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なでしこジャパン(日本女子代表)スタメン予想 戦術理解の入口 3バックとワイドなポジションの連携で高い位置から相手を潰せるか

なでしこジャパン(日本女子代表)はニュージーランドでどのような戦いをするのか。それを理解するためには、池田太監督就任一年後の2022年10月から導入したスリーバック(3―4―3)のフォーメーションを知ると良いです。そこで、WE Love 女子サッカーマガジンでは、テレビ中継を見る前に予習しておきたい、なでしこジャパン(日本女子代表)の「3バックとワイドなポジションの連携」を解説します。男子のサッカーよりもスピードが遅く誰にでもわかりやすいサッカーだからこそテレビ視聴でも楽しめるポイントです。

3バックの右が誰になるのか?池田監督の決断に注目

まずは、高円宮記念JFA夢フィールドでのトレーニングとパナマ女子代表戦から予想される選手の起用ポジションです。注目は3バックの右(ストッパー)。スピードへの対応と前へ飛び出す守備の強さを優先して石川璃音(三菱重工浦和レッズレディース)もしくは清水梨沙選手(ウェストハム)を起用する可能性があります。特に、ザンビア女子代表はスピードがあり、平均身長が参加全チームで最も低い(159cm)ので、速さと強さで評価される清水選手の起用も考えられます。

「奪う」守備から得点増を目指す

 高倉麻子前監督の指揮するなでしこジャパン(日本女子代表)は一対一の球際の攻防で劣勢となることが多く、複数の選手が近い距離感で人数をかけてボール保持者を囲む、または待ち構える守備が主流でした。それは伝統的な「なでしこらしい守備」でした。ただ、人数をかければ逆サイドの守備の人数は少なくなります。以前とは違い、近年の身体能力と技術の高まった強豪国との対戦では、囲んでもロングパス一本で人数の少ない場所にパスを出されると、手薄になったディフェンスラインを突破され決定的なピンチに陥ることが増えました。そのため、守備の位置は自陣深くとなり、ボールを奪っても相手ゴールまでの距離が遠く得点力も上がらないという悪循環となっていました。

池田太監督は、それを意識し、2021年10月の就任当初から「奪う」というキーワードを多用してきました。待ち受けて相手のミスを誘うのではなく意図的にボールを「奪う」シーンを増やすことを目指しました。そのためには一対一の球際の勝負で負けないことが必要となります。伝統的な「なでしこらしい守備」からやり方をアップデートし、欧米で球際の厳しさを日頃から経験している選手が主力となっていきました。高い位置で「奪う」ことは短時間でゴールに向かう推進力につながり、効率よく得点を「奪う」アグレッシブなサッカーを形作っていきました。池田監督は日本の女子サッカーの常識を逆転させたともいえます。

ワイドなポジションで起用される遠藤純選手(エンジェル・シティF C) Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410 トップ写真も

その「奪う」力をさらに強化するために導入されたのがスリーバック(3―4―3)のフォーメーションです。中盤の人数を増やし、それぞれのエリアで責任を持って激しく守備を行う。一対一の守備のチャレンジをするために、周囲の選手が適切なポジショニングを確保して支援する。東京2020大会までのゆったりとしたテンポのサッカーとは全く異なる前後の動きが活発でスピーディーなサッカーになっています。

ワイドなポジションだけではなく3バックの右としてもトレーニングしていた清水梨沙選手(ウェストハム) Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

前後の関係から試合を見る

まず、前提を整理しましょう。池田太監督の指揮するなでしこジャパン(日本女子代表)ではスリートップというよりも、ワントップ+2人のインサイドハーフという呼び方をすることが多いです。そして両翼の選手をワイドなポジションと呼びます。つまり、このチームでは基本的に幅を取る役割を担うのは前の3人の選手ではなくワイドの選手の役割なのです。中央の守備はワントップ+2人のインサイドハーフが行い、前線から縦パスの出所を押さえ、サイドの守備をワイドなポジションと3バックの左右(ストッパー)が受け持ちます。それを覚えておくと、非保持のシチュエーションでもなでしこジャパン(日本女子代表)が上手くプレーできているのか上手くプレーできていないのかを理解しやすくなります。

インサイドハーフを追い抜いていく清家貴子選手(浦和) Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

最も注目していただきたいのはインサイドハーフの選手、ワイドの選手、3バックの左右(ストッパー)の選手の前後の関係です。池田監督は、オールラウンダーの選手よりも、各ポジションのスペシャリストを多く起用しています。冒頭で紹介した右ストッパーの起用のような、選手の個性を考慮した起用が特徴です。

前線から激しい守備で「奪う」植木理子選手 Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

ワントップでプレーする植木理子選手(東京NB)は、高円宮記念JFA夢フィールドと仙台市内での合宿を経て迎えたパナマ女子代表戦の後に、このように話しています。

「コミュニケーションが取れて、それぞれの選手の特徴は掴めてきています。」

「仕掛ける守備」による選手の前後入れ替わりに注目

今大会のなでしこジャパン(日本女子代表)は常に強いプレッシングを仕掛けます。キーワード「奪う」の真骨頂はここにあります。特に、ワイドの選手が下がらずに、前から一対一の守備で相手の勢いを止めることが重要になっています。また、相手陣内で「奪う」ことができれば目指すゴールまでの距離が近く、得点を「奪う」可能性が格段に高まります。なでしこジャパン(日本女子代表)では、いわゆる「決定力」というものは、個人能力よりも得点を「奪う」可能性が高いシチュエーションを産むことで創っていきます。そのため、ワイドのポジションには攻守にわたって一対一の競り合いに強い選手が起用されています。

とはいえ、相手が大外からではなくやや内側にボールを運んで攻撃してくる場合もあります。その場合に「ワイドの選手が出るのか3バックの外側の選手が出るのかの判断が重要」だと清水選手は言います。

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