WE Love 女子サッカーマガジン

円陣ダッシュから試合終了まで「走る・闘う」 ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの舵取り岸川奈津希選手

中盤の底でのプレーを得意とする岸川奈津希選手はWEリーグ開幕前の2020年にドイツから帰国しジェフユナイテッド市原・千葉レディースの一員となりました。昨シーズンは中心選手として全20試合に出場する活躍を見せ、対戦相手に大きな存在感を見せつけました。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースの2022−23シーズンは「タイトルを狙うシーズン」です。3強の牙城を崩す対抗馬の一番手です。

開幕戦ではサンフレッチェ広島レジーナを相手に幸先よく先制し前半から主導権を握ったものの、猿澤真治監督が「勝てそうな状況からの逆転負け」と表現する痛い黒星となりました。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは、どのように今シーズンの開幕を迎えたのか、そして、岸川選手が考えるジェフユナイテッド市原・千葉レディースの魅力とは何か、円陣ダッシュはどのように受け継がれているのか、リーグ開幕直前にお話をお聞きしました。


もっと試合をコントロールする必要がある

今シーズンのジェフユナイテッド市原・千葉レディースは昨シーズンよりも両サイドが高い位置にポジションをとって、得点を奪うサッカーに変わってきているように感じますがいかがですか?

岸川ウイングバックのポジションが重要です。前からはめにいこうとしても、前にスペースができてしまうと押し込まれてしまいます。相手が同じようなシステムの場合に、ウイングバックの位置を逆に高くとられてしまうとこちらが苦しくなるので、いかにウイングバックを前に押し出し、スリーバックの両サイドも押し出せるかが重要になります。

2022−23 WEリーグカップでは第3節のノジマステラ神奈川相模原戦での蓮輪真琴選手の得点が強く印象に残りました。右サイドのタッチライン側高い位置で奪ったボールを鴨川実歩選手が素早く中央に入れると、いち早く左サイドから走り込んだ蓮輪選手がシュートを放ち見事に得点しました。今シーズンのジェフユナイテッド市原・千葉レディースの狙いを象徴するような得点に見えましたがいかがですか?

岸川高い位置でボールを奪うと攻撃に移行しやすいです。相手ゴールに近いのでシュートチャンスが増えます。得点するために効果的だと思います。もっと意図的に、このようなプレーを増やしていくことが大事だと思います。

岸川選手はチームの舵取り役割を担う攻守に重要なポジションですが、今シーズンを迎えるにあたりプレーを変えたり、何かプラスオンしようとしたり考えたことはありますか?

もっと試合をコントロールする必要があると考えていました。良いときは、みんなが前を向いて仕掛けられます。ダイレクトプレーをできる試合になります。でも、全部が、そのような自分達の時間帯にはなりません。押し込まれたときのやり方、相手に引かれたときのボールの動かし方が、昨シーズンは課題となりました。ですから、今シーズンは自分のところでゲーム全体をコントロールできるプレーをたくさん出していきたいです。

攻撃の全てを縦に速くすれば良いわけではありません。チーム全体が前に急ぎすぎていると感じたら、自分のところで時間を作ったり、狭い局面での攻撃が続きすぎたらサイドを変えたりします。スタンドで見ている人は、スピーディーな前へ前へという攻撃が繰り返される方が面白いと思うのですが、それが続きすぎるとプレー選択に行き詰まることがあるので、プレーするサイドやスピードに変化をつけたいと思っています。

最終ラインの選手とゆっくりとパス交換しながら、相手の動きを見て突然に速い縦パスを刺すプレーは名人芸ですね。

岸川そういうプレーを見ていただきたいです。ジェフユナイテッド市原・千葉レディースは2人のシャドーのポジショニングが的確でタイミング良くスペースに入ってくれるのでパスを出しやすいです。昨シーズンとメンバーも戦い方も大きく変えていませんから、どのような動きをするかをお互いに理解しています。パスの出し手と受け手のタイミングも注目してほしいです。

誰が出場しても「ジェフらしいサッカー」をできるようにしたい 

今シーズンは選手の皆さんがタイトル獲得を誓うシーズンとなりましたね。

岸川昨年に身につけたことと、今シーズンに積み上げたことをコンスタントに発揮できればタイトル獲得に近づくと感じます。それに加えて、対戦相手から警戒されているところは昨シーズンとは違う印象です。

キャプテンの林香奈絵選手とエースストライカーの千葉玲海菜選手を膝前十字靱帯の怪我で欠くリーグ開幕となりましたね。

岸川プレーできる選手で「穴を埋める」というよりも、さらにパワーアップしたチームにしたいです。誰が出場しても「ジェフらしいサッカー」をできるようにしたいと思ってトレーニングしてきました。それができればチームとして大きく成長できると思います。

円陣ダッシュは「すごく気合が入ります。」

岸川勝つために皆が戦って最後まで走るのがジェフユナイテッド市原・千葉レディースの魅力だと思います。伝統の「走る・闘う」というコンセプトがあるので、監督が、それを強調し、練習でも良く走ります。選手はそれを理解して体現していると思います。

試合開始前にピッチで組んだ円陣を解いて選手全員が走って散るところを見ると、何度スタジアムに来ても「走る・闘う」を感じるのですが、あの瞬間は気持ちが入るのか、当たり前のこととして意識せずに自然にされているのかどちらなのでしょうか?

岸川このような円陣の方法は、このチームが初めてだったので、私は、すごく気合が入ります。ダッシュすればするほど、試合に向けて闘争心が高まる気がします。加入直後に「円陣したら走るんだよね?」とチームメイトに質問しました。他の加入選手も「これ、走るんですよね?」と聞いていたので「ジェフは円陣で走る」というのは選手の間で浸透している気がします(笑)。

あらかじめ浸透しているけれど、皆さん、一応は確認するのですね?

岸川確認しますね(笑)。

試合で上手くいかなかったときに「走れなかったかもしれない」と走力を振り返るようなことはありますか?

岸川走力に課題を感じて試合を振り返ることはないですね。

そもそも走り負けないですものね。

岸川あまり走り負けたことがないです(笑)。

大滝麻未選手、岸川奈津希選手、鶴見綾香選手、鴨川実歩選手

大滝麻未選手には、早く、お子さんの前で得点してほしい 

岸川みんなのチームワークが良く明るいチームです。特に、清水栞選手と今田紗良選手は、いつも皆を笑顔にしてくれます。笑顔は大事ですね。オフ明けに走るトレーニングメニューが多く、普通にやるときつい顔になってしまうのですが、お互いに声をかけて笑顔にしています。

フクダ電子アリーナで行われた2022−23 WEリーグカップの2試合で「大滝麻未選手に得点してほしい」という気持ちを伝えるようなパスが多かったように見えました。そんな思いをプレーで伝えるようなところが、このチームにはあるのではないでしょうか。

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