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「WE ARE REDSに鳥肌が立った」駒場で掴んだ女王の座 浦和レッズが女子もアジアの頂点に(無料記事) 

たくさんの人の思いを背負い、感謝を胸に戦った赤き日韓両チーム 

2024年5月10日17時15分。『AFC Women’s Club Championship 2023 – Invitational Tournament (AWCCIT)』決勝の応援は、幾分、ゆっくり目の浦和レッズコールから本格的に始まりました。焦ることなく落ち着いて、平常心でキックオフを迎えたいというサポーターの意思が感じられる太鼓のテンポでした。 

サポーターに優勝の報告  Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410 TOP写真も

決意を新たにした「WE ARE REDS」の大コール 

選手が入場し自陣中央で円陣が組まれるのに合わせ、それまで座っていたメインスタンドのファン・サポーターが腰を上げました。メインスタンド、バックスタンド、ゴール裏スタンドの三方から「WE ARE REDS」のコールが響きました。これが選手の闘志を掻き立てました。 

石川璃音選手に抱き上げられる伊藤美紀選手  Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

「ピッチに立ったときに、サポーターの声援がいつもの5倍くらいに聞こえました。鳥肌が立つような感じでした。」(遠藤優選手) 

「キックオフの前にスタジアム全体がコールしてくれたときに鳥肌が立っていました。走っているときもスタンドを見て、たくさんの方が応援しているということを感じながらプレーできました。ここに来てくれた皆さんが一緒に戦ってくれた結果の優勝だと思います。」(伊藤美紀選手) 

「いつ聞いても鳥肌が立ちます。恥ずかしいプレーはできないです。」(清家貴子選手) 

この試合をできたことを誇りに 

たくさんの人の思いを背負い、感謝を胸に戦う試合でした。楠瀬直木監督は試合後の監督会見をこんな話から切り出しました。 

「一度は中止となった決勝をできることになり、WEリーグ、日本サッカー協会をはじめ、さまざまな方、そして仁川現代製鉄レッドエンジェルスに感謝します。また、この試合を実現してくださった浦和レッズやさいたま市の皆さん……そして、今日の浦和駒場スタジアムのピッチは非常にやりやすい、きれいな芝でした。ご尽力に感謝しています。そういう方の力がいなければ、歴史的な大会は実現しませんでした。感謝すると共に、この試合をできたことを誇りに思います。」 

双方に隙のない一戦だったが、試合前から主導権を握っていたのは三菱重工浦和レッズレディース 

先制点は13分に仁川現代製鉄レッドエンジェルズ。三菱重工浦和レッズレディースは22分に清家選手のボレーシュートで追いつきました。清家選手は「あのスペースは狙っていました」と振り返ります。浮き玉のラストパスをつないだ伊藤選手は清家選手の動きを見ていました。 

「グラウンダーのパスは警戒されていると感じていました。(清家)貴子がちょっと開きながら動いたのが見えたので『ここしかない』と思いました。精度の高いボールを蹴ることができて良かったです。」 

勝負強さを感じる島田芽依選手  Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

選手交代の遅れが勝敗の分かれ目に 

キム・ウンスク監督は自らの采配を悔やみました。三菱重工浦和レッズレディースの攻撃力を警戒し3バックで守備を固める戦術を採用しました。しかし、三菱重工浦和レッズレディースの、右サイドの猛攻に耐えきれず選手交代……の決断がほんの少し遅く、交代の準備をしている間に、三菱重工浦和レッズレディースは塩越柚歩の蹴ったコーナーキックから島田芽依選手がヘディングシュートで得点したのです。 

「一緒に跳ぶと、高さでは絶対に勝てないと思ったので、タイミングをずらすことを意識しました。」 

島田選手が、そう話す、技ありの逆転ゴール。インパクトの瞬間にメインスタンドが総立ちになるほど素晴らしい軌道で、ボールはゴールマウスに飛び込んで行きました。もし、選手交代がコーナーキックの前だったら、試合展開は全く違ったものになっていたかもしれません。 2−1で三菱重工浦和レッズレディースが勝利しました。

攻守にわたり大活躍だった柴田華絵選手  Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

来シーズンから始まる本大会での対戦を願う 

仁川現代製鉄レッドエンジェルズのキム・ウンスク監督は試合後の監督会見で話しました。 

「こういう結果になったことは大変残念に思います。ただ、三菱重工浦和レッズレディースは勝利にふさわしいパフォーマンスでした。試合の中で学ぶことがすごく多かったです。自分たちのチームが100%のコンディションで臨めなかったことがもう一つの残念なことです。願いが叶うなら、もう一度、100%のコンディションでやりたいです。」 

逆に楠瀬監督は仁川現代製鉄レッドエンジェルズについて触れました。 

「仁川はリーグ戦の途中で怪我人が多くベストメンバーを組めなかったのだと思います。ベストメンバーを組めば、もっとレベルの高い戦いができたと思います。すごく伸びしろのある大会だと思います。」 

双方の監督が対戦相手を称え、会見の後に、両監督に報道陣から大きな拍手が起こりました。 

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次はベストメンバーでの対決を見たい 

仁川現代製鉄レッドエンジェルズはエースのイネス選手(コートジボワール)とエンゲシャ選手(ケニア)が不在。期待の田中陽子選手も怪我で欠場。外国籍選手の出場がありませんでした。三菱重工浦和レッズレディースは安藤梢選手、猶本光選手が長期欠場中です。 

三菱重工浦和レッズレディースはWEリーグの連覇目前。仁川現代製鉄レッドエンジェルズはWKリーグの12連覇に向け好スタートを切っています。もし可能ならば、両チームが来シーズンから始まるAFC女子チャンピオンジズリーグにベストメンバーで挑み、この試合の続きを披露してほしいと思う好ゲームでした。レッズとレッドエンジェルズの一戦が、アジアの名物カードとなることを期待します。 

(2024年5月10日 石井和裕)  

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