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FIFA女子ワールドカップでの経験が女子サッカーを前に進める 福岡J・アンクラスが「アンクラス女子学生マーケティング部」を発足

学校をルーツとする女子サッカーチーム、なでしこリーグ2部での新たなる挑戦

九州で一番の大都市・福岡市は女性が男性より約27万人も多く生活する地域です。福岡県全域をホームタウンとする福岡J・アンクラスは福岡女学院中学校・高等学校のサッカー部。チーム名の「J」は女学院の「J」です。

福岡J・アンクラスは常に日本一を争う「九州を代表するクラブ」になることを目指しています。将来のWEリーグ参入を見据え、現在は、なでしこリーグ2部で戦っています。2023プレナスなでしこリーグ2部では、一時は2位にまで順位を上げ優勝争いを演じましたが、上位陣との直接対決三連戦となった第10節(岡山湯郷Belle)、第11節(ヴィアマテラス宮崎)、第12節(JFAアカデミー福島)で連敗し最終順位は4位。1部への昇格は来シーズン以降に持ち越しとなりました。

有川枝里さん(左)

福岡J・アンクラスは、既に来シーズンに向けて動き出しています。いくつかのアクションが始動していますが、その一つが「アンクラス女子学生マーケティング部」の発足です。女性が活躍する社会になるための機会創出を目的とし、高校生・専門学校・短期大学・四年制大学・大学院在学中の女性を対象に2023年12月15日(日)までメンバーを募集しています(https://anclas.jp/post-13466/)。

※同時に募集している男性を対象としたインターンとワンセットの施策です

福岡J・アンクラスは、来シーズンに何をしようとしているのでしょうか。「アンクラス女子学生マーケティング部」を担当し、現場ではゴールキーパーコーチを務める有川枝里さんにお話をお聞きしました。

昇格を逃し悔しさを胸に切ったリスタート

有川4位という結果ですが14得点19失点。上位の3チームと比較すると、とにかく得点が少なかったですね。粘り強く10で勝ち切る、負けない、守備の面をかなり徹底した一年でした。横山久美選手(岡山湯郷Belle)みたいなスーパースターがいるわけではないので、どのように勝っていくかを考えました。特にリーグの前半戦は守備を固めてセットプレーでワンチャンスをチャンスを得点に結びつける戦い方を徹底。選手が戦術を理解して戦えた結果だと思っています。

チームとしての意思統一が大切なシーズンだったようですね。

有川 はい。守備を徹底するために、例えばゴールキーパーがビルドアップに参加することを、ある程度は諦める割り切りが必要となり、選手に思った通りのプレーをさせてあげられませんでした。ただ、その徹底が、今シーズンの守備の強さの秘訣となったと思います。

対戦が二巡目となる上位陣との直接対決三連戦の前までは、順調に勝ち点を重ねることができましたね。

有川 はい。実は、第10節から始まる二巡目に合わせて攻撃のバリエーションを増やすために、少しシステムを変更し、守備から攻撃への比重を増やしました。そこに守備の綻びが現れて崩れてしまったと思います。

思えば、開幕戦では、なでしこリーグに初参入したヴィアマテラス宮崎と対戦し06で敗れてしまいました。あれは衝撃的な試合でしたね。その後の戦い方に影響はありましたか?

有川 同じ九州のチームなのでライバルでもありますし絶対負けられない試合だと考えていました。しかし、開幕戦を大敗でスタートし、チームとしてやりたいことの一部を捨ててでも守備を徹底しなければならないと考えるようになりました。今、リーグ戦を終え、来シーズンに向けたスポンサー営業に回ると「ヴィアマテラス宮崎は1部に昇格するのですね」みたいな話題になることがあります。そういうときは、ちょっと悔しいですね。

スポーツチームのホームゲーム運営に参加する機会を女子学生に提供する「アンクラス女子学生マーケティング部」

さて、スポンサー営業を活発化すると同時に「アンクラス女子学生マーケティング部」をスタートされました。どのような目的で、このプロジェクトを始めたのでしょうか? 

有川 ホームゲームの運営をするにあたって、マンパワー不足が大きな課題でした。でも、福岡J・アンクラスをもっと地域に根付かせワクワクするチームにしたい。そこで学生の力をお借りしたいと考えました。スポーツチームのホームゲーム運営というリアルな現場体験を福岡J・アンクラスが女子学生の皆さんに提供することで、逆に就活や、これからの人生に活用していただければと思います。

なでしこリーグ2部も入場者数1千人達成を目指す

どのようなことを目指していますか?

有川 ホームゲームで1千人を動員することが具体的なゴールとなります。そこから逆算してSNS発信やイベント企画をしていきます。

1年前までは、なでしこリーグで1千人を動員するのは夢のような目標でした。しかし、今シーズンは各地で1千人超えを実現。1千人は、各クラブが具体的な目標に掲げる数字になってきましたね。 

有川 そうですね。そして、選手は、実際に1千人のファン・サポーターの前でアウェイゲームをプレーすると圧を感じ、全く違った感覚になります。だから、ホームゲームでも実現したいです。

サポーターの声援はピッチ上に大きな影響を与える

FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023での実体験が認識を変えた 

目標達成のための手段のイメージを教えてください。 

有川 まず、新規来場者を獲得し、そこからリピーターを増やしていきたいです。福岡の人はお祭りが好きです。賑やかで楽しいと思えるホームゲームにしたいと思います。

早朝から博多祇園山笠「追い山」のテレビ生中継があるくらい福岡の人はお祭り好き。櫛田神社には飾り山笠が6月を除き一年中展示されている。

福岡J・アンクラスの皆さんは、FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023を現地まで観戦に行かれました。あの大会の試合会場周辺は、試合前から試合後までフルに一日を楽しめる魅力に溢れていました。現地を体験した影響があるのではないでしょうか?

有川 かなり影響を受けています。ファミリー層の来場が多い大会でした。両親と子ども、それに、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に来場されているファンをたくさん見ました。むしろ、サッカーの中身をじっくりと見る人は、あまりいないように感じました。私もJリーグの試合を含めいろいろな試合を見にいきましたが「雰囲気が楽しかったから行った」みたいなところがありました。今回のFIFA女子ワールドカップもまさしく、そのようなムードでした。それが良かった。スポーツの楽しみ方が根付いているように感じました。

FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023 準決勝観戦のためにシドニーを訪れたイングランド女子代表サポーターファミリー

それは貴重な体験をされましたね。

有川 福岡J・アンクラスの選手も一緒に観戦しました。「これが女子サッカーだね」「ここまで来たね」「この大きな舞台が用意される時代になった」と話しながら、皆で感動しました。

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