介します。
川崎フロンターレで働く3人の元女子サッカー選手を訪ねる
あまり知られていませんが、Jリーグ・クラブのスタッフにも多くの女子サッカー経験者が含まれます。今回は「女子サッカーと働く人」の第一回として川崎フロンターレを訪ねました。お話ししてくださったのは加藤祐美子さん(フットボール事業統括部 プロモーション部)、平出遥夏さん(スクール・普及コーチ 川崎フロンターレSSガールズ )、牛久保鈴子さん(フロンタウン事業部 Anker フロンタウン生田 兼ヘルスケアビジネス担当)です。
2023年に川崎フロンターレSSガールズが誕生
川崎フロンターレではスクール生を対象とした15歳以下の女子チーム・川崎フロンターレSSガールズを2023年4月よりスタートしました。平出遥夏さんは川崎フロンターレSSガールズのゴールキーパーコーチを務めています。間もなく2年目を迎える川崎フロンターレSSガールズの現在について教えてくれました。
「常に笑顔絶えないチームです。『自分自身に向き合うところ』と『楽しむところ』のメリハリつけながら活動しています。まだ、人数が少ないのですが、コミュニケーションを密にとって良い雰囲気で練習をしています。」
2024年1月31日(水)まで、川崎フロンターレSSガールズ 2期生の追加募集(https://www.frontale.co.jp/info/2023/0828_4.html)を行なっています。対象者は川崎フロンターレスクールに在籍している現小学6年生の女子です。選手登録を行い、神奈川県U-15女子サッカー選手権大会等の公式戦にも出場しています。
地域の声に応えて誕生した川崎フロンターレSSガールズ
プロモーション部の加藤祐美子さんは、以前に地域の皆さんから川崎フロンターレに女子チームを作ってほしいという声を聞いていました。
「川崎市には小学生年代の女子はたくさんありますが、中学生年代の女子チームがチームが十分にあるわけではないので『いつかは中学生年代の女子チームを作ってください』という声がずっとありました。ですから、地域の皆さんに喜んでいただけると思います。川崎フロンターレSSガールズは、結果だけを求めるのではなく、将来、いろいろなところで活躍できる人材を育てることに力を入れているチームです。皆に愛される、明るい子たちが多いです。」
練習は和気あいあいとした雰囲気で進みます。ボールを使ったメニューが中心です。この日は、ノジマステラ神奈川相模原で今年3月に選手を引退した牛久保鈴子さん(フロンタウン事業部 Anker フロンタウン生田 兼ヘルスケアビジネス担当)も練習に参加しており、選手たちは元WEリーガーの見事なボール捌きを間近で見ることができました。
三者三様の職種、それぞれの就職のキッカケ
では、ここからが本題です。3人の元女子サッカー選手は、川崎フロンターレで、どのような仕事をしているのでしょうか。まずは、就職の経緯を聞いてみました。
加藤—スペランツァF.C.高槻(現:スぺランツァ大阪)で選手を引退後、川崎フロンターレでスクールコーチの仕事をしている友人から「女性のコーチを探している」という話を聞き、スクールコーチとして働きはじめました。現在は、フットボール事業統括部 プロモーション部で働いています。
牛久保—大学生のときに両脛骨跳躍型疲労骨折という怪我をしました。卒業後はノジマステラ神奈川相模原でプレーをしていたのですが、再発してしまいました。強度の高いサッカーをできなくなってしまい引退を考えていました。そのとき、川崎フロンターレが人材募集していることを知りました。2023年3月に選手を引退した後に入社しました。
平出—日本体育大学でプレーし、卒業後にフロンターレのスクールコーチとして5年間仕事をさせていただきました。2021年シーズンにAC長野パルセイロ・レディースでアシスタントコーチ兼 AC長野パルセイロ・シュヴェスター(U-18・U-15代の女子チーム)監督を務めた後、2022年シーズンから復帰し川崎フロンターレSSガールズの立ち上げに携わりました。
—平出さんはずっと指導のお仕事、加藤さんは指導から始まりプロモーション部へ、牛久保さんはフロンタウン事業部なので、職種は三者三様ですね。各々で異なると思いますが、川崎フロンターレでのお仕事のやりがいを教えてください。
牛久保—選手時代は、どうしても試合の結果だけを追い求めてしまいました。だから、サッカーの試合だけに目が向きがちでした。しかし、怪我が多く、試合になかなか出場できませんでした。そのため、物販ブースやイベントに参加する機会が増えていきました。何度も参加するうちに、自分でプレーできなくても地域の人を笑顔にできる方法があることを実感できるようになりました。将来、プレーをできなくなっても、引き続きサッカー業界で働きたいと思うようになりました。
牛久保—選手時代は相模原市に住んでいたのですが、川崎フロンターレの地域へのアプローチに気がついて興味を持つようになると「川崎市に住んだら楽しそうだな」と思うようになりました。運よく、引退を期に川崎フロンターレに就職することができました。私が働くAnker フロンタウン生田という職場は、Jリーグの試合運営に直接的には関わる機会はあまりありません。でも、地域の人と一番距離が近い施設だと思います。私は引退してファン・サポーターの前でプレーすることはありませんが、この施設で地域の人に喜びを提供できています。地域の皆さんの笑顔を間近で見て仕事をしています。それがいちばんのやりがいです。
加藤—プロモーション部では主にホームタウン活動と試合会場でのホームゲームイベントを運営するお仕事をしています。地域の皆さんと一緒に笑顔を増やしていく活動です。試合会場で開催するイベントは、サッカーとは直接の関係がない団体の皆さんともご一緒します。例えば「フロンターレ牧場・カブトムシの森~幼虫採集編~」「川崎ものづくりフェア」。地域で活動する団体の皆さんから「また次も一緒に頑張ろうね」と声をかけていただくと「やっててよかった」と思いますね。子どもたちは、90分間の試合観戦の途中で飽きてしまうこともあります。それでも、イベントに参加し楽しんでもらい「また行きたい」と思ってもらえるように活動を続けていきたいです。試合は選手に頑張ってもらい、事業は私たちで頑張る。笑顔が増えたことを感じられるのが、この仕事のやりがいです。
平出—川崎フロンターレスクールは、川崎市内6つの会場で定期開催していて、約2,400名のスクール生がサッカーを楽しんでいます。川崎市内の幼稚園・保育園(3歳~5歳児クラス)、小学校を対象にした「巡回サッカー教室」も行なっています。こういった活動により、川崎市に川崎フロンターレがあることを知ってもらい、応援してくれたり好きになってくれたりする人が増え、それを実感できています。
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