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サポーターと会う信州 #女子サカ旅 WEリーグAC長野ホーム開幕戦を振り返る

長野県には、以前に仕事で何度も足を運んでいました。長野市よりも、新幹線でさらに一つ先、長野県飯山市の第5次総合計画、基本構想を策定する仕事をしていたからです。真冬にも会議があったので、飯山市では、とんでもなく大きな氷柱を目にした経験もあります。ただ同じ長野県でも、長野市は、飯山市ほど冷え込みが厳しくないらしいです。とはいえ、東京よりは、かなり気温が低く、朝は雨天だったこの日は、9月なのに肌寒かったことを覚えています。

出会いの多いWEリーグの旅

今回は、長野市で、AC長野パルセイロ・レディースのホーム開幕戦を観戦した2021年9月18日の旅をご紹介します。スタジアムはアツく熱狂しました。いくつかの出会いがあり、素晴らしい旅でした。

東京駅から長野駅まで、北陸新幹線に乗れば1時間20分ほど。名古屋駅よりも近く、旅情を楽しむ間もなく、あっという間に到着してしまいます。多くの人は、大宮駅の次の停車駅が長野駅であることを知らないかもしれません。

提灯が並ぶ長野駅

筆者は駅舎好きです。基本的には、木造の古く小さな駅舎が好きなので、長野駅は本来、興味の対象外となります。このような大きな駅なのですが、提灯が並ぶ駅舎に心が動きます。長く続く一直線の参道のようなデザインに「これぞ長野」という風情があります。そう、長野市は善光寺の門前町です。

長野駅

旧北国街道を歩き善光寺に向かう

8時42分に長野駅に到着。この後のスケジュールを考えると、朝のうちに、市街を散策しなければなりません。まずは善光寺に向かいます。長野駅のすぐ近くにまで、善光寺の参道の延長線上となる旧北国街道が伸びています。まっすぐな道が善光寺と長野駅前を繋いでいるのです。だから、昔から、長野市の中心街は旧北国街道の左右に広がっています。市役所も県庁も、信州大学もこの道の近くにあります。長野市は、まさに、善光寺と共に歴史を歩んできた街といえます。

善光寺へ続く道

長野オリンピックの小さなメモリアルパーク

旧北国街道を善光寺の方向に進んでいくと右に見覚えのあるデザインが目に入りました。聖火台のミニチュアも置かれています。ここはセントラルスクゥエア。長野オリンピック(1998年)の表彰式会場として使われた場所です。現在は、広場とステージで構成されるメモリアルパークとなっています。ここまで来ると、長野駅から善光寺までの、ちょうど中間地点(セントラル)です。

セントラルスクゥエア

旧北国街道には、古い建物を使用している郵便局、歌舞伎座を模したようなファサード・デザインの芝居小屋等々があり、歩く旅行客の目を楽しませてくれます。

善光寺郵便局

特徴的な形状の屋根、大きな本堂

そして、仁王門を超えるといよいよ参道。参道には土産物屋に加えて、周辺に、天台宗、浄土宗合わせて39の宿坊が軒を連ねています。看板の文字を見るだけでも楽しい気持ちになります。

参道に並ぶ看板

山門は、江戸時代中期の寛延三年(1750年)に建立されて以来、大勢の参詣者を本堂に迎え入れてきた歴史ある門です。様式は五間三戸二階二重門、屋根は入母屋造りの栩葺で、国の重要文化財に指定されています。山門楼上より、善光寺平を一望できて人気です。

しばらく進んでいくと、最後に大きな本堂が目に入ります。宝永四年(1707年)の再建で、江戸時代中期を代表する仏教建築。国宝に指定されています。

長野市を訪れたら大丸を外せない

本堂の中に入ることなくUターン。17時キックオフだというのに、何を急いでいるのかと言われてしまいそうですが、昼食を食べる時間が心配です。なぜかというと、今日は、ゴール裏のコアサポーターと会うのです。コアサポーターのサッカー観戦スケジュールは、普通の人が考えるよりも、概ね3時間くらい前倒しだと思っていただくとちょうど良いです。だから、今のうちに昼食を食べておく必要があります……といっても時刻は9時30分を回ったところなのですが……。

八幡屋礒五郎本店の裏口

ご心配無用です。参道から旧北国街道に出てすぐ、八幡屋礒五郎本店の向かいにある大丸は9時から営業しているのです。大丸は、その昔、AC長野パルセイロを応援する友人・まるいたろうさんに教えてもらった蕎麦屋です。この店の更科は美しい白で喉越しが爽やか。ゆっくり食べていると、あっという間に伸びてしまうデリケートな蕎麦です。デリケートな蕎麦……つまり美味いということです。今日も、ここで更科をいただくことにしました。

大丸の更科

旧北国街道は、以前に来たときよりもオシャレになった気がします。蔵づくりの飲食店、古民家カフェ、石造の建物の宿泊施設……落ち着いた雰囲気ながら、今の流行にマッチした店が並びます。

旧北国街道

オレンジが目立たない落ち着きある長野市の街並み

落ち着いた雰囲気といえば、長野市にお住まいの方にお聞きすると、このあたりは観光地ではないのだそうです。あくまで「善光寺さんにお参りするための道」。長野市は多くの宿坊が軒を連ねていることからわかるように「宗教都市」なのです。観光地にありがちな派手な看板や大きな声での客引きが見当たりません。長野市には「長野市の景観を守り育てる条例」や「長野市景観計画」があります。

旧北国街道で最も派手にポスターを貼っている店舗

その影響かもしれませんが、街はJクラブのホームタウン特有の賑やかさに欠ける気がします。街並みにマッチしてチームカラーの幟が立ち並んでいたり、大きなフラッグが商店の店頭で風になびいていたり、ビルがチームカラーに塗られていたりする、他のクラブのホームタウンと比べると、やはり、ここは静かな門前町なのです。チームカラーのオレンジが目に入ることはほとんどありません。でも、何箇所かの店舗で、控え目に貼られたポスターを見かけることができました。

物静かなコールリーダー

11時15分に待ち合わせして小林広通さんとお会いします。この日の試合は17時キックオフです。なぜ、これほど早くにお会いするかというと、この日がホーム開幕戦だからです。特に、コアサポーターは早くから応援の準備をします。久々に持ち込む太鼓、キャリーバックで運び込まれるスタジアム内を装飾する多種多様な横断幕、新年のご挨拶のようにお会いする仲間たち……そのため、筆者は、そうしたサポーターの準備よりも早い時間を選んでお会いすることにしたのです。

小林さんはAC長野パルセイロ・レディースのコールリーダーをしています。Jクラブを含む各クラブのコールリーダーの多くは、勢いのある雰囲気や突破力を感じさせる人物です(私も1990年代にコールリーダーをしていたことがあります)。ところが、小林さんは、これまでにお会いしたコールリーダーの中で最も静かな佇まいの人物かもしれません。

お会いするのは初めてです。しかし、サッカーを愛する者同士だと、サッカーのこと、応援のことで、すぐに会話が弾んでしまうのは不思議です。でも、それは当たり前のことなのかもしれません。一緒に同じ大きな目標に向かって歩んできたのだから。

小林さんは、AC長野パルセイロ・レディースが、チャレンジリーグで戦っていた2013年頃から応援し続け、この日、プロリーグのホーム開幕戦を迎えます。感慨もひとしおといったところでしょう。

全国のサッカーファンから大評判の長野Uスタジアム。収容人数は1万5千491人でJ3の公式戦を開催しています。2022年からは、あの信州ダービーの舞台となります。空撮で見るとU字型に見える、美しい屋根付きの専用スタジアムです。周辺は稲刈り間近な水田でした。

長野Uスタジアム近くの水田

「推し」と「萌え」の大きな違い

12時にスタジアム近くで待ち合わせしたのは、もっちさん、Kyaorinさん、えみゅーさんの女子3人。天気予報が雨だったので、長野Uスタジアムがある南長野運動公園の近くのファミレスでお会いする予定だったのですが、雨が降らなかったので予定を変更。密を回避して屋外でお会いすることになりました。

3人とお会いして、改めて感じたのは「『推し』の大切さ」そして「『推し』と『萌え』の違い」です。Kyaorinさんのツイッター・アカウントでは、このように自己紹介しています。

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