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女子サッカーの環境を良くしていくことは僕らの使命 憧れの対象になるなでしこリーグを目指したい 日本女子サッカーリーグ 専務理事 奥田泰久さん

2022プレナスなでしこリーグ1部はスフィーダ世田谷FCの初優勝で幕を閉じました。2部は静岡SSUボニータが優勝。3位の大和シルフィードと共に来シーズンは1部に昇格します。そして、2022プレナスなでしこリーグ2部入替戦を勝ち抜いた岡山湯郷Belleのなでしこリーグ2部残留が確定。ヴィアマテラスとFCふじざくら山梨が、なでしこリーグ2部への参入の権利を獲得しました

WEリーグがスタートし、なでしこリーグがどのようなリーグなのかが社会から問われたシーズンとなりました。そして、その答えは2022年9月に「なでしこリーグビジョン・ステートメント」で簡潔に発表されました。今回は一般社団法人日本女子サッカーリーグ 専務理事の奥田泰久さんに、2022年シーズンのなでしこリーグを振り返っていただきました。試合のみならず「なでしこリーグビジョン・ステートメント」策定の経緯、リーグ運営の裏側、退会することになった2つのクラブのこともお話しいただきました。

日本の女子サッカーが、これからどちらを向いて進んでいくのかを、なでしこリーグの一年間から、ぜひ探ってみてください。奥田さんは、危機感を漂わせながら、力強くチャレンジし続けていくことを宣言しています。

日本女子サッカーリーグ 専務理事 奥田泰久さん

強化に手応え、観客動員は大いなる反省

奥田なでしこリーグは「代表選手の輩出」「皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会で優勝」という目標を定めてきました。なでしこジャパン(日本女子代表)に小山史乃観選手(セレッソ大阪堺レディース)が選出されたことは嬉しかったです。U-20日本女子代表には5人の選手、U-17日本女子代表には9人の選手を送り出し世界と戦っていただくことができました。年代別代表選手の育成という、なでしこリーグに与えられた役割を果たすことができたと思います。

プロ選手とアマチュアの選手はサッカーとの関わり方が違うだけで、その違いでプレーのレベルが自動的に比例するわけではありません。アマチュアリーグのなでしこリーグから代表選手が生まれることで、なでしこリーグの価値を高めることにつながると思います。

今シーズンは、各チームに強化担当者を定め「強化担当者会議ミーティング」を新しく立ち上げ、効率的なカレンダーの検討をし、分析データを共有し、強化の取り組みに力を入れてきました。少しでも役に立って結果が出てきたのであれば、取り組みに間違えはなかったのだろうと考えています。

観客動員に関してはいかがですか?

奥田厳しいですね。コロナ禍は大前提としてありますが、他の競技を見れば、もっとお客様が入っています。各チームが限られたリソースの中で頑張ってくれたことは評価してほしいのですが、現実的には厳しい数字です。

観客数の増加は、選手の能力をさらに発揮することにつながると思います。応援してくれる人がいて、選手はいつも以上の力を出せるようになると思います。だから、僕らは集客しなければいけません。大いなる反省をして改善することが必要です。 

Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

集客支援の一つの方法としてコミュニケーションがあります。新しい取り組みをされた反応はいかがでしょうか?「ダイバーシティ」をキーワードにしたZ世代のグループを起用しましたね。

奥田強化の部分の取り組みだけでは世の中から支持を得られないので、プレー以外の切り口からも魅力を感じていただけるエンターテイメントの取り組みをしています。あらゆるチャレンジをして、これからも方向性が一緒の外部の企業や団体と一緒に取り組んでいきたいと思っています。

例えば、音楽に関しては、ご縁があって多様性を尊重して結成したグループを紹介してもらう機会を得ました。Z I L L I O N(ジリオン)(清水翔太さんが審査委員長を務めたソニーミュージック主催オーディション発の新世代エンターテインメントグループ)は昨年12月にプレデビューした男女8人組のダンスボーカルグループです。そのようなグループに2022プレナスなでしこリーグテーマソングとして曲を書き下ろしてもらいスタートを切りました。取り組みに共感できる仲間と出会えてありがたかったです。意味のある曲を試合のダイジェスト動画のB G Mに使用することができています。

提供:ソニーミュージック

「なでしこリーグ1部『素顔』の選手紹介企画」についてはいかがですか?

奥田選手のオフショット写真撮影は以前から取り組みたかったものです。WEリーグが誕生し、どうしても、なでしこリーグの注目は下がってしまいます。なでしこリーグの露出を高める必要があると考えていました。そこで選手個人を世の中により知らせていくためにオフショット写真撮影を行いました。一定のクオリティで写真を発表するため、全チームを同じフォトグラファーが撮影することにしました。この取り組みで「自分が主役」「このリーグを引っ張っていく」という選手の自覚を高めていく狙いもありました。

奥田このような撮影は、サッカー界から拒絶反応が生まれるのではないかと恐る恐るスタートしたのですが、結果は多くの方に喜んでいただけました。春に撮影したのですが、選手から「夏はどうするのですか?暑い夏にこの服の写真だと困ります」という声が多くあり、急遽、予算を捻出して夏にも撮影を行いました。選手に積極的に取り組んでもらえて大変嬉しく、ありがたかったです。

リーグ全体で前進していく機運作りに大きな効果があったのですね。

奥田リーグ事務局の運営は「リーグ戦の運営をできれば良い」という考えではありません。強化でもインフラ整備でもコミュニケーションでも、チームにメリットを感じていただけることをやっていきたいと考えています。チームとリーグ事務局がウイン・ウインでなければなりません。このオフショット写真はチームでも使用できるようにしています。最初に計画したことではないのですが、結果的に、セブンイレブンコンテンツプリントで「なでしこリーグオフショットブロマイドコレクション2022」として販売することにつながりました。

飛び立っていくセレッソ大阪堺レディース

奥田最終節に「祝 C大坂堺L WE参入 感謝」と「アンジュヴィオレの功績に敬意を」の2つの横断幕が出ました。なでしこリーグを温かな目で見ていただいていることを嬉しく思います。この懐の深さはなでしこリーグの特徴でもあります。セレッソ大阪堺レディースは良い意味で飛び立っていきます。自分達もいつかはと思っているチームがあると思います。WEリーグへの加入は、我々の役割の一つだと思っているのでリーグ事務局としても光栄だと思っています。

一方で、アンジュヴィオレ広島は、とても残念ですし、悲しい出来事です。最後はチームの意思を尊重しなければなりません。ただし、解散で所属していた選手が活躍できる場を失ってはいけませんので、次のステップを見つけられるようにサポートする必要があります。

地域での活動を積極的にされている2つのチームが、来シーズンは1部に昇格することになりました。こちらに関してはいかがでしょうか?

奥田とにかく監督、選手の皆さんが頑張ってくれました。2部の大和シルフィードは昨シーズンは1部のチームでしたが、大多和亮介さん(大和シルフィード代表取締役)の力は大きいと思います。ホーム最終節ではキッチンカーをたくさん呼び、地域と密着しながら、ここまでやって来られました。

日産スタジアムで開催された大和シルフィードのホームゲーム

奥田静岡SSUボニータは名称をボニータに戻し、静岡産業大学と連携して取り組んできました。自治体との連携も取れており、C E Oの三浦哲治さん、C O Oである北本章さんが力を発揮されて、このような結果になったと思います。夏にチームの中心選手である藤原加奈選手がノジマステラ神奈川相模原(WEリーグ所属チーム)に移籍して少し心配しましたが、最後まで勝ち続けましたね。

「なでしこリーグとは?」再定義したリーグビジョンとステートメント

なぜ、このタイミングに「なでしこリーグビジョン・ステートメント」は発表されたのでしょうか?

奥田今までは「なでしこvision(J F Aが2007年に策定、2015年に改訂)」をベースに、様々なことが進められてきました。WEリーグが誕生することになり、なでしこリーグに関わる皆さんが、今までと一緒なのか、または何かが変わるのか曖昧なところがあり、スッキリしない曇り空のような状況でした。もちろん、WEリーグが誕生してからも、なでしこリーグが「アマチュア女子サッカーリーグの最高峰」とはわかっているのですが「なでしこリーグとは?」と聞かれると、みなさんが説明をしにくくなっていたのです。ずっと僕の中で悩んでいたことでした。

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