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「勝つべき試合だった」引き分けを悔やむ両チーム 日テレ・東京ヴェルディベレーザ0−0ちふれASエルフェン埼玉 #女子サカマガ WEリーグ ピックアップ(無料記事) 

ついにWEリーグで対等な関係として相対したテレ・東京ヴェルディベレーザとちふれASエルフェン埼玉 

晴天の味の素フィールド西が丘で行われたWEリーグ第5節、日テレ・東京ヴェルディベレーザとちふれASエルフェン埼玉の対戦はスコアレスドローに終わりました。試合終了のホイッスルが響くと、両チームの選手が肩を落とし悔しそうな表情を見せました。 

ドリブル突破を思うようにできかった山本柚月選手 写真提供:WEリーグ  TOP画像も

結果にも内容にも不満を見せた池谷孝監督(EL埼玉) 

ちふれASエルフェン埼玉・池谷孝監督は、試合後の会見で選手たちに厳しい注文をつけました。 

「もっと野心を持って高みを目指し、それを態度に表してやってほしい。」 

試合の鍵となったのはちふれASエルフェン埼玉の5バックです。前半と、後半の途中からではやり方が違った5バックの布陣は狙い通りだったのか、止むを得ずだったのか……「深いサッカーの歴史を持つ静岡県の藤枝市」でサッカーを始めた池谷監督は「(ああいうサッカーをやりたくない」と話したものの真相はわかりません。ただ、一つ印象に残ったことは、ちふれASエルフェン埼玉は日テレ・東京ヴェルディベレーザとの対戦でも勝ち点1では満足できないチームになったということです。 

以前とは違う、自信に満ちた瀬野有希選手(EL埼玉) 

瀬野有希選手はフォワード登録が発表されましたが、中盤のポジションでプレーしました。池谷監督と同じように、引き分けには満足していない表情でした。 

「勝ち切りたいし、勝つサッカーをしたいと思っているので、ワンチャンスでも良いからものにできる強さを身につけたいです。全員で勝ちに行こうという思いで試合に入ったのですが、引いた形になってしまいました。」 

収穫として「失点ゼロで抑えたところ」を挙げた瀬野選手ですが、明らかに、この引き分けを良い結果だと考えていないことが受け答えでセレクトされる単語から伝わってきました。 

「自分たちは代表レベルの選手が揃っているチームではありません。頭を使った部分で相手を上回ることを練習から意識して取り組んでいます。相手に絶対に負けないという気持ちもあるし、守備のデュエル(一対一)で負けなければ絶対に負けないと思う。」 

つまり、この試合を引き分けに持ち込めることは、今のちふれASエルフェン埼玉にとっては当たり前。本気でビッグ3からも勝ち星を奪い取り上位進出を目指しているのです。 

球際の激しさを見せた瀬野有希選手 写真提供:WEリーグ

しっかりと勝ち切る力がリーグ優勝に必要と考える松田岳夫監督(東京NB) 

一方、リーグ王座奪還を狙う日テレ・東京ヴェルディベレーザの松田岳夫監督は痛い星を落としたという認識です。 

「一つの引き分け一つの負けが非常に大きく影響すると考えるならば、今日の引き分けは負けに等しいゲーム。」 

その表情には悔しさが滲み出ていました。 

「(藤野)あおばが典型的ですけれども、相手の人数が多くても一人交わせば数的優位ができる。前半はパスに頼りすぎていました。綺麗に崩そうというイメージが皆の頭の中にあったのだと思います。力強さ、強引さはゴールを奪うために必要な要素なので、非常に物足りなさを感じました。しっかりと勝ち切る力がないと優勝は手に入らないと思うので、課題が多かったゲームだと思います。」 

悔しい結果に終わったが、メインスタンド、バックスタンド、ゴール裏スタンドの前でサインや写真撮影に快く対応した日テレ・東京ヴェルディベレーザの選手たち 写真提供:WEリーグ

「前半途中で修正すべきだった」悔やむ日テレ・東京ヴェルディベレーザの選手たち 

土方麻椰選手は、なかなか持ち味を発揮することができず苦しみました。 

「ディフェンス陣が無失点に抑えてくれたのにも関わらず、自分が得点を奪い取る姿勢を見せられなかった。自分の実力不足が悔しいです。」 

土方麻椰選手と柏村菜那選手は、試合を終え大阪に向かい、この日からJ ーGREEN堺で行われているU-19日本女子代表候補 トレーニングキャンプに遅れて合流します。 

自らの役割を自覚する19歳・藤野あおば選手(東京NB) 

藤野あおば選手は12月6日にブラジルからの長旅を終えて帰国したばかり。後半から右のサイドハーフで出場しました。前半をベンチからどのように見つめ、何を考えてフィールドに登場したのでしょうか。 

「5バックの相手を内側から崩すのはなかなか難しいと思っていました。シュートを打って相手を引き出すのも一つの手段です。前線の選手としてプレーする以上、得点を狙うべきだと思います。前線から守備もする、カウンター攻撃のために前に進んでいく……チームの目指す場所を示すのも大事な役割だと思います。誰かがやらなきゃいけない。そういう役割を担いながらやるという気持ちで試合に臨みました。」 

5バックを打破するため積極果敢にチャレンジした藤野あおば選手 写真提供:WEリーグ

「前半に自分のところで決めるべき試合だった」木下桃香選手(東京NB) 

藤野選手が加わり、後半の日テレ・東京ヴェルディベレーザは縦への推進力が強くなりました。しかし、その影響でちふれASエルフェン埼玉の戦い方に変化が現れました。それが、また、試合を難しくしたようです。木下桃香選手は「後半から(藤野)あおばが入ったといこともあり、相手が割り切って引いた」と考えています。 

「松田さんから『相手が引いて攻めあぐねていると思っているかもしれないけど、実際の相手のラインは高いから裏を取れる』という話をされました。自分たちもそれは感じていたのですが、後半入り一度押し込んだらガッチリと引かれました。ハーフタイムではなく、前半の途中で修正すべきでした。」 

前半から、もっと高いポジションを取るべきだったかもしれない木下桃香選手 写真提供:WEリーグ

両チーム共、勝ち切るために新たな課題と向き合う  

ちふれASエルフェン埼玉は、木下選手の言うように「割り切って引いた」のか、瀬野選手が言うように「引いた形になってしまった」のか、取材を終えてもわからないままでした。池谷監督もはっきりとしたことは語りません。ただ、結果を見れば5バックの最終ラインの高さが両チームの選手と監督にとって悔しさを残す要因となったことは明らかです。 

日テレ・東京ヴェルディベレーザは、ちふれASエルフェン埼玉の背後を狙うことが難しくなりました。ハーフタイムに松田監督が選手に授けたアドバイスはいくつかが無効になりました。逆に、ちふれASエルフェン埼玉はボールを奪っても日テレ・東京ヴェルディベレーザのゴールまでの距離が遠くなりました。結局、一度もゴールネットが揺れることはありませんでした。 

松田監督はこのような話もしています。 

「選手がこれをきっかけに、もっとその勝負へのこだわりを持てるようになれば、この引き分けは、ある意味、価値のあるきっかけになっていく。」 

今の日テレ・東京ヴェルディベレーザは各々が課題を認識し、強くなりたいという空気に満ちています。きっと、これから力強さを増していくことでしょう。そして、ちふれASエルフェン埼玉も、今までの立場に留まりません。新しいステージで戦っていることを選手自身が自覚しています。次の対戦で、どのような試合を見せてくれるか楽しみです。今シーズン、ここまでの両チームの対戦成績は日テレ・東京ヴェルディベレーザの0勝1敗1分です。 

(2023年12月10日 石井和裕)

 

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