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なでしこジャパン 柔軟な対応力に進歩 FIFA女子ワールドカップ初戦を意識し序盤は苦戦もポルトガル女子代表に鮮やかな逆転勝ち

なでしこジャパン(日本女子代表)はポルトガル女子代表と対戦し2−1で逆転勝利しました。池田太監督は「少しイージーミスが多かった」と試合後に印象を話すものの、90分間を通して収穫の多い試合だったことをうかがわせました。

池田監督は、FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023のグループステージ初戦の大切さを選手と共有して、この試合に臨みました。それが、序盤に過剰に慎重なプレーを引き起こしたのかもしれません。しかし、勝利することができました。池田監督は、次の言葉で試合全体を語りました。

「90分間トータルで、試合をひっくり返し、勝ち点で言うと3ポイントをとれた。そこを評価したいと思っています。」

ポルトガル女子代表はF I F Aランキング22位

今回の欧州遠征は2試合。緒戦はFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023初出場を大陸間プレーオフで決めたポルトガル女子代表との対戦です。ポルトガル北西部のブラガ県にあるギマラインスに遠征するアウェイゲームとなりました。

ギマラインスはポルトガルの歴史を見守ってきた街です。ギマラインス城は丘の上に建つロマネスク様式の城で、ポルトガル初代国王のアフォンソ・エンリケス(アフォンソ世)が生まれた場所とされています。そのため、ギマラインスはポルトガル王国の発祥地と呼ばれています。中世の歴史的建造物が多く残されており、ギマラインス歴史地区は2001年にユネスコ世界遺産(文化遺産)に登録されました。

試合会場となったエスタディオ D. アフォンソ・エンリケス(アフォンソ・エンリケス・スタジアム)は、ギマラインス城から、すぐ下に見下ろせる場所にあります。

聖グアルター教会前の街並み

守備の圧力に屈し先に失点する試合展開

2023シービリーブスカップに招集されなかった猶本光選手(浦和)、田中美南選手(I神戸)を含むイレブンがスタメンで起用されました。いつもは中央で守備のかじ取りをする熊谷紗希選手(バイエルン)はベンチ。本番前の経験の積み上げを狙う選手起用です。新ユニフォームは緑のピッチに映え、赤いポルトガル女子代表のユニフォームの赤に対して視認性が良く目に映ります。

アグレッシブで勢いのあるポルトガル女子代表は大きな身体を活かした強いプレッシャーで、なでしこジャパン(日本女子代表)からボールを奪いペースを握ります。なかなかボールを保持できなかったなでしこジャパン(日本女子代表)は9分に右サイドから藤野あおば選手(東京NB)が、ほとんど助走なく速いクロス。これを、中央に走り込んできた左ウイングの杉田妃和選手(ポートランド)が強力なヘディングシュート。幅の動きがある攻撃で主導権を奪い返します。藤野選手は24分に角度のないところから意表を突いたシュートも放ちます。

失点は25分。ロングボールに対応した南萌華選手(ローマ)が前に出てヘディングの競り合い。こぼれ球を奪われ中盤から、南選手の飛び出したスペースにスルーパスを流し込んだポルトガル女子代表が初シュート。先制されてしまいます。直後も、同じように左サイドの裏を使われ再び山下杏也加選手(I神戸)が一対一の状況。ピンチの連続となります。サイドにディフェンスラインのギャップが生まれかけた際のセンターバックとボランチのアクションが後手を踏んだ印象です。

この失点ついて池田監督は「ラインを止めてしまった。」と会見で問題点を説明。2列目から入ってくるスピードのある選手への対応に課題を残しました。

狙い通りの攻撃で同点に

なでしこジャパン(日本女子代表)は35分に同点に追いつきます。杉田選手がタッチライン際からスルーパス。田中美南選手(I神戸)がディフェンスラインの裏に飛び出します。ゴールキーパーをおびき出して中央に戻し、そこに走り込んだ長谷川唯選手(マンチェスター・シティ)がゴールマウスに蹴り込みました。鮮やかな速攻です。

同点になるとポルトガル女子代表の中盤のプレッシャーが緩み、なでしこジャパン(日本女子代表)が素早くパスをつなげるようになります。43分には左サイドの杉田選手が回転系のフェイントを繰り返しハーフスペースに走り込んだ猶本光選手(浦和)に意外性のあるパス。シュートはゴールキーパーに阻まれますが、クリエイティビティ溢れるプレーを披露します。前半は1-1の同点で折り返します。

新戦力の守屋都弥選手(I神戸)が代表デビュー

ハーフタイムには右のウイングバックでプレーした清水梨沙選手(ウエストハム)を3バックの右に下げ、守屋選手をウイングバックに投入。今回の欧州遠征ではゲームコントロールを含め、試合の状況に合わせた対応力の向上もテーマの一つ。どうしても得点を奪いたい局面での布陣のテストとなります。

その起用が形になります。53分に清水選手からのパスを受けた田中選手がゴールキーパーと一対一になるも、これを阻まれますが、直後に、清水選手が長谷川選手に素早く縦パスを付け、長谷川選手からのロングボールを再び抜け出した田中選手が、今度は一対一を左のアウトサイドで浮かせる技ありのシュートでゴールに流し込みました。後半の早い時間帯に逆転します。

ポルトガル女子代表の布陣変更に対応した選手交代も実施

59分に田中選手と猶本選手がベンチに下がり、植木理子選手(東京NB)と岩渕真奈選手(トッテナム)を投入。選手選考で当落線上にいると考えられる猶本選手は、岩渕選手、宮澤ひなた選手(マイ仙台)、小林里歌子選手(東京NB)とポジションを争います。この試合では、最も得意とする中央ではなくサイドでのプレーが多く、普段のWEリーグで発揮する持ち味を存分に披露するまでには至りませんでした。次のデンマーク女子代表戦は最終メンバー発表前の最後の試合です。巻き返しに期待したいところです。

岩渕選手は気が利いたスペースでボールにタッチし、試合のリズムを創ります。ただ、右脚にテーピングが大きく施されておりコンディションが気になるところ。

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