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なでしこジャパンはノルウェーと優勝経験国対決 ラウンド16の前に知っておきたい4つの知識 チェルシーでプレーする2人に注意

見事な戦いぶりで、なでしこジャパン(日本女子代表)はFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023のグループステージを突破しました。そのコンパクトで丁寧な守備の精度が光ります。特に、スペイン女子代表戦ではタイトなマークを貫き通し、テクニックとスピードに優れたスペイン女子代表選手の持ち味を封じ切りました。

例えば、18番のサルマ・パラジュエロ選手。174センチの長身で左足を使ったドリブル突破が得意で、F I F A U-20女子ワールドカップの決勝戦で、日本から2得点を奪った優れた選手です。俊足が武器で、2019年の欧州ユースオリンピックフェスティバルの400mハードルと400mリレーで金メダルを獲得していますが、テレビで初めて見たファン・サポーターは、そのような個性を持った選手だと気づかなかったかもしれません。なぜなら、パスを受けた瞬間に、なでしこジャパン(日本女子代表)の選手たちは一気に距離を詰め自由を奪っていたからです。一対一の守備が綻ぶ場面はほとんどなく、最後までスペイン女子代表の攻撃がスピードに乗ることもありませんでした。

トレーニングで徹底していた、相手に前を向かせない守備

相手をコントロールしボールを持たせ、奪いどころに誘導した上で奪取。素早く攻撃に反転し得点を奪う、池田太監督が狙ってきた「奪う」サッカーは、スペイン女子代表に対しても、そのコンセプトが揺らぐことはありませんでした。

なでしこジャパン(日本女子代表)は今後の移動が比較的楽な1位突破を達成。ラウンド16でノルウェー女子代表と対戦します。

すでに4得点し、得点王争いを演じる宮澤ひなた選手(マイ仙台)

ノルウェー女子代表を率いる監督はヘーゲ・リサさん。ノルウェー女子代表史上最多の188試合に出場した名選手です。そして、1995年から1997年まで日興證券ドリームレディースでプレーしていました。1996年、1997年は2年連続でなでしこリーグ(当時・Lリーグ)のアシスト王を獲得しています。

FIFA女子ワールドカップ スウェーデン1995の日本女子代表メンバーで、日興證券ドリームレディースでプレーした森本鶴さんはヘーゲ・リサさんについて、このように話します。

「ヘーゲさんは『今まで一度も怒ったことがない』と言ってました。いつもニコニコです。『サッカーは格闘技だ』と聞いたことがあるので、それでサッカーができるのが不思議でした(笑)。 対照的にリンダさん(当時・ノルウェー女子代表:記事の後半で登場)は闘志むき出し。まさに正反対でおっかなかったですよ。 若い選手はびびっていたと思います。 私は仲良かったですけど。」(2023年8月3日に追記)

栄光への階段を上るきっかけとなった過去のノルウェー女子代表戦

ノルウェー女子代表との対戦は、過去に9回あり6勝3敗と勝ち越しています。思い出深い対戦は、なんといっても2008年の北京オリンピックです。グループステージの最終節で対戦しました。ここまで1分1敗であとがないなでしこジャパン(日本女子代表)は攻守に連携が噛み合い5−1で圧勝。準々決勝進出を決めました。前年のFIFA女子ワールドカップ中国2007はグループステージ敗退。停滞ムードのあった日本の女子サッカーは、このノルウェー女子代表戦で息を吹き返し、北京オリンピックは過去最高の4位でフィニッシュ。この大会は、続くFIFA女子ワールドカップ ドイツ2011での優勝へ足がかりとなりました。間違えなく、ノルウェー女子代表戦の圧勝から世界一への階段を上り始めたのでした。あのアツい一戦を再現できれば、なでしこジャパン(日本女子代表)は再び世界のトップ4への道が開けます。

ノルウェーでプレーした黒﨑優香選手の注目はチェルシーでプレーする2人の選手 

さっそく、一人の選手にお話をお聞きしました。2021年シーズンにノルウェー女子1部リーグのアルナ・ビョルナールでプレーした経験がある黒﨑優香選手です。黒崎選手は2023年7月にフィンランド1部リーグのKP Shttps://kups.fi/kups-ja-yuuka-kurosaki-sopimukseen/)に移籍しました。KP Sは2022年シーズンのチャンピオンで、来シーズンのU E F A女子チャンピオンズリーグを戦います。その切り札として期待されている選手です。なでしこジャパン(日本女子代表)がラウンド16でノルウェー女子代表と対戦することになり、膨らむ期待を教えてくれました。

「個人的にはFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023のスケジュールが決まってからトーナメントの一回戦で日本とノルウェーの試合が見られるのではないかなと思っていたので、今日の勝ちが決まってノルウェーにいる友人にも連絡をしました。」

WE Love 女子サッカーマガジンでは、ノルウェー女子1部リーグでプレーしていた当時に黒崎選手へのインタビュー取材を実施。記事を掲載していました。その中でノルウェーの女子サッカーへの印象を語っていただきました。一部をご紹介します。

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黒崎—ノルウェー語にはブークモールとニーノシュクという2種類の標準語があり、ドイツ語のように喉から出す発音みたいなものみたいなものもあります。日本語にはない音なので難しいです。選手もコーチも英語を喋れます。ただ、ミーティングの最初に英語で喋っていたはずが、途中でノルウェー語を挟むと、その後はいつの間にか全部ノルウェー語でミーティングが進んでしまうことがあります。ですから、そういうときは、ミーティング後に、英語で内容を教えてもらうことになります。

—ノルウェー女子1部リーグのレベルはどうですか?

黒崎—全体的にはオーストリア女子1部リーグよりもレベルが高い感じがします。オーストリア女子1部リーグにもダントツでレベルの高いチームがありますが、ノルウェー女子1部リーグはトップ4くらいまでのレベルが特に高く、面白いサッカーをしています。スウェーデンやデンマークの選手も多くプレーしています。フィジカルの強さに加えて縦に速く技術の高いサッカーをしています。

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黒崎選手は、今もノルウェーでプレーした当時に交流した選手たちとつながりがあるそうです。ラウンド16での対戦を楽しみにしています。

「昨シーズン、ノルウェーにいたときの対戦相手の選手たちもノルウェー女子代表としても出場しています。キャプテンのマーレン・ミェルデ選手やグロ・ライテン選手(共にチェルシー所属)はチェルシーと練習試合をさせてもらったときにとても上手でした。どのような結果になるのかが楽しみです。全力で日本を応援します!」

4つのポイントでノルウェーの女子サッカーを知る

ノルウェー女子代表はA組を2位で突破。数字の上では得点力が爆発しているように見えますが、3試合を別々に見ると実態は異なります。初戦のニュージーランド女子代表戦を0−1で落とし、第2戦のスイス女子代表戦をスコアレスドロー。第3戦で初得点した後は得点を重ねフィリピン女子代表に6−0で勝利しての総得点6となっています。

しかし、侮るわけにはいきません。ノルウェー女子代表は、スウェーデン女子代表と並んで、長くコンスタントに好成績を残しているチームです。女子サッカー大国の一つといっても良いでしょう。

そこで、ノルウェーの女子サッカーを知るのに役立つ4つのポイントをご紹介します。日本の女子サッカーの歴史にも深く関わったノルウェーは、かつての世界最強国で、とても興味深い国の一つです。

1 数少ない優勝経験国
2 バロンドール獲得選手がいる
3 プレーヤーがとても多い
4 日本の女子サッカー発展に貢献している

1 数少ない優勝経験国

FIFA女子ワールドカップで過去に優勝したチームは4つしかありません。アメリカ女子代表(4回)、ドイツ女子代表(2回)、そして、そしてなでしこジャパン(日本女子代表)とノルウェー女子代表が1回ずつです。つまり、FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023はラウンド16で、早くも優勝経験国同士の対戦が実現することになります。

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