WE Love 女子サッカーマガジン

地元百貨店の向かいに交流拠点「熊谷ハウス」を設けたちふれASエルフェン埼玉 地域と共に育つWEリーグの価値 大沼歩加選手と薊理絵さんに聞く

ちふれASエルフェン埼玉は2023年7月6日に「ASエルフェン埼玉 熊谷ハウス」を開設しました。代表取締役社長の田村貢さんは除幕式で、その意義を話しました。

「ファン、サポーター、熊谷市民の皆様のコミュニティーとして集結していただき、マイスタジアムマイホームである熊谷スポーツ文化公園競技場を満員にしたいです。」

ASエルフェン埼玉 熊谷ハウス

「ASエルフェン埼玉 熊谷ハウス」の当面は原則として毎週土曜日11時から17時までを開館時間とし、ファンサポーター、熊谷市民が気軽に訪れることができる交流拠点として運用したいと考えています。今後はサイン会、ファンイベント等のイベント会場にもしていく予定です。物販を軸にしたオフィシャルショップではなく、子育て世帯の使いやすい交流拠点を設けたところに、ちふれASエルフェン埼玉らしさを感じます。カウンターのあるキッチンスペースと人工芝の交流スペースで構成されています。

来場者の約6割が親子観戦となったちふれASエルフェン埼玉

従来の日本の女子サッカーは、比較的年齢の高い男性ファン層の支持で成立していました。公開されている「2014プレナスなでしこリーグスタジアム調査」によると、当時の観戦者は男性が約70%。40歳以上が約75%を占めておりJリーグよりも若年層や複数人数での来場が少ないという特徴がありました。しかし、この2シーズンを経て、ちふれASエルフェン埼玉の来場者層は全く違うものとなりました。ホーム最終戦の来場者の約6割が親子観戦となったのです。従来のファン層に加えて新たなファン層を獲得したことにより、ちふれASエルフェン埼玉は1年目のシーズンよりも2年目のシーズンで入場者数を伸ばしました。

ホームスタジアムの熊谷スポーツ文化公園陸上競技場は、小さなお子さんを連れて一緒に観戦できる託児室付き観戦シート、お子さんが走り回れるYogiboの森、スタジアムの外でも思う存分に楽しめるキッチンカーをそろえたダイニングルームといった従来の女子サッカーの試合会場には前例のなかった新たな取り組みが好評です。ちふれASエルフェン埼玉はWEリーグが打ち出したルールやガイドラインを遂行することにとどまらず、新たに何を生み出せるかを常に模索しているように感じます。そのため、スタッフの表情がいつも輝いています。

ASエルフェン埼玉 熊谷ハウス

熊谷市民への浸透が課題となっていた

なんといっても注目はその立地。国道17号(中山道)に面した八木橋百貨店の向かいにあります。旧来からの熊谷市の商業地域の核となるエリアです。その裏側には中山道に並行し、夜に賑わいを見せる飲食店街も広がっています。冬季と夏季を除く毎月第2土曜には星川の沿道で「星川夜市」が開催され、飲食やクラフト雑貨等のブースが並ぶナイトバザールで賑わい若い世代も集まります。

水辺にウッドデッキや花が並ぶ星川シンボルロード

ちふれASエルフェン埼玉は2013年シーズンまでA Sエルフェン狭山F Cとしてなでしこリーグに参戦していました。現在は熊谷市でホームゲームを開催しているちふれASエルフェン埼玉ですがクラブの発祥の地は狭山市です。そして、トレーニングを行う活動拠点は飯能市にあります。日高市もホームタウンとなっています。熊谷市とのつながりは、ちふれASエルフェン埼玉がWEリーグに参入し熊谷スポーツ文化公園陸上競技場をホームスタジアムとすることで深まりましたが、まだまだ市民や地元企業への認知は浸透しておらず、ホームタウンとしてのより密接な関係を築いていくことが課題となっていました。

除幕式でお披露目

ここから熊谷市民と深い絆が生まれる予感

ちふれASエルフェン埼玉クラブアンバサダーを務める薊理絵さんは、熊谷市民との距離が縮まると感じています。

「熊谷市にもクラブの拠点があると、熊谷市内の皆さんにご挨拶に回る際の親近感が変わると思います。ここにこうした拠点ができたことはクラブにとても嬉しいことですが、同時に、熊谷市民にとっても嬉しいことなのかなと思います。そして、熊谷市役所の皆様にいつも温かいご協力をしていただいています。こうして近い距離でお仕事をできることになることは、お互いにメリットがあります。何かもっと深い絆が生まれるのではないかと思いました。

多分、選手たちも嬉しいと思います。休みの日に熊谷市内のお店に足を運ぶホームタウン巡りをしている選手もいます。自分たちでホームタウンを知って、足を運んだ先でちふれASエルフェン埼玉の話をしています。そうした活動にも、この熊谷ハウスの存在は大きな役割を果たすと思います。」

ちふれASエルフェン埼玉クラブアンバサダー 薊理絵さん

埼玉県西部地域のサッカーを盛り上げたい

大沼歩加選手は育成年代をFC熊谷プレシオッサと行田イーグルスサッカースポーツ少年団で過ごした埼玉県西部地域出身の地元選手です。除幕式と内覧会に笑顔で参加しました。

「地元の選手としてすごく嬉しいですね。お買い物をする百貨店の向かいに目立つ看板も大きく、今まで競技場に足を運んだことがない人もちふれASエルフェン埼玉を知るきっかけになると思います。これまで西部地域は、さいたま市や南部地域ほどサッカーが盛り上がっているイメージがなかったのですが、地元にこのような場所ができるとサッカーを始めるきっかけになると思います。地元の友達が看板に気づいて連絡をくれたら嬉しいですね。」

大沼歩加選手

人が集まると新しいことが生まれてくる

1980年代の日本代表を中盤で支え、引退後は日本女子代表の監督も務めたレジェンドで取締役会長の宮内聡さんは、チームに強さだけを求めていません。

「サッカーを通しての街づくり、我々のプレーを見て感動していただいて元気を届けることができればという一心ですね。やはりサッカーチームは強くなければならない。でも、オンリーワンを目指したいですね。我々、ちふれASエルフェン埼玉にしかできないことを創っていきたいです。我々、独自のスタイルを築きたいです。浦和さんも大宮さんも強いし地盤があるので、それに負けないように、埼玉県西部地域を元気にしたいと思います。」

ちふれASエルフェン埼玉 取締役会長 宮内聡さん

この取り組みには行政からの関心も集まっており、今回の除幕式と内覧会には熊谷市と埼玉県の職員が多数出席しました。熊谷市 総合政策部スポーツタウン推進課の細田雄一さんはテープカットセレモニーに加わりました。

「親子で一緒に楽しめる取り組みをしていただけることは素晴らしく熊谷市としても助かります。熊谷スポーツ文化公園陸上競技場の託児室付き観戦シートについては熊谷市でも一緒にP Rをさせていただいています。」

ASエルフェン埼玉 熊谷ハウス

熊谷市は、スポーツがまちづくりを推進するエンジンになると考えています。埼玉パナソニックワイルドナイツ(ラグビー)、埼玉武蔵ヒートベアーズ(野球)、アルカス クイーン クマガヤ(女子ラグビー)といった多数のチームが熊谷市で活動しています。そして市内各所にスポーツ施設があります。ちふれASエルフェン埼玉は女子プロサッカーチームらしい独自性を打ち出し、それを市民に伝えようとしています。スポーツ施設を管理する立場にあたる熊谷スポーツ文化公園管理事務所の信永隆文さんも、ちふれASエルフェン埼玉のファン層に注目しています。

「エルフェンさんの特徴としてファミリー層が多いので試合会場で温かみのある雰囲気を出されています。熊谷スポーツ文化公園陸上競技場には、他のスポーツ施設もありますので、ご家族でいらして利用していただきたいと期待しています。横のつながり、競技を超えたつながりを生んで、多くの皆さんに施設を利用してほしいです。」

ちふれASエルフェン埼玉 代表取締役社長 田村貢さん

ちふれASエルフェン埼玉の代表取締役社長・田村貢さんは「人が集まると新しいことが生まれる」と考えています。「ASエルフェン埼玉 熊谷ハウス」の立地は熊谷スポーツ文化公園陸上競技場からはバスを使うと30分ほどの移動時間を要する場所ですが、熊谷市民の生活を支える繁華街にあるので、ちふれASエルフェン埼玉が生活圏に接近したといえます。熊谷市民が集まることで心の距離感はぐんと近づくかもしれません。

ちふれホールディングス株式会社 広報部の本井沙織さんは「地域にクラブの存在を広げていくのは簡単なことではありませんが、少しずつ地域に愛されるクラブになっていけたらと思っています」と期待します。内覧会では早くも子どもたちの笑顔が弾けていました。

「良い光景が生まれたと思います。そうやって穏やかに過ごせる場所が一つでも増えると、地域の方のお役に立てると思います。」

来月には新シーズンが開幕する

来シーズンについて質問すると、宮内さんは、元日本女子代表監督らしく試合内容に言及しました。

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