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日本代表はコスタリカ・サッカーの「のらりくらり」に要注意!コスタリカ女子1部リーグで活躍する桝田花蓮選手(クラブ・スポーツ・エレディアーノFF)が現地からどこよりも早く伝える最新情報

ちふれASエルフェン埼玉マリ、早稲田大学ア式蹴球部女子でプレーしていた桝田花蓮選手がトライアウトに参加するために、日本から地球のほぼ裏側に位置する中米のコスタリカに渡ったのは2021年の夏のことでした。そこで手応えを感じた桝田選手は卒業目前だった大学中退を決意。卒業することなくクラブ・スポーツ・エレディアーノFFに加入しました。

注目が集まる中米の国・コスタリカ

近年は、日本サッカーとコスタリカ・サッカーの間に、(大会の会場となったものの)あまり深い縁はありませんでした。最近の対戦はキリンチャレンジカップ2017。熊本県民総合運動公園陸上競技場で行われ3−0でなでしこジャパン(日本女子代表)が勝利しています。

2022年夏、急にコスタリカは注目の国となりました。8月10日からFIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022が開幕します。そして、11月21日にはFIFAワールドカップ カタール2022が開幕。日本代表がコスタリカ代表とグループステージで同組になりました。今や、コスタリカは日本のサッカー関係者、ファン・サポーターの気になる国です。

2022年7月12日に、FIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022を戦うU-20日本女子代表のメンバーが発表されました。池田太監督はメンバーについて「自分のプレーを100%発揮し、仲間の力も引き出せる選手たち」と評しました。

池田太監督(右)

桝田選手はコスタリカでプロ選手として活躍中

さて、選手たちは、どのような環境下で戦うのでしょうか。今回は、一足早くコスタリカに渡り、日本とコスタリカの架け橋の存在となっている桝田選手の挑戦とコスタリカ・サッカーについて、最新の現地情報をお届けします。現地でプレーしているプロ選手だけにしか話せないレアなお話です。FIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022とFIFA ワールドカップ カタール2022に役立つ事前情報になると思います。

スペイン語圏の国でプレーしたいと思っていた

桝田コスタリカは小さな国です。自然が豊かで、エコ・ツーリズムが国の財政を支えています。国民は自然が豊かなことに誇りを持って大事にしています。首都のサン・ホセ以外の街には高いビルがありません。ウチの近くは、どこへ行っても沖縄みたいなイメージです。

桝田選手が生活するコスタリカの街並み

桝田以前から、大学を卒業したら海外でプレーしようと思っていました。自分の最終目標は海外で指導者になることです。指導者への道につながる海外でのプレーをしたいと思っていました。海外でのプレー経験がある卒業生に話を聞いたりして、移籍のルートを探していました。最初はスペインに興味がありました。父の知人からたどり、コスタリカに住む元Jリーガーの代理人(ブラジル人)を紹介してもらい、コスタリカの女子チームを紹介してもらうことができました。

最初はコスタリカのことをほとんど知らなかったです。男子のサッカー選手もケイラー・ナバス選手(パリ・サンジェルマン)くらいしか知りませんでした。でも、FIFAワールドカップでベスト8に進出したことがある国だし、中南米では豊かな国で治安も良いと聞いて興味を持ちました。女子サッカーのレベルが特に高いわけではないと聞いていましたが、公用語がスペイン語だというのが移籍の大きな理由になりました。

コスタリカは野鳥の宝庫としても有名

お客さんが盛り上がるコスタリカの女子サッカー

桝田クラブ・スポーツ・エレディアーノFFでプロ契約してプレーしています。自分が目標としていたことの一つがコスタリカで実現しました。コスタリカのスタジアムは、男女に関係なく、とにかく、お客さんの盛り上がりや野次がすごいです。サッカーは一番人気のスポーツです。本当に応援しているのかわからないくらい(笑)、スタンドから一つ一つのプレーに一喜一憂の反応があって面白いです。

プレーの展開はシンプルで、ゴール前のシーンが多いです。だから、スリリングなシーンが多く、お客さんが盛り上がるのだと思います。日本では2年くらい、有観客の試合を経験していませんでした。そもそも、私にはお客さんの前で試合をすること自体が新鮮な体験だったのですが、それに加えてスタンドが騒がしく「多分、あれは野次だろうな」という声が容赦なくて、最初は圧倒されましたね。

日本の女子サッカー会場だと、静かなときに大きな声で汚い野次を飛ばす人の声が響きますが……。

桝田あれが、みんなって感じです(笑)。

あれがみんな!?(笑)

桝田ミスをすると野次を飛ばされて嫌だなって思うときもあるのですが、良いプレーには同じくらいの熱量で反応してくれるのでやりがいがあります。コスタリカの人は、目の前で起きたことに「悪いことは悪い」「良いことは良い」と、純粋にリアクションする印象です。だから楽しいです。こういう反応が、モチベーションになります。日本では経験したことがないことですね。

私は海外のサッカーをテレビで見るのが好きなのですが、日本と海外では観客の試合の見方が違うと思っていました。そういう雰囲気を実際に体験したいというのも海外でプレーしたい理由の一つでした。来て良かったと思います。

桝田花蓮選手 提供:桝田花蓮選手

予想以上に面白いコスタリカでの生活

桝田みんな人当たりが良くて、挨拶してくれます。サッカーが生活に根付いています。私は3回くらい、試合の翌日に「テレビで見たよ」と街で声をかけられました。びっくりしました。

女子リーグの試合がテレビで中継されているのですね。

桝田全試合ではないのですが中継されます。男女、年齢を問わず、コスタリカでは「みんながサッカーを好きなんだ」と、伝わってきます。コスタリカに来たことで「スペインだけではなく、色々な国に行ってみたい」「こんなことをやってみたい」と、興味の幅が広がったと思います。現地のお国柄を感じるのが、予想以上に面白いと感じています。行かないとわからないことがありますね。行ってみることが大事だと思うようになりました。

サッカーをやっていなかったら、語学留学とかはできたと思いますが、その国でお金を稼ぐことは難しかったと思います。コスタリカに来るまでは不安も抱いていましたが、意外と周りの人が助けてくれます。今の家も代理人が見つけてくれました。一人で住むには広いアパートです。自分の予想の範囲で難しいと思って諦めてしまうのは勿体無いですね。

コスタリカのビーチ 

「試合がよく止まる」がイライラしてはならない

コスタリカのサッカーはいかがですか?

桝田コスタリカ・サッカーの特徴は男女共通で「試合がよく止まる」ところです。ファールのアピールがすごいです。日本だと女子選手はアピールすることが少ないし、ピッチで痛がることもあまりありません。日本では痛がっている方が変な印象があります。

でも、コスタリカの女子選手は、本当は痛くないのにアピールが多くて試合がすぐに止まります。そして、プレー再開後の切り替えが早いです。ケロッとしてプレーが再開されます。プレーのリズムが出てきたところで倒れて痛がって、試合が1分くらい止まったりするので、最初の頃は集中力を保ちづらかったです。男子も同じですね。試合が止まってペースが乱れることも含めて試合です。

カタールで日本代表が対戦するときは注意しなければなりませんね。

桝田ペースを乱されると思います。コスタリカの人は怒るし文句も言います。

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