WE Love 女子サッカーマガジン

私は虎になる!チャレンジ精神でここに来ました ちふれASエルフェン埼玉 田邊友恵監督

日ノ本学園高校での指導で注目された田邊友恵監督は2020年シーズンからノジマステラ神奈川相模原のアカデミーダイレクターおよびドゥーエ(U-18)監督に就任。育成年代の優れた指導者として女子サッカー界で広く知られてきました。多くの方は田邊監督が、将来、ノジマステラ神奈川相模原でトップチームの監督になる未来を思い描いていたと思います。筆者は、6月に田邊監督がちふれASエルフェン埼玉の新監督に就任したニュースを聞いて驚きました。ですから、まずは、なぜ、この進路を選んだのかをお聞きしたいと思いました。

そして、もう一つ聞きたかったことがあります。ちふれASエルフェン埼玉で目指すサッカーの方向性です。この一年で、日本の女子サッカーは大きく変わる兆しを見せています。なぜなら外的要因による環境の変化に直面しているからです。東京2020で振るわなかったなでしこジャパン(日本女子代表)、急速に進化する世界の技術と戦術、観客増で勢いを増す欧州各国の国内リーグと国際試合、Jリーグで指導経験のある監督のWEリーグ参入……ちふれASエルフェン埼玉は、女子サッカー激動の時代にどこへ向かっていくのでしょう。

私の目指してきたことが今の女子サッカーの流れに合っている 

FIFAU-20女子ワールドカップ コスタリカ2022は縦への仕掛けが速い大会でした。U-20日本女子代表は現代女子サッカーの潮流に乗り遅れることなく、アグレッシブな守備を持ち味としました。池田太監督のチームづくりのコンセプトは「奪う」。ショートパスをたくさんつなぐ伝統的な日本の女子サッカーとは少し違う、スピーディーで激しいサッカーが準優勝という結果に結びつきました。育成年代の指導が長かった田邊監督に、池田太監督が率いたU-20日本女子代表について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。

田邊「ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ(U-18)を指導しているときに私の掲げたテーマは『奪う』でした。だから、池田太監督が就任したとき、選手には『なでしこジャパンが真似してきたぞ』と言いました(笑)。時代はそこにあるから『奪い切れる選手にならないといけない』と選手に言ってきました。高い位置でボールを奪い切れば『その時点でビルドアップ完了』だからです。(池田太監督の発言や結果は)ありがたいですね。私の目指してきたことが、今の女子サッカーの流れに合っているという証になると思うので。

ちふれASエルフェン埼玉には『The ELFEN Way』があります。『The ELFEN Way』は、この先クラブがずっと存続し、大きく発展していく中で目指すべき『あり方』です。この中にも『全員で主体性を持って攻守に渡って奪い続ける』という表現があるので、『奪う』はクラブの考えとも一致します。

目標は「昨日の自分たちを超える」

田邊 『奪う』ためにはしっかりとした守備の組織が必要です。202223 WEリーグカップの開幕戦までのトレーニングでは守備の組織を作ることに重点を置いていました。開幕のアルビレックス新潟レディース戦は87分まで守り切れた。次のステップでは、ここから『どのように奪いに行けるか』『奪った状態からどのように得点するか』に進んでいけると思います。」

ちふれASエルフェン埼玉は一年目のWEリーグを最下位で終えました。つまり、今シーズンは一番下からのスタートです。

「昨日の自分たちを超える」を目標にしています。得点も失点も勝ちの数も、昨シーズンを全て越えれば上に行けると思っています。得点を増やしたいです。得点が入れば、試合を見に来てくださった方に喜んでいただけると思います。 少しずつでも着実に歩みを進めていきたいと思います。」

そして、爽やかに、こう言いました。

「上のチームに噛み付けるように頑張りたいです。私は虎になります。」

選手と価値観を共有 

田邊 202223 WEリーグカップは、トレーニングだけでは気付けない課題を得られる大会です。どのチームもリーグに向けてチームを作っているであろうとはいえ、全試合が中継されますし、観客も入ります。良い意味でプレッシャーのある試合を経験できています。やってきたことを選手が出そうとしてくれているので、ここまで着実に準備を進められた実感はあります。もちろん、物足りないところもあります。WEリーグ開幕に向けて選手の意識が変わることが大切です。

私自身は、いきなりガラリと大きくチームを変えることを好んでいません。これまで、どのようにやってきたのか、その考えを知った上で「でも、こうした方がいいのでは?」という進め方を好みます。良いものは良い、でも、得点と失点が最下位だったので、少し違うやり方でゴールを目指した方が良いのでは?……というアプローチをしています。(パスをつなぐ技術が高い選手は)後ろに下げるパスや安全なプレーを選びがちなのですが、もう少しゴールを意識したプレーをしてもらうトレーニングを取り入れています。選手選考については、年齢に関係なく、横一線からのスタートにし、より良いプレーをする選手が出てきてくれるようなアプローチを意識しています。

一年目の良いところを踏襲しながら、攻撃の選択肢や方向性を修正していくようなイメージでしょうか?

田邊 現代サッカーはダイレクトプレー(ボールを奪って相手ゴール前にダイレクトに向かっていくようなプレー)が主流です。自陣でボールを動かそうとすることが、逆に(失点のリスクを抱える)危ない状況になってしまっている面もあります。より、プレッシャーが厳しいエリアで前にボールを運べるのか……選手と価値観を共有しつつ、いろいろなやり方を理解してもらっています。

「新たな自分づくり」に新しい環境が必要だった

田邊 アカデミー年代の指導では、直接的な言葉で伝えた方が選手の心に響くことがあります。でも、トップチームの選手には、より個人の価値観に配慮した接し方をする必要があり、両者にはコミュニケーションの違いがあります。

(残り 2566文字/全文: 5040文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック
« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ