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ヘッドトレーナー田村亜有さんが選手平均身長188cmの職場で積み重ねるキャリア Bリーグで目指す近未来

プロスポーツの最前線・Bリーグで活躍するヘッドトレーナー WEリーグも学びたいプロ意識

東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(TUBC)は2022―23シーズンに新規参入した男子プロ・バスケットボール・チームです。現在、B3リーグ(JリーグでいえばJ3に相当)を戦い、有明アリーナを拠点に東京ベイエリア(東京湾岸・隅田川、東京東側エリア)をホームエリアとしています。2024年1月7日(土)、8日(日)は女子サッカー・ファンにもお馴染みのヴィアティン三重をホームゲームに迎えます(先着1千名さまチケット割引キャンペーンを開催中)。

そんなTUBCが、2022年5月27日に発表した「田村亜有ヘッドトレーナー 契約締結のお知らせ」に驚いたことを、筆者は今でも覚えています。田村亜有さんは1995年生まれ。当時は27歳。プレスリリースには、テクニカルディレクター・庄司顕人さんのコメントが記されていました。

「この度、田村亜有氏にヘッドトレーナーに就任していただくこととなりました。今回、ヘッドトレーナーという責任のあるポジションを任せたいと思い、オファーをいたしました。非常に責任感が強く、仕事に対しプライドを持って真摯に取り組んでくれると思います。TUBCに必要な存在となり活躍してくれると思います。田村ヘッドトレーナーを中心にクラブとしても選手を支えて行きます。」

あれから一年余りが経ち、TUBCは2年目のシーズンを迎えています。そして、田村さんのトレーナーとしてのキャリアは9年目に突入しました。田村さんはトレーナーチームのヘッドの立場でTUBCを支えチームのB2昇格を目指します。ヘッドトレーナーとしての仕事のみに留まらず、試合会場ではスタンドに笑顔をふりまき、SNSではファンの発信に丁寧に答えます。

今回はサッカー界の外に視点を向け、女性の仕事にフォーカスします。田村さんの仕事に賭ける情熱と原動力は何なのでしょうか。そして、TUBCが評価した田村さんの「仕事に対するプライド」とは何なのでしょうか。

ファンとコミュニケーションを積極的にとる田村亜有ヘッドトレーナー 提供:T U B C

自分の手でアスリートのサポートをしたい

田村本当にあっという間ですね。シーズンが始まり、気づいたらシーズンが終わっているという一年を繰り返してきました。一生懸命に頑張らないと、時はすぐ過ぎ去ってしまいます。この9年間はがむしゃらに走り続けてきた感じです。

なぜ、バスケットボールチームのトレーナーになろうと思ったのでしょうか?

田村 高校生のときはバスケットボール部でした。ある女性アイドルグループがすごく好きで、ライブに通って推し活みたいなこともしていました。部活を引退したタイミングで「進路をどうしようかな?」と悩んでいたある日、見ていたライブのメイキング映像に、アイドルが過呼吸で倒れてしまうシーンが入っていました。そして、懸命にサポートするメディカルスタッフのような方が映っていました。それを見たとき「アイドルは、すごく華やかに踊って歌って、いろいろな人を元気にしてくれるけれど、その裏には大変なことがあり、それを支えている人がいる」ということを知りました。「裏方で支えることはかっこいい」と思いました。それがトレーナーを目指したきっかけです。

チームメイトからは「たむたむ」の愛称で親しまれる田村亜有ヘッドトレーナー 提供:T U B C

トレーナーの仕事に役立つ資格や技術はいくつかありますが、その中で柔道整復師の資格取得を選択したのはなぜですか?

田村 日本にはいくつかトレーナーになるために役立つ資格はあるのですが、トレーナーそのものの国家資格がありません。私はトレーナーになることを目指し専門学校に入学して柔道整復師の資格を取得する勉強を始めました。学生のときに、患者として整骨院整形外科のお世話になることがありました。そのとき、私には「手で治してもらった」印象が残っていました。「手当て」っていうじゃないですか。私も、自分の手でアスリートのサポートをしたいと思ったのが柔道整復師を選んだ理由です。

なぜBリーグのチームで働くことになったのでしょうか?

田村 勉強をしながら現場を知ることも必要だと考え東京エクセレンス(現・横浜エクセレンス)で学生インターンとして働かせていただきました。それがきっかけです。バスケットボールが好きだったし「そのままバスケットボールチームのトレーナーになれたら……」と思っていたのですが、ご縁もあって、翌シーズンからトレーナーとして契約をさせていただくことができました。

学生インターンに入った年はN B D L(Bリーグがスタートする前の3シーズンに行われたバスケットボールのトップリーグの一つ)の最終年度でした。私が専門学校の最終学年のときに(N B D Lとbjリーグが統合して)Bリーグが開幕するというタイミングでした。将来のことを考えて国家資格を取得する勉強もしなければならなかった。でも、目標としているトレーナーになれるチャンスだったので「やるしかない」と在学中に飛び込みました。技術も知識も足りなく、まだ、国家資格も取得できていない状態から7シーズンもお世話になり、育てていただきました。そのおかげで、TUBCに自信を持って移籍することができました。

ホイッスルを吹いてウォーミングアップのリズムをつくる田村亜有ヘッドトレーナー

TUBC だから持つことができる目標

田村 チーム作りも、クラブとしての成長も、TUBCの最初の一年間は手探りでした。ただ、チームとして初めてのホーム開幕戦で9千295人という、当時の B1、B2、B3の最多入場者数記録(※クラブ主管試合として)となるファンをフロントが集めてくれたときに「今後の可能性が本当にすごい」と思いました。今度はチームとして、お返ししていかなければいけないという気持ちになりました。2年目のシーズンとなった今年の10月に、目標としていた1万人を集めることができました(クラブ主管試合の最多入場者数記録を更新する1万358人)。いつかは、1万5千人を目指したいです。

個人的な目標よりも、1万5千人という数字が先に出てくるところにTUBCらしさを感じます。

田村 TUBCの日々の活動の中で自然と出てきた目標です。このクラブにいないと、この数字の目標を簡単には語れないと思っています。

田村さんは、実に積極的に、このクラブの目指すところに向かって取り組んでおられるように感じますね。

田村 TUBCへの移籍を機にSNSでの発信も積極的にやっていこうと思いました。まずは、新しいチームを知ってもらわないことには応援してもらえないと思っていたので、何かきっかけづくりが必要だと思ったからです。SNS で発信すると反応してくださる方が増え、それをきっかけに「試合に行きました」と伝えてくださる方もいらっしゃいました。本当にありがたいと思いますし、やってきたことが間違いではないと確信させてもらえました。私も好きな女性アイドルグループの推し活のようなことをしていたので、自分がしてもらって嬉しいと思ったことを、できるだけやろうと心がけています。

ベテランの宮田諭選手(1978年生まれ)とは東京エクセレンス時代からのチームメイト

男性のプロチームで働くことで生じる難しさはありますか?

田村 今の環境が当たり前になっているので、あまり難しさを感じていません。女性のチームは全く雰囲気が違うと聞くので、私は逆に女性のチームの職場に踏み込むことに勇気が必要かもしれないですね(笑)。

ウォーミングアップ時に選手の動きを見守る田村亜有ヘッドトレーナー

田村 選手にとって、自分の身体は商品。もし、大きな怪我をしてしまったら、その次の契約があるかどうかがわからない日々を過ごしています。

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