WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグを多国籍・多様性に溢れる環境にするために必要なことは? 海外で活躍する選手・指導者の経験談から考える 【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】後篇 

WEリーグは多様性を推進していますが、国籍や人種を問わず様々な選手にプレー環境を提供する多様性については、残念ながら思ったように進んでいません。1年目のWEリーグの開幕に合わせ、アメリカ、ドイツ、オーストラリア等から外国籍選手が来日。選手登録しましたが、2年目のシーズンも契約を継続した選手はちふれASエルフェン埼玉のサリナ・ボールデン選手だけでした。 

WEリーグを多国籍・多様性に溢れる環境にするために必要なことは? 海外で活躍する選手・指導者の経験談から考える 【石井和裕の #女子サカマガ PKど真ん中】前篇 

前篇では主に、WEリーグ理事 小林美由紀さんの視点、海外で活躍した指導者の視点から「なぜWEリーグでは外国籍選手の受け入れが進まないのか」その理由を考えてみました。後半では、主に選手の視点から「WEリーグで外国籍選手の受け入れを拡大する方法」について考えてみます。 

オーストリアとドイツでプレーした泊志穂さん

AC長野パルセイロ・レディースでプレーしていた泊志穂さんは、1年目のWEリーグを終えて、現役生活に幕を下ろしました。2015年シーズンに浦和レッズレディース(現・三菱重工浦和レッズレディース)から、なでしこリーグ2部に昇格したAC長野パルセイロ・レディースに移籍。ノジマステラ神奈川相模原戦でダブルハットトリックの大活躍。一躍脚光を浴び、アメリカで開催された2017トーナメント・オブ・ネーションズに出場するなでしこジャパン(日本女子代表)に召集。2試合に出場しました。 

同年に、オーストリア・女子ブンデスリーガ2部に属するFCヴァッカー・インスブルックに移籍。優勝に貢献し1部へ昇格。さらに翌年にはドイツ北部の BVクロッペンブルクに移籍し、オーストリアとドイツの2カ国でプレーしました。 

「アメリカの大会に出場して『外国の選手とプレーするのは楽しい』と思うようになりました。海外でやってみたい気持ちになりました。(海外でのプレーを経験すると)もっと成長できるかもしれないと思ったのです。」 

オーストリアの女子サッカー選手の多くはシェアハウスで生活しています。泊さんも当初はシェアハウスで生活することを希望していましたが、渡航が急に決まり、まだドイツ語も英語も十分にマスターしていなかったのでシェアハウスに入居することができず、アパートメントホテルで一人暮らしをすることになりました。そして、語学上達のために語学学校に通うことになりました。 

言葉の壁があったがチームメイトの歓迎に助けられる 

WEリーグ理事の小林美由紀さんによると1年目のWEリーグの外国籍選手の中には「監督からの指示のコミュニケーションがとりにくかった」という声があるそうです。立場を逆にして、オーストリアに渡った泊さんにも、同じような不安がありました。しかし、チームメイトは優しく、グーグル翻訳を使って話しかけたり、積極的にコミュニケーションをとってくれて助かったのだそうです。 

「若い選手たちをはじめ、みんなの歓迎ムードが伝わってきました。だから、孤立することはほとんどありませんでした。不安を抱えて海外に行って、もし、自分が喋れない上にチームメイトから話しかけてもらえない状態だったら、きっとトレーニングに行くのも嫌になります。毎日が楽しくないと、せっかくの海外挑戦が続かないですね。」 

日本は島国で、長く外国との交流が少なかったせいか、外国人とのコミュニケーションを苦手とする人が多い印象です。仲の良い数人だけで日常的に付き合う小さな集団を作ってしまう閉鎖的なコミュニティの話もよく聞きます。一方、欧州各国は陸続き。古くから国境を跨いだ人的交流が盛んだということもありコミュニケーションの環境がオープン。泊さんはチームメイトに誘われて、ピッチ外で驚きの体験をしました。 

「『ハイキングに行こう』と誘われたことがあります。私は散歩程度だと思って待ち合わせしたのですが、チームメイトは命綱などの装具とヘルメットを持ってきました。『嘘でしょ!?』と思いました。オーストリアはアクティビティが盛んで、チームメイトは、日本のサッカー選手が怪我を恐れてやらないようなことも楽しんでいます。いろいろなところに連れて行ってもらいましたね。男子チームの試合をみんなで見にいくこともあります。土日に自分の試合がないときはスポーツバーに誘われることが多かったですね。ピッチ外で仲良くなることで、サッカーの話をしやすくなりました。」   

泊さんはサッカーを通して、現地の文化や暮らしぶりを感じ 「サッカーも、遊びも、仕事も全力」のカルチャーを素敵だと思いました。異国で一人暮らしをしながら「自分の世界が広がった」と感じたそうです。 

インスブルックの街並み

言語の難しいポーランドで大活躍する圓乘由里奈選手 

ポーランド女子サッカーリーグのUKS SMSウッチをリーグ優勝に導く活躍をした圓乘由里奈選手も、言葉の壁を乗り越えてプレーしている日本人選手の一人です。そこには、やはり、監督やチームメイトの気遣いがあるといいます。ポーランドの公用語はポーランド語。世界にある言語の中で「特に習得が難しい言語」といわれています。

(残り 1585文字/全文: 3855文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ