西部謙司 フットボール・ラボ

「グスタフソンが輝くとき、浦和は素晴らしいチームになる」。6番とともにある浦和の理想郷は実現可能か?

理想と現実が垣間見えた開幕戦だった。理想のスタイルを追求する浦和の心臓としてプレーしたグスタフソンは攻撃で素晴らしいプレーを披露しながら守勢時に脆さを露呈した。はたして、彼への批判は的を射ているのか? 浦和が目指すスタイルの行方は?

批判が巻き起こった「緩慢な守備」をどう見るか? 

「1タッチでプレーできるのは素晴らしい選手。2タッチは普通。3タッチなら良くない選手だ」(ヨハン・クライフ)

このクライフの説に従えば、サミュエル・グスタフソンは「素晴らしい選手」であることを開幕のサンフレッチェ広島戦で示していました。ワンタッチパスのクオリティは素晴らしい。

ただし、クライフの説は彼の理想としているサッカーにおいて、あるいは彼が率いるチームにおいての話でもあると思います。

Xに#グスタフソンとあったので何だろうと見たら、賛否両論がポストされていました。否のほうは「遅い」「守備ができない」というものが多かったです。これもまたもっともな意見でしょう。

ただ、まるっきり守備ができないわけではなく、前に出て潰すのはある程度やれている印象でした。しかし、周辺のエリアをカバーする敏捷性がない。広島の2点目は左サイドの加藤陸次樹のクロスを大橋祐紀がヘディングで合わせたものでしたが、そのときサイドに釣りだされていたグスタフソンはあっさり切り返しでかわされ、楽々とクロスを上げられています。抜かれてはいないのですが、緩慢な印象を持ったファンも多かったものと思われます。

Jリーグのボランチは俊敏な選手が多い。広島の満田誠はまさにそのタイプ。開幕戦ではシャドーではなくボランチでプレーしていましたが、前後左右に素早く動けて技術も高い。まさにJのボランチという感じでした。昨季、ボランチへコンバートされて存在感をみせた香川真司(セレッソ大阪)も敏捷系攻撃的MFでしたし、鹿島アントラーズでボランチに起用されている知念慶も本来はFW。俊敏の転用が有効です。横浜F・マリノスの喜田拓也、渡辺皓太はいかにもJのボランチですしね。こうした俊敏なボランチと比べると、グスタフソンはいかにも遅い。俊敏なアタッカーが多いJではなかなか難しいタイプといえるかもしれません。

素晴らしいクオリティの「6番」とともにある浦和の理想郷。残された時間は…… 

広島は前線からマンマーク気味にハイプレスをかけていました。

加藤、大橋、ピエロス・ソティリウの3トップがペナルティーエリアの幅を守るので、浦和のCBとグスタフソンに高い位置から圧力がかかりました。サイドへ展開すると、そこにもウイングバックが浦和のSBに鋭く詰め寄っています。一方で、浦和の3トップに対して広島の3バックという関係なのですが、前向きのプレスがかかっているので1対1になっているウイングへ配球しても、広島の屈強な塩谷司、佐々木翔をタッチライン際で背負う形にしかならない。そのため前線が1対1になっている優位性をあまり生かせませんでした。

頼みのチアゴ・サンタナも荒木隼人に完封され、浦和はビルドアップの出口を失った状態で自陣から出られない。そして奪った広島が攻勢。この守勢の流れはグスタフソン向きではありません。

同じタイプのセルヒオ・ブスケツがバルセロナでどんなプレーをしていたのか。

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