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収蔵品数は約7万点・日本サッカーミュージアムに展示されていたのは「澤穂希と宮間あやの時代」その始まりと続き

日本サッカーミュジーアムが長期のお休みに入ります。日本サッカー協会が自社ビル(J F Aハウス)を売却・移転することが理由です。ミュージアムの移転、再開は未定で、約19年間の歴史の幕を一旦は下ろしました。

最終営業日となった2023年2月26日は、ヴァーチャルスタジアム(ホール)でトークイベント「未来へのパス」が開催されました。FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023カップの直前ということもあり登壇者6名のうち4人が女子サッカー関係者という極めて女子サッカー色の強いイベントです。「世界の頂点に立つための秘訣」を質問された日本代表監督の森保一さんは笑顔で「なでしこの皆さんにお聞きしたい」と答えました。そして「2002年以降の日本サッカーにおいて女子サッカーの果たしてきた役割がいかに大きかったかを示しています。」と話しました。

今回は、女子サッカー側から見た日本サッカーミュージアムとは何であったのか、そして「澤穂希と宮間あやの時代」から日本の女子サッカーを振り返り「未来へのパス」を考えます。

宮間あやさん(FIFA女子ワールドカップドイツ2011 優勝メンバー)、澤穂希さん(FIFA女子ワールドカップドイツ2011 優勝メンバー)、佐々木則夫さん(JFA女子委員長/なでしこジャパン元監督)、池田太さん(なでしこジャパン監督)森保一さん(SAMURAI BLUE監督)、鈴木隆行さん(2002FIFAワールドカップ日本/韓国 日本代表メンバー)

地元開催のワールドカップのレガシーを残すことを目的に誕生したミュージアム 

日本サッカーミュージアムはFIFAワールドカップ日韓2002の記念事業として2003年12月に誕生しました。FIFAワールドカップ日韓2002のロッカールーム再現、日本代表の円陣再現、記録動画。トロフィー類、ユニフォーム、ボール等の用具の他にも、さまざまな貴重な資料が保存されています。収蔵品数は実に約7万点(書籍、資料含む)。展示され入場者の目に触れるものは、そのうちのわずか約1千点でしかありません。

山下良美さんら女性審判員に関する展示も

収蔵品の多くはサッカー関係者から寄贈されたものです。例えば、日本サッカー協会に女子の部門が発足する以前に活動していた日本女子サッカー連盟の記録も多くが寄贈されました。日本サッカーミュージアムは「見せるため」だけではなく、フットボールカルチャーを後世に「残すため」の施設でもあります。通算来場者数は71万126人(2003年12月22日開館以降の累計)。最終日には外国語で話す女性グループの姿もありました。

閉館間際に始まった川淵三郎さんのサイン会

館長の大仁邦彌さんは、日本の女子サッカー発展に尽力された方です。FIFA女子ワールドカップ 中国2007をはじめ、幾つもの女子サッカーの大会で団長を務めました。大仁さんは日本サッカーミュージアムの館長として女子サッカーの展示やイベントについて、このように振り返りました。

「(開業計画時は)女子が世界チャンピオンになることを、あまり考えていなかったのですごいことでした。それを終わらせることなく、これからも発展していくために、(澤さん、宮間さんら)彼女たちが頑張ってくれると思いました。今日のトークショーでも感じました。」

休館セレモニーで手を振る文京区長 成澤廣修さん、元館長 小倉純ニさん、元館長 川淵三郎さん、館長 大仁邦彌さん、日本サッカー協会会長 田嶋幸三さん

女子サッカーに始まり女子サッカーに終わる日本サッカーミュージアム

もしかすると、気がついた方は少ないかもしれませんが、日本サッカーミュージアムの展示は女子サッカーに始まり女子サッカーに終わっています。まず、出迎えるのは展示室に向かう階段の入口に掲示されているなでしこジャパンの筆文字。これは2004年に日本女子代表の愛称がなでしこジャパンに決定し発表会見が行われた際に澤穂希さんが披露した文字です。発表会見には、澤穂希さん、丸山桂里奈さんら5人の選手が浴衣姿で登壇し華やかに行われました。

澤穂希さんによる筆

日本の女子サッカーの流れを変えた北朝鮮女子代表戦と第一次なでしこブーム

当時の女子サッカーは2000年に開催されたシドニーオリンピックの出場権を失い低迷期の真っ只中。1998年から2000年にかけて、多くの有力チームが活動を停止しました。2000年代に入っても、その傾向は変わらず2003年のLリーグ(現・なでしこリーグ)1部の1試合あたりの平均観客数は412人でした。

2004年4月24日、勝てばアテネオリンピック出場が決まる大一番の対戦相手は格上の北朝鮮女子代表でした。試合はゴールデンタイムの19時キックオフ。ちょうど、2回目の小泉訪朝に向け日本人拉致被害者問題がクローズアップされ、社会的に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への関心が高まっていたため「北朝鮮とやりますよ」を口説き文句にテレビ朝日による生中継を実現したという経緯が『サッカーという名の戦争』(平田竹男著:新潮社)に書かれています

過去に対戦成績で7連敗を喫している強い相手を迎え撃つ絶対に負けられない戦いは、テレビ朝日による派手な前宣伝もあって3万1324人のファン・サポーターを国立競技場に集めました。日本の女子サッカー史上最高にアツい応援に後押しされた日本女子代表は3−0で完勝。北朝鮮女子代表選手はスタンドの大声援に冷静さを失ったことを試合後に明かしました。半月板を痛め出場が危ぶまれていた澤さんでしたが、試合開始早々に北朝鮮女子代表選手をショルダーチャージで吹っ飛ばしました。このプレーで「いける」確信を持った日本女子代表は、これまでの実力以上の力を発揮したのでした。この大勝利で絶望への土俵際から一転し、日本女子代表は日本国民からの注目が急上昇。愛称募集に至りなでしこジャパンと呼ばれるようになりました。ここから第一次なでしこブームが起こります。その象徴となる澤さんの筆文字の前を、日本サッカーミュージアムに来場するお客様が通り続けました。

日本サッカー殿堂には綾部美知枝さんが掲額されている。

展示のフィナーレは世界一の証・ワールドカップトロフィー

日本サッカーミュージアムの最後の展示はトロフィーケースです。日本代表(A代表)のアジアカップ等が多数陳列される中でひときわ大きく特別な展示演出が施されているのがドイツ大会で獲得したFIFA女子ワールドカップでした。さらに、その脇を固めるのは国民栄誉賞の盾、U-17日本女子代表とU-20日本女子代表が獲得した世界一のトロフィー。最後に、日本サッカーの見果てぬ夢としてFIFAワールドカップ(男子)のレプリカが置かれたフォトスポットで来場者は展示室を見終わるわけですが、日本サッカーの戦績展示という観点では、日本サッカーミュージアムは「澤穂希と宮間あやの時代」の挑戦と頂点の記録をクライマックスにしたミュージアムだったといえるのです。

ワールドカップトロフィーを多くの来館者が撮影

澤さんに無謀な戦いを挑んだ若き日の宮間さん

「澤穂希と宮間あやの時代」は、どのようにして到来したのでしょうか振り返ってみましょう。

澤穂希さんは1993年に15歳で日本女子代表デビュー。当時の日本女子代表は高倉麻子さん(現・上海盛麗監督)、野田朱美さん(現・オルカ鴨川FC監督)が活躍していた時代。ショートカットで突貫小僧のような若さ溢れるプレースタイルながらテクニックにも優れた澤さんは、次代の女子サッカーを背負うホープとして注目されていました。

ワールドカップトロフィーを直接触れることができるのは、優勝メンバー等の世界でも限られた人だけ

宮間さんも若くして注目を集めた選手です。澤さんと宮間さんの年齢差は6歳。宮間さんは小学生のときに、すでにスターへの道を歩みはじめていた澤さんと対面し「どうにかしてこの選手からボールを奪おう」と果敢に一対一に挑んだと言います。やんちゃで生意気だった当時を笑顔で振り返ります。宮間さんが初めて海外遠征をしたのは小学校5年生のとき。アメリカのサンディエゴで国際親善試合を経験し夢が大きく膨らむ時期でした。

そんな2人の偉大な選手の全盛期が重なり、運よく、なでしこジャパン(日本女子代表)のチームメイトとしてプレーし始めるところから日本の女子サッカーは急ピッチで上昇カーブを描き始めます。今では日本の女子サッカー史の二枚看板となっている宮間あやさんですが、2人だけで初めて大舞台で並び立ったのは2006年のこと。その舞台は、スポンサーの小さなワガママから生まれたのでした

急遽オールスターゲームの主役になった宮間さん

2006年8月27日に国立競技場でなでしこリーグオールスターが開催されました。第一次なでしこブームの終了後に再び低迷していたなでしこリーグに冠スポンサーがついたからです。澤さんが奮闘する、あの北朝鮮女子代表戦をその企業の社長がテレビで見たことが、冠スポンサー決定に大きな影響を及ぼしました。

なでしこリーグオールスターに出場する選手のファン投票が行われ最高得票者は東軍が澤穂希さん、西軍が大谷未央さんとなりました。メンバー発表の記者会見には両選手が登壇し、なでしこリーグの優勝チームが載冠できる1億円のティアラが披露されました。

ところが、ここで、ちょっとした問題が生じます。

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