WE Love 女子サッカーマガジン

日本の女子サッカー文化はアジア各国の少女にどのように届いたか? Xーgirl(株式会社ビーズインターナショナル)がA S E A N諸国・東ティモールのU-17女子サッカー選手への講演から得たヒント

WEリーグのオフィシャルサプライヤーであるXーgirlを展開する株式会社ビーズインターナショナルが「A S E A Nの9か国および東ティモールから来日するU-17女子サッカー選手と役員等約240名を前に講演」という知らせが入ってきました。会場は東京ベイ有明ワシントンホテル。講演は、日本A S E A N友好協力50周年記念認定事業として開催されたJ E N E S Y S U-17 Women's Football Memorial Cupのプログラムの一つというのです。J E N E S Y Sは外務省が推進する対日理解促進交流プログラムです。

J E N E S Y S U-17 Women's Football Memorial Cupは、日本とA S E A Nの青少年の相互理解と友好促進を目的にした大会です。A S E A N9か国及び東ティモールのU-17女子代表チームを招へいし、U-16日本女子代表及び沖縄県うるま市選抜U-17女子代表チームを含む合計12チームが参加しました参加チームは沖縄県うるま市に集合。2023年3月17日()に開幕し3日間のグループステージを行いました。最終日には順位決定戦を実施。井尻明監督が率いるU-17ベトナム女子代表とU-16日本女子代表が決勝戦を行いU-16日本女子代表が優勝しました。A S E A N諸国及び東ティモールの選手たちは試合をすることに加え日本の文化を経験し、各種プログラムを満喫していました。参加国同士でも活発な交流が見られ、この年代における貴重な国際交流の場となったでしょう。

U-17の選手たちに向けてWEリーグのオフィシャルサプライヤーを務める企業が講演 

この大会は一般財団法人 日本国際協力センター(J I C E)が主催しています。なぜ、株式会社ビーズインターナショナルがU-17の選手たちの前で講演することになったのか、そして、何を伝えたのかについて、株式会社ビーズインターナショナルでWEリーグ事業部の全体統括をしている冨田裕也さんにお聞きしました。そこには、日本の女子サッカーの無限の可能性が感じられました。冨田さんは選手たちのレスポンスから得られたことも多かったと言います。まずは、講演実現の経緯から聞いてみました。

J I C Eから『日本の女子サッカー文化の発展についてお話ししていただきたい』というお問い合わせをいただきました。WEリーグの取り組みに関心があるということでしたので、WEリーグの理念や行動規範についてもお話をした上で、メーカーサイドでどのようにWEリーグをサポートしているのかのお話をしました。

ご存知の通り、各国とも女子のスポーツは恵まれた環境にはありません。それゆえに、日本のサッカーにおいて女子サッカーをメインに活動している我々がJ I C Eの目に止まったのだと思います。各国の未来のスターになる可能性を秘めたU-17の選手に、日本では女子サッカーにどのようなサポートがあるのかを認識してもらうところが講演の大きなポイントだったと思います。」

X―girlによるWEリーグチームのユニフォーム 提供:X―girl

ビジュアルと動画を多用した説明に選手から「そうなんだ!」という反応

聴講した約240人のほとんどはU-17世代の選手でした。何をどのように伝えれば良いのか、サッカーを愛しているとはいえ、ビジネスパーソンである冨田さんにとって、ビジネスシーンとは異なる工夫が必要だったに違いありません。

「日本の女子選手が、どのようにメーカーからサポートを受けてプロ選手として活躍しているのかに興味をお持ちではないかと考えました。若い世代の選手たちです。あまり私がダラダラと話しても聞いていただけないと思い(笑)、極力、ビジュアルとムービー(下の動画等)を多用し、視覚で感じていただけるような工夫をしました。

我々はアパレルメーカーで、ファッションを起源としたブランドですので、ピッチ上での選手の活躍にフォーカスするだけではなく、オフ・ザ・ピッチでもファンに憧れを持っていただけるような取り組みをしている点も強調しました。例えば、ユニフォーム以外のウェアの供給等です。そうした姿を発信していただくことが、さらに、次の世代の女子選手を育てます。それが、日本における女子プロサッカー選手の姿であることをお伝えしました。」

池尻凪沙選手(N相模原)考案  X―girlフードパーカー 提供:X―girl

「基本的に、我々が撮影する写真では、選手はボールに触っていません。その意図を説明したときに、ご聴講いただいた皆さんからの『そうなんだ!』という反応がありました。我々の意図に対して抱かれていたのかもしれない『違和感』が、あのとき『興味関心』に移行したのだと思います。皆さん、どこかで『ボールを蹴っている姿がアスリートの正しい姿』と感じているところがあると思うのですが『日本ではボールを蹴っていないビジュアルを展開している』というところに大きな関心を持っていただきました。」

これは、ウェアを提供するサプライヤーであると同時に、WEリーグと女子サッカーの価値を高めていくパートナーでもある株式会社ビーズインターナショナルだからできるお話です。今回の講演の肝はここにありました。

「もちろん、我々は選手のパフォーマンスを発揮できる商品を提供する使命があります。でも、同時にプロスポーツはエンターテイメントでもあるとも考えています。女子サッカーの試合会場に女性の来場者を増やすためには、女子サッカーに興味関心をどれだけ持っていただけるか、ライフスタイルの中に女子サッカーが入り込むことが重要です。エンターテイメント性で魅了していくことが必要です。その意味で『かっこいい・かわいい』といった視点から発信していけるとより良いと思います。

プレーだけを目的に来場していただくファンもいらっしゃいますが、もっとたくさんの人に見ていただいて盛り上げていき、選手自身の生活も豊かにしていくことができればと思います。それをサポートするのが我々の役割なのです。」

XLARGE/X-girlららぽーとTOKYO-BAY店で行ったジェフユナイテッド市原・千葉レディースの選手による来店イベント ⓒJEFUNITED 左から、田中真理子選手、市瀬千里選手

株式会社ビーズインターナショナルのスタンスを説明し、実際に選手を撮影したビジュアルを提示することで、聴講した選手たちは、もし自分がプロ選手になったら、クオリティの高いプレーするだけではなく、それぞれの国の女子サッカーや女性の置かれた社会的環境にプラスとなる影響を及ぼすことができるというイメージをしやすくなったかもしれません。

そして、なんといっても、最も選手たちの興味を掻き立てたのは、講演の最後に設けたユニフォームやトレーニングウェアの現物を体験できる時間。選手の皆さんは興奮気味に生地の手触りや発色を確認していました。

「皆さんが殺到してしまうのを防ぐために、国別に時間を設けて集まっていただきました。」

と、その様子を冨田さんは振り返りました。

手で触れて感触を確かめる選手たち 提供:X―girl

最も好評だったのはノジマステラ神奈川相模原のユニフォーム

講演自体に、どのような反応を得られたのでしょうか。その場で「自国でもサプライしてほしい」というリクエストがいくつもあったそうです。

「『自分たちが着たくなるユニフォーム』への要望があるのだと思います。

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