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EAFF E―1サッカー選手権2022決勝大会開幕へ チャイニーズ・タイペイ女子代表と共に挑戦して得た貴重な経験 大友麻衣子さん(元チャイニーズ・タイペイ女子代表ゴールキーパーコーチ)

いよいよ来週にEAFF E―1サッカー選手権2022決勝大会が開催されます。開幕戦は7月19日(火)。女子は全試合がカシマスタジアムで開催されます。東アジアのライバル中国女子代表、韓国女子代表、そしてチャイニーズ・タイペイ女子代表がなでしこジャパン(日本女子代表)と対戦。4チームで優勝を争います。

#女子サカマガ は、チャイニーズ・タイペイ女子代表に注目しました。1970年代から80年代にかけてアジア最強を誇りAFC女子アジアカップ三連覇を達成したチャイニーズ・タイペイ女子代表ですが、近年は低迷が続いていました。そんなチャイニーズ・タイペイ女子代表が14年ぶりにAFC女子アジアカップインド2022予選を突破し本大会に出場。本大会ではノックアウトステージに進出しました。大会上位チームに与えられるFIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023の出場権獲得はなりませんでしたが、まだ大陸間プレーオフのチャンスが残されています。出場10チームの中から3チームが出場権を得ることができるため、EAFF E―1サッカー選手権2022は、その準備のための大切な試合となります。

台湾の女子サッカーは上昇気流に乗って成長中

チャイニーズ・タイペイ女子代表14年ぶりの大躍進の影の立役者が大友麻衣子さんです。現役時代はアルビレックス新潟レディースのゴールキーパーとして活躍。2019年から2022年3月31日まで、日本サッカー協会からJFA公認指導者として派遣され、チャイニーズ・タイペイ女子代表のゴールキーパーコーチを務めました。チャイニーズ・タイペイ女子代表には日本のチームでプレー経験のあるゴールキーパーのミノ選手(2019年〜2021年シーズン:FCふじざくら山梨)、チェン・スーユー(程思瑜)選手(千葉L)が選出されています。

大友さんは現在、新潟医療福祉大学女子サッカー部のゴールキーパーコーチ。同じチームには、監督として元なでしこジャパンGKコーチの前田信弘さん、コーチとしてアルビレックス新潟レディースで活躍した大石沙弥香さん。2022北信越女子サッカーリーグを戦っています。

今回は、大友さんにチャイニーズ・タイペイ女子代表と台湾の女子サッカーについて、そしてコーチとして海外で挑戦してきたこれまでについて教えていただきました。

大友麻衣子さん

越後和男監督、豊田奈夕葉コーチとチャイニーズ・タイペイ女子代表を指導

大友台湾の木蘭(ムーラン)サッカーリーグは、今年から1チーム増えて7チームになりました。競技人口を増やして底上げしたいという関係者の思いは強いと思います。

台中藍鯨(ブルーホエール)の田中麻帆選手が得点王に輝き、高雄陽信(ヤンシン)銀行女子足球隊の若林美里選手が最優秀選手賞を受賞しました。日本人選手が大活躍ですね。

大友台湾では「日本人選手は上手い」という定評があります、若林さんや田中さんが参加することが決まると、台湾に到着する前から盛り上がっていましたね。一緒にプレーしたいから移籍するという選手までいました。

大友さんはチャイニーズ・タイペイ女子代表のゴールキーパーコーチをされていましたね。

大友当時の監督はJリーグでも活躍した越後和男さん。当初は日本人2人の体制で指導していました。2020年にFIFA女子ワールドカップ予選(AFC女子アジアカップインド2022)を目前にして、アシスタントコーチに日テレ・ベレーザで活躍した豊田奈夕葉さんも加わりました。

それまでは台湾人のアシスタントコーチもいたのですが、他に本業の仕事をお持ちの人でした。長期の代表合宿になると仕事を休めない事情もあり、何人かアシスタントコーチが代わっていたのです。

大友麻衣子さん(左)

長期の合宿をするとサッカー協会はかなりの負担をすることになると思いますが、それを実施するくらいの意気込みだったのでしょうか?

大友2月のFIFA女子ワールドカップ予選(AFC女子アジアカップインド2022)では、本大会への出場枠が5(+大陸間プレーオフ出場2)に増えて2度とないチャンスという認識で強化に力を入れていました。この予選で出場権獲得の目標は叶いませんでしたが、まだ大陸間プレーオフのチャンスが残されています。

代表合宿に参加者6名!?日本とのギャップに苦しんだ台湾での指導のスタート

台湾に着任されて、日本とのギャップに苦しんだことはありましたか?

大友驚くことはたくさんありました(笑)。代表合宿に招集した選手のほとんどが仕事で参加できないこともありました。集まってくれたのは6名。「仕事を辞めてまでして代表合宿に行きたい」とはなかなかならない環境もあります。そこで、その後は学生中心の代表メンバーとなりました。

サッカーをしながら、安定した収入を得る環境が、今の台湾では、なかなか整っていないのですね。

大友木蘭(ムーラン)サッカーリーグも大学生選手が中心になっています。代表合宿に招集する期間の報酬をサッカー協会が支払うようになったのですが、仕事を辞めて代表合宿に参加すると、招集期間が終われば無給になってしまいます。決断が難しいですね。

サッカー協会から選手への配慮をしていただいているものの、女子サッカー界全体の環境整備が十分とはいえないのですね。

大友最初は越後監督も困ってしまい「来られる選手は来てください」とオーダーしたところ、通訳への説明が悪かったのか、プレー経験の浅い選手まで代表合宿に来てしまいました(笑)。

言葉の問題の苦労もあったのですね。実際に代表に集まっていただいた選手の取り組みはいかがでしたか?

大友本当にサッカーを好きな選手が多いです。明るく、一所懸命に取り組んでくれました。確かに選手の経済的な環境は良くありません。しかし、サッカー協会が用意した代表合宿における衣食住の環境は整っていて、合宿に参加すると普段の生活よりも居心地が良いくらいだったかもしれません。ただ、競技人口が少ないので代表選手の入れ替わりは少なかったです。それゆえに「私は絶対に選ばれたい」というよりも「私は普通にプレーしていれば選ばれる」という感覚の選手が多かったかもしれません。選手の向上心や競争心を高めるのに苦労しました。これから、台湾全体の競技人口が増えれば、競争が激しくなっていくので、そうしたマインドも変わっていくのではないかと期待しています。

大友麻衣子さん(右)とチェン・スーユー(程思瑜)選手 提供:大友麻衣子さん

大きく成長したチェン・スーユー(程思瑜)選手(千葉L)

ジェフユナイテッド市原・千葉レディースでプレーしているチェン・スーユー(程思瑜)選手は、代表チームの中でどのような存在でしたか?

大友彼女は若い頃からチャイニーズ・タイペイ女子代表に呼ばれているのですが、ずっと二番手の存在でした。FCふじざくら山梨でプレーしていたミノ選手がレギュラーポジションでした。チェン・スーユー選手は、私との出会いで日本に興味を持ってくれました。「日本に行けば、ゴールキーパーコーチの指導を受けて、良い環境で練習できるのですか?」と質問されました。日本の環境を説明すると「日本でチャレンジしたい」と決意を固めてくれました。嬉しい出来事でした。チェン・スーユー選手は岡山湯郷Belleへ移籍、その後、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースへ移籍しました。日本でプレーするようになって、チームメイトからチェン・スーユー選手への信頼感が大きくなった気がします。

台湾には、日本のチームに移籍したい選手がたくさんいます。でも、技術レベルがあと一歩で、移籍はそう簡単には決まりません。それなのにチェン・スーユー選手は日本に移籍してプレーしているので、チームメイトから一目置かれているところがあります。「私もプロリーグでプレーしたことないのに、WEリーグでプレーするなんてすごいじゃん」って、私もよく言っていました(笑)。

団体行動に対する厳しい制限を乗り越えて得た手応え

徐々に指導の手応えを感じていましたか?

大友時間を経て、選手とコミュニケーションが取れるようになりました。選手たちも監督の考えを理解してくれました。ただ、強いチームと対戦することなく2022年にFIFA女子ワールドカップ予選(AFC女子アジアカップインド2022)を迎えたので準備不足の感はありましたね。でも、日本でプレー経験のある選手が大会の重要性を語ってくれたりして、大きな力を与え、チームが成長しました。海外でプレーする選手が増えたら、もっと台湾の女子サッカーは良くなると思います。


なでしこジャパン(日本女子代表)も、なかなか欧米の強豪チームと対戦できないままに東京2020大会本番を迎えてしまいました。日本も政府がコロナ禍の厳しい感染対策を行ったために行動制限があり海外で強化試合をする機会が少なかったですが、台湾の場合はさらに厳しい感染対策が行われていましたね。 

大友政府から団体行動に対する厳しい制限があったのでトレーニングができず調整が難しかったですね。でも、強化合宿を再開できるようになり、同じトレーニングを繰り返し指導し、選手の身体が自然と動くところが見えたときに手応えを感じました。予選に向けたスタートを切れたのが2021年1月。手応えを感じたのは2021年の春先ですね。1週間から2週間の合宿を繰り返し行いました。月曜日から木曜日は代表合宿を行い、金曜日から週末にチームで活動してもらうこともありました。

大会中は新型コロナウィルスの感染者が出てしまいました。どのチームも苦労していたようですが、チャイニーズ・タイペイ女子代表もベストメンバーを組めなかったことが悔やまれます。

台湾での指導で達成感を得られたところを具体的に教えてください。

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