WE Love 女子サッカーマガジン

中嶋淑乃選手の絶妙アシストで先制 サンフレッチェ広島レジーナが苦渋の選択で守り切り連敗を止める 大宮アルディージャVENTUSは終盤に猛攻 #女子サカマガ WEリーグ ピックアップ(無料記事) 

WEリーグからなでしこジャパン(日本女子代表)入り、勝利に導いた中嶋淑乃選手のドリブル

WE Love 女子サッカーマガジンが週末のWEリーグから一試合をピックアップ。今回は大宮アルディージャVENTUSとサンフレッチェ広島レジーナの一戦(第4節 NACK5スタジアム大宮)をお届けします。 

柳瀬楓菜選手と新コンビを組む渡邊真衣選手

2023−24 WEリーグの覇者・サンフレッチェ広島レジーナは2023−24 WEリーグで苦難のスタートを切りました。開幕直前に小川愛選手が受傷。骨疲労骨折に伴う手術を行い全治3ヶ月と診断されたことが大きく影響したと思われます。ここまで、まさかの無得点で連敗スタート。しかし、この試合ではリーグ戦3試合目にしてついに本来の力を発揮。2−1で勝利し、駆けつけた紫色のサポーターは歓喜に沸きました。 

強さを感じさせた渡邊真衣選手 写真提供:WEリーグ  TOP画像も

チーム立ち上げ以来、小川選手とコンビを組んできたのは柳瀬楓菜選手。コンビネーションを磨き、3シーズン目にしてチームの初タイトル獲得に大きく貢献しました。小川選手の離脱により、その名コンビは一時中断。第2節から、中盤の中央に起用され新コンビを組むのは渡邊真衣選手です。渡邊選手は日本体育大学から2023年に加入した「サッカーインテリジェンスが高い」プレーヤー。この試合では、小川選手の不在を感じさせない推進力を二人がチームにもたらしました。何か工夫はあったのでしょうか。柳瀬選手に聞いてみました。 

「試合を重ねるごとにコミュニケーションが増えてきています。今日は『お互いのことをよく見てプレーしよう』と意識して入ったので、ボール切れたタイミングで、いつもより多く声を掛けました。」 

ハイプレスが大宮アルディージャVENTUSの良さを消す 

サンフレッチェ広島レジーナは、素晴らしい守備で、立ち上がりから試合の主導権を握りました。前線の選手がハードワーク。最終ラインは状況に応じて素早くディフェンスラインを上下動し、大宮アルディージャVENTUSのパスワークを封じ込めました。その結果、高い位置でボールを奪取することができました。サンフレッチェ広島レジーナの中村伸監督は「全選手が同じ絵を描いて、同じ強度でプレーしないと、相手を上回ることはできない」と話します。そして、右サイドバックを務めた主将の近賀ゆかり選手は「横のつながりと縦のつながりが良い距離感でできた」と話しました。まさに、ピッチ上で同じ絵を描いて奪い取った勝ち点3でした。 

35分に得点した松本茉奈加選手と41分に得点した上野真実選手 写真提供:WEリーグ

代表選手の実力を見せつけた中嶋淑乃選手 

先制点は中嶋淑乃選手による圧巻のドリブルから。自陣から走り込み、ドリブルでゴールラインギリギリにまで一直線に持ち込み、逆サイドへ浮き玉のクロス。その間に飛び込んできた松本茉奈加選手に合わせました。松本選手のヘディングゴールが2023−24 WEリーグでのチーム初得点です。試合後の中嶋選手はチームメイトと別行動。広島に戻ることなく、なでしこジャパン(日本女子代表)のブラジル遠征に合流します。 

「チームメイトが私の良さを出してくれます。今日も『(ブラジル遠征)頑張ってね』と 皆に言ってもらいました。皆のためにも自分のプレーを出したいと思います。」 

終盤の攻勢が強い印象を与えた大宮アルディージャVENTUS 

ここからは、この試合を、大宮アルディージャVENTUS側から振り返ってみましょう。大宮アルディージャVENTUSの柳井監督は「3試合とも前半で(相手の攻撃を)少し受けてしまってもったいなかった」と、自らの采配に修正の必要性を感じています。 

「今シーズンはボールをしっかり大事につなげたいと考えているのですが、やっぱり『フットボール』というところから少し離れてしまってはいけないと思います。前から強く圧をかけてくるところを、こだわってかわしていくことも一つの方法でありますけど、しっかりと背後にランニングをすること、相手をしっかりと押し返すことをもっと強調していかなければいけないです。」 

もちろん、大宮アルディージャVENTUSの選手は休むことなく走っているのですが、ボールを保持したサイドバックが圧力が受けたとき、もしくは受ける前のところで、パスの出し先に奥行きの駆け引きが必要だという点を課題として挙げました。サンフレッチェ広島レジーナのマークが厳しく「マッチアップが完全にロックオンされてしまった」という表現を使いました。 

サンフレッチェ広島レジーナの右サイドを慌てさせた杉澤海星選手 写真提供:WEリーグ

大胆な勝負を繰り返す大島暖菜選手と杉澤海星選手 

前半は良いところをあまり披露できず2−0とサンフレッチェ広島レジーナのリードで折り返し。大宮アルディージャVENTUSは57分に阪口萌乃選手のミドルシュートで1点を返します。さらに、選手交代で試合のリズムを変えられるのが大宮アルディージャVENTUSの強みです。第2節で決勝ゴールを決めた大島暖菜選手を58分に右のアタッカーとして投入。ドリブル突破を繰り返し大きな脅威となりました。 

そこから大宮アルディージャVENTUSの攻撃は目に見えて活性化。杉澤海星選手は左のタッチライン際で積極的にドリブル。主に内側のポジションをとるようになった鮫島彩選手とのコンビネーションでサンフレッチェ広島レジーナ陣内深くに侵入を繰り返していきました。勢いを増す大宮アルディージャVENTUSの攻撃を凌ぐためため、サンフレッチェ広島レジーナは85分に立花葉選手を投入し、ディフェンスラインを低く構える布陣に変更しました。 

サンフレッチェ広島レジーナは、大宮アルディージャVENTUSの猛攻を凌ぎ切り連敗をストップ。逆に大宮アルディージャVENTUSは三連勝とはなりませんでした。しかし、大宮アルディージャVENTUSがスタンドのファン・サポーターと対戦相手に、一定のインパクトを与えたことは間違えありません。 

今シーズンのサンフレッチェ広島レジーナの最終ラインは市瀬千里選手の加入で大きく変化 写真提供:WEリーグ

サンフレッチェ広島レジーナの中村監督は試合後に「試合終盤にディフェンスラインを低く構えたこと」「最終ラインが五枚になったこと」を質問され、次の言葉から切り出しました。 

「正直に言うと、レジーナにとって本当に成長につながる戦い方だったのかはわからない。」 

連敗スタートのリーグ戦。どうしてもこの試合を勝たなければいけないと考え、中村監督は苦渋の選択をしたと考えられます。 

両チームともビッグ3の追撃へ 

気がつけば、順位表の1位から3位までを、再びビッグ3(東京NB、I神戸、浦和)が独占しています。しかし、まだリーグ戦は始まったばかりです。強さを取り戻したと感じる戦いぶりを披露したサンフレッチェ広島レジーナ、課題はあるものの相手ゴールに迫る鋭い攻撃を印象付けた大宮アルディージャVENTUS、どちらも挑戦権を有しています。 

(2023年11月26日 石井和裕)

サンフレッチェ広島レジーナ加入直後にインタビュー取材に応えた中嶋淑乃選手の記事。 

3年目で一気に才能が開花したドリブル・クイーン 中嶋淑乃選手(S広島R)の #女子サカ旅

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ