WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグ逆転優勝を狙う日テレ・東京ヴェルディベレーザ 竹本監督と永田ヘッドコーチが伝えるプロフェッショナルと読売クラブの源流

2023年4月18日、日テレ・東京ヴェルディベレーザのトレーニングは9時30分に始まり11時すぎに終了しました。最初に、選手を集め、今日からのトレーニングの意義について長い時間をかけて説明したのは竹本一彦監督。トレーニングの最後に選手に話をしたのは永田雅人ヘッドコーチでした。トレーニングはピリッと緊張の張り詰めたムードで終了しました。

WEリーグ再開 首位・三菱重工浦和レッズレディースを追う日テレ・東京ヴェルディベレーザ 田中桃子選手、植木理子選手、藤野あおば選手、小林里歌子選手が合流し活気あふれる練習

植木理子選手は、この日のトレーニングについて、このように話しました。

「また、リーグの大事な試合が始まるので、もっと強度の高い練習をしなければいけないと、多分、チーム全員が感じているところです。ベレーザのボール回しは、外から見ると和気あいあいとしていて楽しく見えます。ただ、それは、中で真剣にやっているからこそ楽しい、伝統のボール回しだと思います。そこに強度は絶対に必要です。」

植木理子選手

勝ち続けなければならない日テレ・東京ヴェルディベレーザ

日テレ・東京ヴェルディベレーザは日本サッカー協会のS級コーチライセンスを保持している竹本一彦監督とA級コーチライセンスを保持している永田雅人ヘッドコーチが役割を分担。共に手を取り合うように新しい日テレ・東京ヴェルディベレーザの姿を作ってきました。4月23日(日)に広島広域公園第一球技場に乗り込みサンフレッチェ広島レジーナと対戦する直前にヴェルディグラウンドを訪ね、チームの目指す姿についてお話をお聞きしました。

逆転優勝に向け活躍が期待される山本柚月選手

日テレ・東京ヴェルディベレーザは現在3位。首位の三菱重工浦和レッズレディースとは勝ち点差が4あります。ただし、試合消化数は日テレ・東京ヴェルディベレーザの方が1試合多いため、優勝するためには首の皮一枚で残っている状態です。三菱重工浦和レッズレディースはWEリーグの試合を6連勝中。安定した戦いぶりを続けています。追いかける日テレ・東京ヴェルディベレーザはこれから勝ち続け、5月7日(日)に行われる浦和駒場スタジアムで行われる第17節の直接対決で勝ち点差を詰め、終盤戦に逆転優勝するための望みをつなぐ必要があります。

日テレ・東京ヴェルディベレーザには、なでしこジャパン(日本女子代表)の欧州遠征に招集された田中桃子選手、植木理子選手、藤野あおば選手、小林里歌子選手がいます。また、菅野奏音選手、北村菜々美選手、木下桃香選手、宮川麻都選手といった代表クラスの選手も多く在籍します。竹本監督は、さらに、若い世代の選手の戦力底上げをしたいと考え、なでしこジャパン(日本女子代表)が欧州遠征をしている間にトレーニングマッチを組みました。

「日体大、セレッソ大阪ヤンマーレディースと練習試合をやり、普段は試合に出ていない若い世代の選手たちが出場しました。ですから、かなり経験を積み上げています。『普段の練習の中でワンプレーの精度のこだわりを持ってやっていこう』と練習前に話しました。それはスタッフ陣が共有していることなので、今日は練習が終わってからも永田が違ったアプローチで話し、少しチームに刺激を与えています。」

竹本一彦監督

日テレ・東京ヴェルディベレーザは、昨シーズンに良い成績を収めることができませんでした。今シーズンは皇后杯 第44回JFA全日本女子サッカー選手権大会を優勝したものの、2022―23 WEリーグカップをあと一歩のところで逃しました。竹本監督は目標を成し遂げるために、公式戦に負けて反省するのではなく、問題点を事前に修正することを希望しています。トレーニングでワンプレーにこだわる、そして、お互いに積極的に話をする……。ガンバ大阪、柏レイソル等で監督として選手を指導してきた竹本監督は日テレ・東京ヴェルディベレーザの選手たちに、プロチームゆえの厳しさと責任を伴う成長を求めてきました。そして、チームとして、スタンドに来場するファン・サポーターに喜んでもらうため、自分たちのプレーの精度を上げることに努めています。

若い選手の手本となるプレーを披露する宮川麻都選手

選手間の競争を見守り選手の状況をチェックする竹本一彦監督

日テレ・東京ヴェルディベレーザのトレーニングは短時間ですが密度が濃く、選手の動いていない時間がほとんどありません。刻々と状況が変わるメニューがコーチから選手に投下され、激しくボールを奪い合います。チームメイトといえども、試合に出場するための競争があります。竹本監督は、その競争心をもっとグラウンドの中で表現してほしいと考えています。

「選手は、それを出そうとしていると思いますが、どのような声を出すのか、どのような指示を送るのか、もっと積極的に、前向きに、一歩遅いところを変えて、もっと自分を出してくれればと思います。サッカーは、攻守とも、次のプレーをイメージすることで身体が動くし自分の技術を使えるようになります。ボールが来てから、次に何をしようかと考えていてはプレーが遅くなるのでイメージを持っておくことが大切です。判断力の向上を促しています。」

トレーニング中のグラウンドでは永田ヘッドコーチが指揮をしています。竹本監督はそれをグラウンドの隅で移動しながら見守り、選手の状況をチェックしています。

「個別に選手に話をしたり、永田ヘッドコーチに選手個々の成長の話をしたりします。先発メンバーに入ったら、相手チームのプレーにどのように対応するか、どのような心がけで試合に入るのかを伝えます。」

トレーニングの合間に選手に声をかける竹本一彦監督

戦い方を定義し目標を明確にする竹本一彦監督

竹本監督のコメントには、ファン・サポーター視点が多く含まれることも特徴です。何をすればスタンドが湧いてくれるのか、どうすればお客さんがリピートしてくれるのかを常に考え、日テレ・東京ヴェルディベレーザが、今、目指すべきサッカーの指針をチームの内外に提示しています。だから、この一年で日テレ・東京ヴェルディベレーザのサッカーは、一つの方向を向いて変貌を遂げることができたのではないでしょうか。

「同じ引き分けでも0−0ではなく2−2であれば、お客さんは(見に来たことを)嬉しく思ってくれます。0−0のゲームにも良いことはありますが、やっぱり、お互いの点数が動いて、ドラマチックな展開になることによって、ゲームが面白くなると思います。」

竹本監督はスピーディーな攻撃から次から次へと得点をするサッカーをしようとしています。2023年2月28日の記者会見で、ウィンターブレイク明けの日テレ・東京ヴェルディベレーザが目指すサッカーについて、このように話していました。

「まず前線からの守備と切り替えの速さを徹底する要求を選手にしていきます。攻撃では、ベレーザというと足元の技術、グラウンダーの攻撃でワンツーやスルーパスでペナルティエリアの中に入って点を取るというイメージがあります。それに加えてサイドからの攻撃・クロスボールとペナルティエリアに入るための浮き玉のキックと受けの多様性を身につけて攻撃面のクオリティを高くします。」

その精度は、約2ヶ月間で高まったのでしょうか。まず、守備について自信を持って断言しました。

「それはできるようになっていると思います。アタッキングサード(相手陣内の深いエリア)でウチは一番ボールを奪えています。前から守備をするのは、もうウチの基本です。」

攻撃面では、かつての華麗なショートパスの連続よりも縦に速い攻撃で一気にゴール前に緑のユニフォームが殺到するシーンが印象的になりました。そして、大きく幅を使い、低くて速いクロスを入れ中央に複数の選手が飛び込みます。角度のないところからもシュートを狙います。以前とは志向の異なるサッカーです。

「ワンツーやスルーパスをゴール前にシンプルに入れるのは、やはり難しいですよね。相手も当然ながら中を締める。プロ選手だから、ここを突破するところを見せたいのだけれど、簡単にはいかないです。ですから、そういうプレーではないサイドからのクロスとか、カウンターとか、相手のミスにつけこむとかでも点をとりたいと思います。」

リーグ戦で7試合に出場している土方麻椰選手

選手の奥底にある芯の部分を重視する永田雅人ヘッドコーチ

竹本監督のお話は、チームの目指すことを概念として言語化し、チームづくりを進める途中でエラーが発生していないかを確認・修正していくこと、そして、どのようにファン・サポーターを増やしていくのかをピッチ内でのプレーを起点にしたアプローチで表現するものが多いです。

サッカーの監督を英語で表現する際に「ヘッドコーチ」とする場合と「マネージャー」とする場合があります。岡田武史さん(現・F C今治会長)は監督時代に英語で自己紹介する際、「マネージャー」と役職を表現しました。竹本監督も「マネージャー」という表現に近い監督だと考えられます。

永田雅人ヘッドコーチ

日テレ・東京ヴェルディベレーザで選手を指導する「ヘッドコーチコーチ」といえば永田雅人ヘッドコーチです。永田ヘッドコーチのお話は具体的な指導方法に関する内容が多くなります。永田ヘッドコーチは、選手に「もっと純粋に心からプレーしてほしい」と言います。「よみうりランドのこのグラウンドに一歩足を踏み入れてボールタッチしたら、それ(心からのプレー)が発揮されなきゃいけない」とも言います。今、日テレ・東京ヴェルディベレーザの置かれた状況について、このように説明してくれました。

「『全部勝たなきゃいけない』ということよりも、もっと奥底にある芯の部分が必要だと感じています。」

(残り 1714文字/全文: 6135文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ