WE Love 女子サッカーマガジン

FIFA女子ワールドカップ ベスト8につながった壮行試合・MS&ADカップ2023はなぜ成功したのか 「M S&A Dインシュアランスグループ」から見たなでしこジャパン

なでしこジャパン(日本女子代表)の挑戦は、ひとまず終わりました。テレビ中継が危ぶまれる中で迎えたFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023カップは、笑顔の大躍進が日本中に共感を呼び起こしました。その起点は、どこにあったのでしょうか。

2023年7月14日、雨あがりの金曜日の夕方、ユアテックスタジアム仙台は温かな声援と熱気に包まれていました。MS&ADカップ2023は1万206人のファン・サポーターを集め大成功となりました。筆者が国内のスタンドで見た女子サッカーの試合で、ここまで大きな感動を味わえた試合は、これまでを振り返っても、なかなかなかったかもしれません。素晴らしい見送りを受け、なでしこジャパン(日本女子代表)は、翌日に仙台から成田空港へ移動し、FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023の行われるニュージーランドへ旅立ちました。

大会を終えて帰国した熊谷紗希選手は「最後の親善試合のパナマ戦で少し自信を掴み臨めたワールドカップでした。」と振り返りました。

幅広い年代がスタンドに詰めかけた Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410 ※M S&A Dカップ2023 トップ写真も

誰もが幸せを味わえる壮行試合となった

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 広報・IR部の石元和子さんは、この試合を次のように振り返ります。

「今回、特にこだわったのは、より多くのファン・サポーターの皆さんに試合会場へお越しいただき、なでしこジャパン(日本女子代表)へ直接エールを送ってくださることでした。これまで、新型コロナウィルスによる大会の中止や、感染対策のために観客数を減らしたり、声を出せないなど、たくさんの制限がありました。2020年4月にもユアテックスタジアム仙台でMS&ADカップの開催を予定していたのですが、約1ヶ月前に中止になってしまいました。今回は、ようやくそうした制限がなく、FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023ワールドカップ前、国内最後の国際親善試合を開催することができました。すごく感慨深い大会でした。」

スタンドには、未来の社会を支えてくれる若い世代が多く詰めかけ、選手に声援を贈っていました。選手は、笑顔でそれに応えました。試合開始前から試合終了後の壮行会が終わるまで、ユアテックスタジアム仙台は誰もが幸せを味わえる空間でした。

常盤木学園高校出身の熊谷紗希選手、マイナビ仙台レディース所属の宮澤ひなた選手、元所属の長野風花選手、仙台市生まれの長谷川唯選手を大きくレイアウトしたビジュアル

宮城県サッカー協会の山田晋誠さんはこの大会の成功要因として、宮城県民のプロスポーツへの関心が高いことと、宮城県ゆかりの選手が活躍したことを取り上げました。

「宮城県内には3競技4つのプロスポーツチームがあり、トップレベルの競技に対する関心が高いです。仙台市はマイナビ仙台レディースのホームタウンなので、女子サッカーへの認知度はWEリーグクラブがない地域よりも高かったのではないかと思います。また、なでしこジャパンのメンバーには常盤木学園高校出身の熊谷紗希選手や、マイナビ仙台レディースの宮澤ひなた選手等、宮城県にゆかりのある選手が選出されています。これら選手の関係者がご自身の周囲に積極的にお声がけいただいたことも、多くの方にお越しいただけた理由のひとつだと考えています。」

しかし、それだけで大会が成功するわけではありません。WE Love 女子サッカーマガジンでは、この大会がなぜ成功したのかについて、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社と宮城県サッカー協会に取材し、舞台裏をお伝えすることにしました。この試合のために奮闘した、女子サッカーを愛する、たくさんの人たちの思いと行動が伝わればと思います。

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングスは日本サッカー協会メジャーパートナー

ここで、MS&ADインシュアランス グループと女子サッカーとの歩みについて振り返っておきましょう。MS&ADインシュアランス グループは5つのグループ国内保険会社(損害保険会社3社、生命保険会社2社)を中核とする保険・金融グループです。

MS&ADインシュアランス グループによるサッカー日本代表サポーティングカンパニーとしての活動は、三井住友海上が2008年にスタートし、2015年からMS&ADグループ全体でサッカー日本代表を応援しています。2023年1月からは、メジャーパートナーとして、日本代表以外の領域の支援へも拡大し、日本サッカー界のさらなる発展に貢献しています。

なでしこジャパン(日本女子代表) Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンと女子サッカーとの親和性

MS&ADインシュアランス グループは、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの実現を目指しています。エクイティとは「公平性」を意味する英語です。MS&ADインシュアランスグループは「多様性を認め、尊重され、個々の持つ能力が発揮できる環境(ダイバーシティ&インクルージョン)」に「公平性」の観点を加えた企業活動に取り組んでいます。世の中に存在するハンディキャップを埋めて、誰もが同じ環境でスタートラインに立てるようにしたいというのがエクイティの考え方なのです。

MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 広報・IR部の石元和子さん

冒頭でコメントを紹介した石元さんは長くサッカーのスポンサー業務に携わっています。その間、会社の在り方にエクイティの観点が加わったのと同じように、企業のスポンサーに対する考え方も変化してきています。

「JFAも各社スポンサーの皆さんも、協賛を通じて、社会価値の共創や社会課題の解決へ向けた活動に非常に力を入れていると感じています。我々もそうしたJFAのメジャーパートナーとしての使命感や意義を感じています。支援が必要なところに我々のリソースを割いて、より良いサポートをしていきたいと思っています。また、JFAやスポンサー各社の皆さんとも連携しやすい環境になってきています。」

MS&ADインシュアランスグループは、JFAやスポンサー各社と連携することが増え、MS&ADカップ2023の盛り上げにつながりました。

チーム単位での観戦は忘れられない体験となったはず Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

約1ヶ月間の取り組みが機運を高めた

仙台ではMS&ADカップ2023だけではなく、いくつもの取り組みが複合的に行われました。

MS&ADなでしこウォークin仙台
2022年に初めて開催したMS&ADなでしこウォーク。サッカー日本代表のユニフォームを着用し、約300名の参加者がなでしこジャパンの勝利を願い「MS&ADカップ」のが行われる会場付近約5キロを歩くイベントです。

昨年度は、MS&ADカップ2022の当日にイベントを開催しましたが、今年のMS&ADなでしこウォークin仙台は、MS&ADカップ2023の約1か月前である6月10日に開催しました。仙台市の七北田公園多目的広場から、MS&ADカップ2023の会場であるユアテックスタジアム仙台を通り、台原森林公園駅前広場まで約5kmを歩きました。ゲストは佐々木則夫さん(JFA女子委員長)、澤穂希さん(元なでしこジャパン キャプテン)、中西哲生さん(スポーツジャーナリスト/パーソナルコーチ)、日々野真理さん(M C/スポーツキャスター)。イベント終了後、参加者にMS&ADカップ2023の観戦チケットを進呈しました。

MS&ADサッカー教室in仙台
2023年7月8日に小学校低学年のサッカー初心者を中心とした親子80名以上が集まり、ウォーミングアップや親子でのサッカーを楽しみました。特別ゲストに鮫島彩選手、近賀ゆかり選手が参加し、集まった参加者の子どもたちと触れ合いました。こちらも、参加者にMS&ADカップ2023の観戦チケットを進呈しました。

石元さんによるとMS&ADなでしこウォークin仙台をMS&ADカップ2023の1か月前に実施したことで、MS&ADカップ2023とFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023の開催を上手く周知することができたそうです。

「ウォーキングイベントや各種盛り上げ策の展開を通じて、当社グループ内も『MS&ADカップを盛り上げて、なでしこジャパンを応援しよう!』という雰囲気が高まりました。」

応援をアツくしたのは子どもたちの声援だった Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

本気で議論したことが成功につながった

どうすればユアテックスタジアム仙台に1万人以上を集めることができるのか……MS&ADインシュアランスグループは、JFAの担当者と長時間にわたる打ち合わせを何度も重ねました。JFAが宮城県サッカー協会を通じて地元のサッカーチーム向けの集客活動を積極的に行うと知り、それとは異なる層にアプローチしていくことを決めました。

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