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なでしこジャパン再び世界一へ 植木理子選手(東京NB)が新ユニフォームに袖を通す「誇らしい」気分

アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会のフォトセッションの中央に立ち、主役となったのは植木理子選手(東京NB)でした。今、植木選手はなでしこジャパン(日本女子代表)のセンターフォワードとしてチームの軸にふさわしい活躍をしています。2022−23 YogiboWEリーグでは得点ランキング3位につけています。そして、ピッチ外ではしっかりとした話し方が印象的な選手です。いつも、自分を表現する言葉のセレクトが力強いと感じます。

アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会 国立競技場のピッチでの撮影 影山優佳さん、小林里歌子選手(東京NB)、植木理子選手(東京NB)、藤野あおば選手(東京NB)

「またFIFA女子ワールドカップが目の前にある」再び巡ってきたチャンスと責任

アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会を終えた直後に、植木選手にお話をお聞きすることができました。新しいアウェイユニフォームは美しい日の出の景観から着想を得たデザインとなっています。朝焼けの美しいグラデージョンに、FIFA女子ワールドカップ優勝を示す星が輝いています。植木選手によく似合うデザインです。

「新たな気持ちというか、少しソワソワする感じがありますね。なでしこジャパン(日本女子代表)のユニフォームに初めて袖を通したときもそうでした。」

どうすれば、このような礼儀正しい話し方をできるようになるのだろう……と思うくらい、インタビュアーの目を見て話します。アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会には多くの報道陣が集まりました。撮影するカメラの数が多く、全員が同時に撮影できないほどでした。こうした盛り上がりを、植木選手は朝焼けの色に染まったステージの上から感じていたようです。

「『いよいよだな』と感じます。サッカー人生の中で、このような機会はたくさんあるわけではありません。だから、大事な時間だと思いました。」

さりげない一言だったのかもしれません。しかし、これを聞いただけで、筆者の頭の中には、これまで植木選手が歩んできた過程が走馬灯のように蘇りました。FIFA女子ワールドカップ フランス2019のメンバーに選出された4年前、そして、苦しいこともあった、あの頃の日々です。

「あの頃は、今よりもいっぱいいっぱいでした。余裕がありませんでした。アンダー年代の代表チームでも同じ柄のユニフォームを着ていましたが、やはり(なでしこジャパンは)重みが違いましたね。あれから4年が経ち、FIFA女子ワールドカップが、また目の前にあります。こうして、この新しいユニフォームに袖を通す機会をいただけたのは嬉しいです。初めて(選出されて)袖を通したときと同じくらい誇らしい気分です。」

アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会 藤野あおば選手の話に笑みが溢れる植木理子選手

オーストラリアに行って本物のコアラに会いたい

FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023は、7月20日(木)から8月20日(日)までの1ヶ月間、冬の南半球の2カ国で熱戦が繰り広げられます。今回は史上最多の32カ国が出場。ゲーム数が男子と同数の64になりました。なでしこジャパン(日本女子代表)は7月22日(土)にワイカトスタジアム(ハミルトン)でザンビア女子代表と対戦するのを皮切りに、ニュージランドで準決勝までを戦います。

植木選手は南半球の2カ国に、どのような思い出をお持ちでしょうか。聞いてみました。

「小学生のときに従兄弟のお姉ちゃんがオーストラリアに行って買ってきてくれたコアラのストラップをもらいました。それを大事にしていたので『オーストラリアといえばコアラ』の印象です。オーストラリアとニュージーランドは海に囲まれていて自然景観が美しいイメージがあります。」

筆者が「コアラに会うためには決勝戦(会場はシドニー)に進出しなければなりませんね?」と聞いてみると間髪入れずに回答がありました。

「そうですね。(決勝戦に進出して)オーストラリアに行って本物のコアラに会いたいです。」

アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会はW B C決勝戦の翌朝に開催されました。世界一になった野球と同じように、なでしこジャパン(日本女子代表)に再び世界一に輝いてほしいという報道陣からの大きな期待と熱気が会場に充満しました。

「このようなイベントに参加すると『いよいよワールドカップだ』と感じますが、一番大事なのは目の前の練習と目の前の試合を一所懸命にやることです。いつもの生活を変えず、いつも通りの毎日をやり続けたいと思います。」

その言葉は、これから何かの大舞台を迎える多くの人へのメッセージであり、同時に、改めて、自分に言い聞かせているようにも感じました。

「4年前の自分は、FIFA女子ワールドカップが近づくと、気持ちに余裕を持てませんでした。直前に怪我で離脱してしまいました。」

プロ化によりチームでフィジカルレーニングをやる機会が増えた

ここからは、過去のインタビュー取材でお聞きしたお話も交えて、少しばかり植木選手の歩みについて振り返ってみようと思います。

FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023では、強靭な肉体を誇る世界の一流選手たちと渡り合う必要があります。今シーズンの植木選手は、以前からの、ディフェンスラインの裏に抜け出す速さや狭いシュートコースを狙う上手さに加え、対人の強さも目立っています。以前の取材で、植木選手は、このようなことを話していました。

「フィジカルに対する意識も年々上がってきています。チームでフィジカルレーニングをやる機会が増えました。日本人はフィジカルの面でやはり弱いというか、元々持っている力だけで対峙しても勝てないことが多いので、自分に合ったトレーニングは大事だと思います。上半身のトレーニングをやることが多いです。上半身の強さは試合で成果が出ていると思います。」

アディダス『サッカー日本女子代表 アウェイユニフォーム』発表会 植木理子選手のユニフォーム姿を見て感想を話す小林里歌子選手

こうした選手たちの努力の結果、女子サッカーを見る側の人の心持ちまでもが変わったかもしれません。最近のWEリーグのスタンドからは、相手をなぎ倒すようにしてドリブルで前進する姿にも大きな歓声が湧き上がります。以前と比べると、力強いサッカーへの支持が集まっているように感じます。そして、これまで、軽快なテンポのパスサッカーを強みとして日本の女子サッカーをリードしてきた日テレ・東京ヴェルディベレーザが、ここまで強く激しいプレーを混じえ、新たな日本の女子サッカーのスタンダードを育てつつあることに驚きます。

壁を突き抜けた2018年〜代表抜擢の2019年……「自分はここに立ちたい」という気持ちが強まる

植木選手がサッカーファンに知られるようになりはじめたのは2016年シーズン。日テレ・メニーナ所属の高校生ながら日テレ・ベレーザの選手としてなでしこリーグカップに出場し大活躍したときあたりからです。その年の筆者の観戦メモを見ると「シュートへの駆け引きにセンスを見せる1999年生まれ」と書いてありました。2017年シーズンにはなでしこリーグ1部でデビュー。こちらも5得点を記録。当時はセンターフォワードとして飛ぶ鳥を落とす勢いでした。

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