FIFA女子ワールドカップは5万人大観衆の中で選手がサポーターと一緒に自撮りしてくれる祝福劇場空間
ブリスベン・スタジアムで開催されたグループステージ・フランス女子代表×ブラジル女子代表には4万9千378人の大観衆が集まりました。試合終了直前の90分+8分に決勝点を決めたのはフランス女子代表のウェンディ・ルナール選手。所属チームのオリンピック・リヨンでU E F A女子チャンピオンズリーグを6度も制した欧州女子サッカー界のスター選手です。
劇的な勝利を掴み、ルナール選手はスタンドで応援する一人の日本人サポーターのところにやってきました。「一緒に写真撮る?」と話しかけたルナール選手はセルフィ(自撮り)。その場面をF I F Aが世界に発信しました。
Wendie Renard is her star and @equipedefrancef’s star! 🌟🇫🇷 #FIFAWWC | #BeyondGreatness
— FIFA Women's World Cup (@FIFAWWC) July 29, 2023
筆者は、以前、イングランドでプレーする二人の選手にファンサービスについて取材したことがあります。ファンサービスについて日本と欧州で、クラブの方針に違いはあるのでしょうか。マンチェスター・シティでプレーする長谷川唯選手は「クラブが選手のサイン入りグッズをファンにプレゼントすることが多い」と言います。日頃から選手は積極的にサインをして協力しています。
ウエストハムでプレーする清水梨沙選手はクラブから「最終戦ではファンに用具をプレゼントして良いと言われている」と言います。いずれもクラブが率先し、男子のチームでは実現しにくいファン・サポーターとの近い距離づくりを行なっていることがわかります。
Hana Takahashi gives a lucky fan a souvenir they will cherish forever after @JFA_Nadeshiko's 4-0 win over Spain! 🤗🇯🇵@h02t19 | #FIFAWWC
— FIFA Women's World Cup (@FIFAWWC) July 31, 2023
世界の女子サッカーシーンで見られるスター選手とファン・サポーターとのコミュニケーション
今大会は、史上最高の入場者数になりました。過去最高の入場者数だったFIFA女子ワールドカップ カナダ2015をラウンド16で上回ったのです。各地のスタジアムには大観衆が集まります。それでも、混乱なく、選手はファン・サポーターとの距離を縮めます。その姿は映画祭のレッドカーペットを優雅に歩き笑顔で撮影に応じる映画スターのようです。
今回は、フィールドでのプレーから離れ、FIFA女子ワールドカップのコミュニケーションについてお伝えします。ニュージーランドで現地観戦し帰国した福島成人さんにお話をお聞きしました。
福島さんはコスタリカ女子代表戦とスペイン女子代表戦を現地観戦しました。これまでFIFAワールドカップを何度も現地観戦してきましたが、FIFA女子ワールドカップを現地観戦するのは初めて。その旅を振り返り「1年のうちにスペインに2回も勝つなんて!しかも両方とも現地観戦できて」と喜びを表現しました。
福島さんは、ヨコハマ・フットボール映画祭の実行委員長として、これまでに女子サッカー映画を11本も日本に紹介してきました。2023年に上映したのは『L F G ―モノ言うチャンピオンたちー』。ミーガン・ラピノー選手をはじめとするアメリカ女子代表のもう一つの戦いを追跡した映画です。FIFA女子ワールドカップ フランス2019での撮影シーンも多く登場しました。2021年には二つの女子サッカー映画が話題となりました。一つは女子サッカーが禁止されていた1980年初頭の西ドイツで世界一を目指した女性アスリートの奮闘を発掘した傑作ドキュメンタリー『壁を壊せ! -ドイツ女子サッカー 台北の奇跡-』。もう一つは『オリンピック・リヨン–女子サッカー最強チームの真実–』です。リヨンを舞台とした映画には、当時、オリンピック・リヨンに所属していた熊谷紗希選手も登場しました。福島さんは、そうした映画に登場した選手を近くで見ることも楽しみにしていました。
なでしこジャパン(日本女子代表)とスタンドをつないだベンチ前にあるもう一つの輪
「ニュージーランドの人口は512万人らしいですね。だいたい北海道と同じくらいです。そう思うとオークランドが札幌市のようなポジション。今大会のニュージランドの試合会場は小規模で、ザンビア女子代表戦(ハミルトン)の入場者数が約1万6千人。コスタリカ女子代表戦(ダニーデン)が約7千人です。小樽市や帯広市で試合を開催しているイメージです。ウェリントンで開催したスペイン女子代表戦には、学校の先生に引率されて観戦している子どもたちのグループも多かったです。日本のサポーターは、いつもの感じで周辺の子たちを巻き込んで日本コールをしてもらったり、逆に子どもたちから何かコールが起こったり、楽しく応援していました。ブライトンの帽子を被ったおじさんが、なでしこジャパン(日本女子代表)のサッカーに気持ちよくなって。3点目入った後は、英語で『4点目も欲しい』みたいなコールをしだしたりて面白いことがたくさん起きました。高校生くらいの女の子グループがいました。そのブライトンおじさんによると、ボールパーソンにクラスメイトがいるらしく、クラスメイトのところにボールが行くとギャーと叫んで喜んだり騒いだり、そうしたこともちょっと牧歌的でいいなと思ったりしましたね。」
試合によっては、メインスタンドの最前列2列は関係者が座ります。フィールドの中央ではプレーする11人の選手が円陣を組みます。そのとき、ベンチの12人の選手はベンチの前で同じように輪を作ります。フィールドの円陣とスタンドの間にもう一つの輪が生まれ、最前列2列の関係者、そしてファン・サポーターをつなぎます。少なくとも1試合に二回は起きるこの時間に、福島さんは、なでしこジャパン(日本女子代表)が充実した毎日を送ってきたことを感じました。チームの一体感を感じ、それをファン・サポーターと共有してきたのです。
スター選手と街で会えてしまうのには理由がある
FIFAワールドカップの現地に行くと、人のつながりを感じます。思わぬ場所で想像もできなかった人と会うことがあります。例えば、筆者はドイツのボンのマルシェで憲仁親王妃久子様とお会いしたことがあります。韓国・儒城温泉のホテルのエレベータでは金南一選手と、フランクフルトのホテルのエレベータではアリ・ダエイ選手と二人きりになったことがあります。
今大会では、グループステージの期間中、日本からニュージーランドに渡ったファン・サポーターが、街角でなでしこジャパン(日本女子代表)の選手たちと一緒に写真を撮影しS N Sにアップしていました。なぜ、このようなことが起きたのでしょう。
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