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何が日本の女子サッカーを変えたのか? なでしこジャパンの復権をJリーグ指導経験者が語る 外国籍選手の衝撃と国際経験 後篇

前篇では、日本の女子サッカーのプロ化により2022−23 YogiboWEリーグのプレスインテンシティの数値が女子ブンデスリーガ(ドイツ)を大きく上回までの流れを振り返りました。この後篇では、外国籍選手との対戦、国際経験といった視点から、なでしこジャパンの復権を謎解きます。

何が日本の女子サッカーを変えたのか? なでしこジャパンの復権をJリーグ指導経験者が語る Jリーグ、なでしこリーグ、WEリーグ、外国籍選手……日本サッカーの総力戦だった女子ワールドカップの進撃 前篇

外国籍選手との戦い、海外でのプレーが日本の女子サッカーを変えた

「まず、選手たちの表情がすごく良い。やらされている感が見えないですね。きっと、戦術がしっかりしているのでしょう。長谷川(唯)さんは、マンチェスター・シティでプレーするようになってから、素晴らしい二列目からの飛び出しが身についている。」

2020年に、当時はなでしこリーグ1部で戦っていたノジマステラ神奈川相模原に就任し2021-22 Yogibo WEリーグ終了まで指揮を執った北野誠さんは、FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023を戦うなでしこジャパン(日本女子代表)の戦いぶりに感心していました。

日本国内での限られた経験の蓄積だけではなく、外の世界と交わることで、日本の女子サッカーは急速に変化してきました。試合の強度は高まり、海外でプレーする日本人選手も増えました。北野さんには、そのきっかけとなったかもしれない一つの心当たりがあります。

「ノジマステラ神奈川相模原にロペスという選手を入れたじゃないですか。あれが日本の女子サッカーを変えるきっかけになったと思います。ああいう大きな選手に対して南(萌華、当時・浦和、現・A Sローマ)が立ち向かっていました。これまで、あれほど必死な形相のセンターバックのプレーを見たことはなかったですよ。」 

サンデイ・ロペス選手はナイジェリア女子代表として30試合出場の経験を持つストライカー。身長182センチと日本でプレーする選手の中では一際大きく、フィールドに登場するだけでスタンドがどよめく存在感がありました。ノジマステラ神奈川相模原では、残念ながら14試合出場2得点と本領を発揮するまでには至りませんでしたが、日本人とは全く異質の特徴を持つ外国籍選手が日本の女子サッカーに世界を意識させたのです。

日本の女子サッカー界が大切に育ててきた「優れた土壌」

昨シーズンまで日テレ・東京ヴェルディベレーザで監督を兼任していた竹本一彦さんは、今シーズンから女子強化部長に専念することになりました。1986年から1996年まで読売西友ベレーザ(現・東京NB)の監督を務め、長く日本の女子サッカーの歴史を拓いてきた竹本さんですが、その後、ガンバ大阪の監督、柏レイソルの監督代行、強化本部本部長等も務めています。FIFA女子ワールドカップでのなでしこジャパン(日本女子代表)の素晴らしい戦いぶりの要因をどのように考えているのでしょうか。聞いてみました。

「いろいろな観点があると思う」そう切り出した竹本さんは、指導者のチャレンジに加え、日本の女子サッカー界が大切に育ててきた「優れた土壌」が成長につながると考えています。

「北野さん(N相模原を指揮)や大嶽直人さん(伊賀FCくノ一三重を指揮)のようなJリーグを経験した指導者にとって、女子サッカーの監督には面白さがあると思います。更地に水をやって草木を育てるように育つ土壌があるからです。多くの女子サッカー選手は素直に指導を吸収します。

経験があるだけではなく勉強している指導者が女子サッカーでチャレンジしてくれています。これからも、いろいろな指導者が女子サッカー界に入ってきます。監督はWEリーグを創っていく源です。外からの叡智を取り込むWEリーグになってきていると思います。」

マンチェスター・シティでプレーする長谷川唯選手とASローマでプレーする熊谷紗希選手

今大会のなでしこジャパン(日本女子代表)の平均年齢は24.8歳。出場32チームの中で4番目に若い。2011年の世界一経験者は熊谷紗希選手(A Sローマ)一人となりました。では国際経験に乏しいかというと、決してそういうことはないというのが竹本さんの視点です。竹本さんは「(長谷川)唯が中心選手になれる年齢になったことが大きい」と考えています。

「(長谷川)唯はU-17(F I F A U-17女子ワールドカップコスタリカ2014)で優勝しています。U-20(F I F A U-20女子ワールドカップパプアニューギニア2016)でも、アメリカに勝ってトップ3に入っている。その世代が大人のサッカーをできる年齢になった。さらには海外クラブでのプレー経験もある。唯が独り立ちできことが一番大きいです。長野風花もそうです。」

リバプールでプレーする長野風花選手

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