WE Love 女子サッカーマガジン

シドニー発 オーストラリア女子代表から学ぶ女子サッカー人気爆発の理由 スポーツ環境、わかりやすさ、ストーリー、クリエイティブ

FIFA女子ワールドカップはシドニーのスタジアム・オーストラリアで準決勝が行われ、開催国のオーストラリア女子代表が1-3で敗れましました。その結果、決勝戦のカードはイングランド女子代表とスペイン女子代表の対戦に決定。どちらが勝利しても初優勝となります。

ファミリーで応援に駆け付けるサポーターが多い

筆者はマチルダズ(オーストラリア女子代表の愛称)の人気の凄まじさを生で感じました。パワーに溢れています。この試合の入場者数は7万5千人を超えました。巨大スタジアムに絶叫が響きます。オーストラリアで生活する日本人に話を聞くと、オーストラリアの女子サッカーは大会が近づくまで人気スポーツとまでは言えなかったとのこと。しかし、チームの躍進に比例して国民の熱狂度が上がり続けてきました。

スタジアムの近くに並ぶキッチンカー

大音量で音楽が響き、光が舞う特別な空間に選手が入場し、スタンドのファン・サポーターと一体に。積極果敢なプレーに連動した声の圧力は、序盤、イングランド女子代表のプレーから精度を奪いました。

オーストラリアで女子サッカー人気を引き上げた理由4項目を考える

この熱気、この一体感はどこから生まれたのでしょうか。前回に続いて、このテーマを深堀します。今回は、N P Lヴィクトリア・ウィメン(Aリーグ・ウィメンから数えて2部リーグに相当)のハイデルベルク・ユナイテッドF Cでプレーする大宮玲央奈選手への取材と、現地観戦で実際に目にした出来事をミックスし、オーストラリア女子代表の人気が爆発した理由をシドニーよりお届けします。

さまざまな要因が考えられますが、整理すると、主な理由としてこの4項目が考えられます。順を追って説明していきましょう。

  • 誰もが楽しめるわかりやすさ
  • スポーツに親しむ環境
  • 共感が広がるストーリー
  • 優れたクリエイティブ

最寄駅混雑のため試合後に1時間以上歩いて乗った電車でシドニー中心部に向かい疲れた表情で降りるサポーター

1.誰もが楽しめるわかりやすさ ぶつかり合いに沸く

オーストラリアの女子サッカーのわかりやすさと国民が望むスポーツスタイルがマッチし、観戦経験が浅い人でも楽しめるムードが生まれたと考えられます。Aリーグ・ウィメンでのプレー経験もある大宮選手は、このように話します。

「マチルダズのサッカーにはシンプルに勝敗がわかりやすい面白さがあります。ドリブル、スルーパス、球際でぶつかるところ……オーストラリア人たちはそういう戦いを好んでいて、プレーする人も見ている人も楽しんでいる気がします。面白さのハードルの低さを感じますね。だから、FIFA女子ワールドカップが始まったときに、初めて見にきたファンが一気に乗れたと思います。日本では玄人好みの戦術の部分やポジショニングで褒められることが多いですが、初めて見る人にはそれが少し伝わりにくいかもしれません。」

確かに単純なプレーにドッと沸きます。特にオーストラリアのファン・サポーターが好むのは勇猛果敢な突進です。ボール保持者に躊躇なく走り込んで奪いに行くプレー、競り合いで身体をぶつけて相手のバランスを崩すプレー、ゴールに向かって一直線にドリブルするプレー。スタンドが要求することもあって、選手は何度でも繰り返します。

なでしこジャパン(日本女子代表)もスウェーデン女子代表戦で見せた長谷川唯選手(マンチェスター・シティ)の一対一からの突破、グループステージで得点を重ねた宮澤ひなた選手(マイ仙台)のディフェンスラインの裏に抜け出すスピードとタイミング、遠藤純選手の相手の裏を描く上手さ、高橋はな選手(浦和)の力強さ、藤野あおば選手(東京NB)のシュート力といったわかりやすいポイントがいくつもありました。「見にいきたい」と多くの人が感じる際立った個性を磨くことで、日本でも女子サッカー観戦の魅力が広がることでしょう。そして、その面白さをたくさんの人が広く伝えることも重要かもしれません。

中継でマチルダズについて伝えるレポーター

2.スポーツに親しむ環境

「老若男女がスタンドに集まりますが、若いファンも多く目立ちます。若い子たちが週末に友達同士でスポーツ観戦する文化は元々あったと思います。スポーツを身近に感じる環境です。試合を見に行く習慣みたいなものが日本とはかなり違うと思います。」

(残り 2003文字/全文: 4047文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ