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なでしこジャパン スウェーデン女子代表と準々決勝 「自分も想像できないような自分になりたい」浜野まいか選手と林穂之香選手に注目 大井美波選手(P18I Kフットボール)に聞く女子サッカー大国

なでしこジャパン(日本女子代表)は2大会ぶりのラウンド8(準々決勝)進出を決めました。次の対戦相手はスウェーデン女子代表です。大会前にお聞きした浜野まいか選手(ハンマルビーI F)、ラウンド16後にお聞きした大井美波選手(P18I Kフットボール)の言葉から、見どころと攻略法を探ります。

簡単に放り込まずパスをつなぐプレーが特徴のスウェーデン

スウェーデンは女子サッカー大国の一つです。スウェーデン女子代表の過去の戦績は準優勝1回、3位が3回。オリンピックでは、直近の2大会連続で準優勝しています。クラブチームにも強豪が存在し、ウメオI KU E F A女子チャンピオンズリーグで優勝2回、準優勝3回。ユールゴーデンI Fダムとティーレソーも準優勝の経験があります。

現在の代表チームはF I F Aランキング3位。東京2020大会では決勝戦でP K戦の末に敗れましたが準優勝しています。なでしこジャパン(日本女子代表)との対戦で記憶に新しいのは2021年7月30日の東京2020大会準々決勝です。なでしこジャパン(日本女子代表)のプレーには多くのミスが生まれ1−3で敗れました。スウェーデン女子代表は、これまで対戦したチームとは違い、高い位置から守備のプレッシャーをかけてきます。そのため、対戦相手の持ち味を潰しミスを誘発します。攻撃面では、どの選手も足元のテクニックに優れ、素早くパスを回してくるため、守備者はその対応に苦労します。簡単に高い山なりのボールを放り込むことはあまりありません。クロスは最後の仕上げです。

東京2020大会ではスティナ・ブラックステニウス選手に奪われた2点目が大きく響きました。今大会も細心の注意を払わなければならない危険な選手です。

アーセナル・ウィメンF C所属の2人の選手に要注意

攻撃の柱となっているスティナ・ブラックステニウス選手はアーセナル・ウィメンF C所属。ビッグマッチに強く東京2020大会決勝戦、リオ・オリンピック決勝戦でも得点しています。前線で楔(クサビ)のパスを受けるテクニックに優れているため、ここを経由されると、スウェーデン女子代表は2列目、3列目の選手が容易に日本陣内に攻め入ってきます。今大会はここまで1得点ですが、数字以上の存在感を見せています。

そして、もう一人のアーセナル・ウィメンF C所属選手がアマンダ・イレステット選手。ディフェンダーながら長身を生かしてセットプレーから3得点しています。グループステージのイタリア女子代表戦は、ニアサイドに構えるイレステット選手をターゲットにしたコーナーキックを繰り返し3つの得点を奪い(アマンダ・イレステット選手が2点、フリドリーナ・ロルフォ選手が1点)5−0で圧勝しています。上背のないなでしこジャパン(日本女子代表)にとって、正確なキックと脅威の高さを擁するスウェーデン女子代表のコーナーキックは試練となりそうです。

スウェーデンでのプレー経験を生かせるか 浜野まいか選手(左・ハンマルビーI F)と林穂之香選手(右・ウェストハム・ユナイテッド) Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410 ※M S&A Dカップ2023 トップ写真も

イタリア女子代表戦のみならず、スウェーデン女子代表は圧倒的な強さを見せつけてきました。そして、ラウンド16では三連覇を狙うアメリカ女子代表を激戦の末に無失点で破りました。ただ、付け入る隙はあります。問題となるのはコンディションでしょう。ラウンド16は延長戦にもつれ込み120分間+P K戦を戦っています。そして、試合間隔がなでしこジャパン(日本女子代表)よりも1日短い上にオーストラリアからニュージランドへの移動のハンディもあります。 

なでしこジャパン(日本女子代表)がラウンド16で対戦したノルウェー女子代表は、試合の終盤で運動量が明らかに落ちていました。スウェーデン女子代表に対しても、なでしこジャパン(日本女子代表)が得意のパスワークを駆使して疲弊させることができれば勝機は広がります。

東京2020で銀メダルを獲得したメンバーが多い

スウェーデンでプレーしている日本人選手は、この一戦をどのように予想しているでしょうか。P18I Kフットボールに所属する大井美波選手にお聞きしました。

「スウェーデンでは女子サッカーの人気が高いと感じます。結果を残しているからという理由だけではなく、女子サッカーの競技人口が日本とは比べ物にならないくらい多いので、そういう面も関係していると思います。対戦が決まったとき、チームメイト以外にも、スポンサーの方や、チームメイトの両親、友達などからも多くの連絡をもらいました。スウェーデン女子代表選手は身長が高く、フィジカルとスピードに長けています。特にグループステージからセットプレーでたくさんの得点をしているので要注意だと思います。また、ディフェンスしにくいポジション(楔)でボールを受ける選手も多く、東京2020で銀メダルを獲得したメンバーからあまり変わっていないため、チーム内での意思疎通や共通理解もしっかりしていると思います。

それに対してなでしこジャパン(日本女子代表)は、新しい監督、新しいメンバーになり新体制。新しい戦術、新しい長所が旋風を巻き起こしている理由でもあると思います。カウンターからの得点も今大会では目立ち、徹底した組織的な守備から攻撃への切り替えの速さや決定力で得点してきました。大会以前とは全く違う強さや上手さをスウェーデン相手にも思う存分に出し切ってほしいと思います。」

大井選手が注目するのは林穂之香選手(ウェストハム・ユナイテッド)です。

「昨年の途中までスウェーデンのダームアルスヴェンスカン(女子部リーグ)でプレーしていたので、何度か試合を見に行きました。林選手は『身を粉にしてチームを助けるボランチの選手』だと思います。攻守ともにチームのために走り、賢く正確なプレーでチームを安定させてくれると思います。」

林穂之香選手(ウェストハム・ユナイテッド) Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

大井美波選手はラウンド8をとても楽しみにしています。

「スウェーデン女子代表が勝った瞬間にチームメイトから『日本と試合をできることが嬉しい』と言われました。同時に、もう私たちの戦いは始まっていました。『日本とスウェーデンどっち応援するの?』と聞かれ『もちろん日本だよ。100%日本が勝つ』と答えたら『じゃあチーム内で2(私ともう人の日本人プレーヤー)対20(スウェーデン人プレーヤー)の試合だね。試合を見るときはお互い離れて見るよ』と言われました。また『日本はこれまで本当に良い試合をしているから、準々決勝で当たるのはお互いにとってもったいない』とも言われましたよ。」

ついに初登場か、若きスターの浜野まいか選手

宝田沙織選手、籾木結花選手、山口麻美選手、品田彩来選手、野口亜弥選手……多くの日本人がスウェーデンでプレーしてきました。今大会のなでしこジャパン(日本女子代表)にも、スウェーデンでプレーする選手がいます。浜野まいか選手です。ここからは、大会前に取材した浜野選手のリモートインタビューから、その心意気を探ります。

浜野選手はチェルシーからハンマルビーI Fへ期限付き移籍中。ハンマルビーI Fは首都・ストックホルムをホームタウンとしスウェーデンのダームアルスヴェンスカン(女子1部リーグ)で上位争いをしているチームです。浜野選手の加わった2023年シーズンは28年ぶりにスヴェンスカ・クッペン・ダメル(カップ戦)を優勝しました。

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