バルサの街で「好き」を大切に暮らすと自然にチャンスが広がった 小堺めぐみさん 女子サッカーと働く人その2
バルセロナで活動する日本人女性のサッカー観と仕事観、そして、スペイン女子サッカーの変化
小堺めぐみさんは、2011年にスペインに渡りバルセロナで暮らしています。選手としては大学卒業後に C.E.エウロパ(スペイン女子サッカー2部リーグ )からスタートし4度の昇格を経験、指導者としてはUEFAプロライセンスレベル同等の指導者資格・スペインサッカー指導者ライセンスレベル3を取得。現在は Women’s Soccer School Barcelona のU-16女子チームを指導、FCバルセロナではアカデミーキャンプの指導等を行っています。また、スペイン女子サッカーリーグ1部・RCDエスパニョールの分析官を務めた経験もあります。
そして、ピッチ外のお仕事も多数。小堺さんは、なぜ、サッカーに関する仕事を始め、なぜ、仕事の幅を広げることができたのでしょうか。
「MEGUSTYLE(メグスタイル)」とは何か?
小堺めぐみさんは「好き」を大切にするスタイルで女子サッカーに関わる仕事を続けてきました。スペイン語で「好き」を意味する言葉は「ME GUSTA」です。今回は、小堺めぐみさんの「MEGUSTYLE(メグスタイル)」についてお伝えします。
そして、バルセロナで生活しているから見えてくる日本の女子サッカー、さらには、スペイン女子サッカー躍進の理由もお聞きしています。
サッカーの仕事をしたくてバルセロナに渡る
小堺—サッカーの仕事をしたくてバルセロナに渡りました。10歳頃からサッカーが大好きでボールを蹴っていました。高校生のとき、サッカーの仕事をしたいと思い始め、進む道を模索していました。サッカーに役立つかもしれないということもあって、高校、大学で、第二外国語はスペイン語を選択しました。大学3年生の春に、バルセロナで過ごす1ヶ月の語学研修を経験しました。行ってみるとサッカーの環境が整った街だと感じました。だから、特にバルセロナに憧れて勉強してきたというわけではなく、自然な流れでバルセロナに辿り着いた感じです。
—小堺さんのサイトのタイトルは「MEGUSTYLE」です( https://megu-style.com )。どのようなスタイルで、お仕事をされてきたのか教えてください。
小堺— 仕事の種類はいろいろあって、それがトータルで「MEGUSTYLE」だと思っています。「指導者」「通訳・翻訳」「選手の滞在サポート」「サッカー留学支援」「トライアウト参加支援」「企業、団体が行うスペイン研修の現地コーディネート・通訳」……日本の選手がスペインへ移籍する際のお手伝いをすることもあります。
逆に、スペイン人選手が日本に行くときのお手伝いをすることもあります。これまで、スペインには13年間住んでいるのですが、ここで得られた語学、経験、人とのつながりから、仕事が自然に生まれてきました。
バルセロナでの人のつながりが仕事を生み出す
—「自然と」とのことですが、どのように「自然と」推移していったのでしょうか?
小堺— バルセロナにいる日本人は、自然につながっていきます。特に、女子サッカーの世界は狭いので、例えば、試合会場で会った日本人が「友達の友達だった」ということもあります。コロナ禍までは年末に日本人が集まってボールを蹴るようなこともありました。バルセロナで長く生活している日本人は、それほど多くありません。ある程度の期間で日本に戻る人が多いです。すると、日本に帰国した人から「スペインに行きたい人がいるのでサポートしてほしい」と紹介されることもあります。
いろいろな人に助けていただきながら、こちらで生きていくためにやってきたことが、次第に、私以外の人にも役に立つことがわかってきました。「仕事にするためにこれを学ぼう」と身に付けてきたわけではありません。でも、たくさんの経験がミックスされて、誰かに役立つカタチになってきたのだと思います。
—どういったところから、具体的に仕事に至るような人のつながりは生まれていきますか?
小堺— 私は2011年、なでしこジャパン(日本女子代表)が世界一になる前日にバルセロナにやって来ました。その翌年にINAC神戸レオネッサがバルセロナへ遠征しました。現地のコーディネーターが知り合いだったので、私は滞在中のメンバーをサポートする仕事をすることになりました。紅白戦をするには人数が足りなかったので、ピッチにも入りました。目の前で、澤さんに風みたいな素早いパスカットをされました(笑)。
なでしこジャパン(日本女子代表)はポルトガルで開催されたアルガルベカップ2012にも参加したので、バルセロナにいた私は、ここでも呼ばれてお仕事をしました。当時の日本は女子サッカーの注目度が高かったので、メディア関連のお仕事もさせていただきました。
バルサアカデミーワールドカップ2024で指導し学んだスペイン人と日本人の得意分野
—バルサアカデミーワールドカップ2024のお仕事をされたそうですね。どのような大会なのでしょうか?
小堺— 世界中のバルサアカデミーがバルセロナに集まる大会です。約180チーム、2千人が参加しました。私の受け持ったカテゴリーでは、日本から2つの女子チームが参加しました。そのうちの1チームに、私は指導者として関わらせていただきました。
世界中の子どもたちがバルセロナに集まり試合と交流をする有意義な大会
—この大会の良いところを教えてください。
小堺— 他の国の選手たちと戦えることです。でも、どのチームも胸に同じバルサのエンブレムをつけています。ライバルであり仲間である関係を、私はすごく好きです。
大会の最後に3位決定戦に臨んだ日本のチームのメンバーは、対戦相手となったスイスのチームのメンバーと試合前から仲良くなっていました。それまで、予選リーグから勝ち上がり、勝ったり負けたり励ましあったりしてきた同じバルサの仲間です。お互いに讃えあっていました。
私が良いと思ってきたことを言葉で伝えなくても、選手たちが体感してくれていたのが、とても嬉しかったです。
—きっと小堺さんが、これまでの経験を生かして、選手たちに良い環境を提供できたから、選手たちは大会を楽しめたのではないでしょうか?
小堺— 保護者から「バルサアカデミーワールドカップで学んだことを生かして頑張っていきたいと言っていました」という選手の声を教えてもらいました。選手にとって、この経験は大きな出来事だっただろうし、これからのサッカー人生のパワーの源になってくれたらすごく嬉しいと感じました。
—サッカーをすることによって広がる可能性、ピッチ内外の楽しさも感じてもらえていると良いですね。
小堺— 人のつながり、自分の生き方……バルセロナに住む方法もあるという発見、スキルや選択肢……それらを感じてもらえたら嬉しいですね。
スペインと日本、それぞれの特徴を融合することで生まれる大きな可能性
—バルサアカデミーワールドカップでの指導経験で、日本の女子サッカー選手にとってヒントになりそうなところはありましたか?
小堺— 日本のチームとスペインのチームの対戦がありました。そこで感じたのは「日本人はボールと自分の関係がすごく上手」「スペイン人はポジションのチェンジがすごく上手」です。
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