WE Love 女子サッカーマガジン

激戦を制して浦和が初代WEリーグカップ女王に 話題となったダイナミックプライシング、音楽演出を振り返る【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】

苦しみ抜いた0―3から分間で3得点し追いついた三菱重工浦和レッズレディースがP K戦を制し、2022−23 WEリーグカップに優勝。カップ戦の初代女王に就きました。味の素フィールド西が丘のメインスタンド、バクスタンドの多くは埋まり、最後まで熱気に包まれました。

表彰式ではWEリーグの初代チェア・岡島喜久子さんと2代目WEリーグチェアに髙田春奈さんが、共に白いジャケットを着用してピッチに登場。三菱重工浦和レッズレディースの選手たちは、高田チェアから受け取った真新しいカップを夜空に掲げました。

初代チェア・岡島喜久子さんの仕事はWEリーグ初のリーグ主催試合(これまでは各クラブ主催)で高田チェアに引き継がれ、WEリーグは新しい時代に入りました。

リーグ主催試合ならではの新たな挑戦

筆者は、この試合をバックスタンドで観戦しました。理事の座席はメインスタンドですが、高田チェアと共に選出された理事のうち、大山加奈さん、村松邦子さん、小林美由紀理事をメインスタンド以外の通路でお見かけしました。おそらく、どのようなファン・サポーターが、どのようにスタジアムで時間を過ごしているのか、ご自分の目でご確認されていたものと思います。

この試合は「EMPOWERMENT MATCH」と銘打たれ、リーグ主催試合ならではの様々な取り組み・実験が行われていました。その中でも、特に注目を集めたのはダイナミックプライシングと音楽演出です。

ダイナミックプライシングを導入するも決勝戦はグループステージの3倍の入場者数

ダイナミックプライシングとは、ホテルの宿泊価格や航空券等で取り入れられている商品やサービスの需要に応じて価格を変動させる仕組みのことです。残席が少なくなると価格は高騰し、売れ行きが悪いと価格は下がり元の価格を割り込むこともあります。例えば、プロに転向した羽生結弦さんが初の単独アイスショー『プロローグ』を開催することになった例があります。2022年12月2日、3日に単独アイスショーの会場となる青森県八戸市のホテルはファンによる部屋の奪い合い状態に陥り、開催を発表した記者会見の翌日には空室がほとんどなくなりました。あるホテルでは通常5千500円程度のセミダブルルームの宿泊費が9万9千300円にまで高騰しています。ここまで高騰するのは極端な悪い例ですが、ダイナミックプライシングは、すでにJリーグでも多数導入されており、当たり前のこととなっています。

特に名古屋グランパスの事例は成功例として知られています。2018年シーズンの導入当初は、ファン・サポーターに戸惑いや厳しい声がありましたが、得られた収益をファン・サポーターに還元していくことで、批判の声は無くなっていきました。また、ファン・サポーターもダイナミックプライシングの上手な使い方に慣れていきました。

2022−23 WEリーグカップ決勝戦へのダイナミックプライシング導入についても、やはり、ネット上には批判の声が多く書き込まれていました。バックスタンドのチケットは完売。当初は1千900円だったゴール裏席は3千800円まで高騰しました。

しかし、入場者数は3千546人。「大入り満員」とまではいきませんでしたが、ここまでのグループステージの入場者数が2万6千143人であり、1試合あたりの平均入場者数が1千5人ということを考えると決勝戦は3倍以上のファン・サポーターを集めており健闘したといえるのではないでしょうか。価格の安いゴール裏席よりも、価格の高いメインスタンドが埋まって見えたのは、この試合のスタンド風景の特徴です。

過去の味の素フィールド西が丘での入場者数の例を見ると、なでしこジャパン(日本女子代表)が4位の好成績を残した北京オリンピック2008直後に開催された、なでしこリーグオールスター2008でも入場者数は5千485人でした。この試合の入場者数は、それに届きませんでしたが、ダイナミックプライシングで価格が上がっており、通常よりも多くの収益を確保できたと思われますので、WEリーグは、チケッティングでは、まずまずの感触を掴めたのではないでしょうか。

ただ、今回は、キャパシティの小さなスタジアムで決勝戦を開催、しかも人気カードだったから成立したとも考えられます。

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