西部謙司 フットボール・ラボ

シーズン移行は結論ありき? 「公式発表」では説明されていないJリーグの真の狙いを読み解く【特別コラム】

Jリーグのシーズン移行は本当にうまくいくのか? 真の目的は何なのか? いまいち不明な点が多いので考察してみました。

「秋春」ではなく「夏春」制。30年後を見越しての改革も感じる矛盾点 

Jリーグは秋春制へのシーズン移行を発表しました。8月開幕、ウインターブレイクを挟んで5月閉幕。夏春制ですね。

時間をかけて協議を重ねてきたわけですが、何となく結論ありきの匂いもします。まあそれはいったん置いておきまして、Jリーグがシーズン移行に踏み切ったのは「次の30年」のためという説明です。

30年前、Jリーグとプレミアリーグの売り上げは、ともに500億円規模でほとんど変わらなかった。ところが、その後の30年間でプレミアは20クラブの売り上げが8300億円に対して、J58クラブで1375億円。とんでもない差がついてしまった。ちなみに、プレミア20クラブとJ58クラブを比べているのもちょっと引っかかりますが、それも後で。

で、この途方もない差を覆し、Jリーグが「世界一のリーグ」になることが次の30年の大目標とぶち上げています。そしてJリーグの選手を中心とした日本代表がワールドカップで優勝すること。スポーツですからね、どこまでも高みを目指していく心意気はいいでしょう。

しかし、一足飛びにそこまで到達できるはずもなく、まずは次の10年で基礎を作りたい。Jリーグは次の10年に「まず目指すべき状態」として、いくつかの項目をあげています。

 

ACLE 4年に優勝2回=クラブワールドカップに2チームが出場

●クラブW杯 ベスト8以上

●トップクラブの売り上げ 200億円(現在のローマ、アヤックス、ベンフィカなどと同等)

 

ほかにも「Jリーグの中に世界基準を作る」、「代表の30%がJリーグの選手」、「全クラブの売り上げが1.5~2倍増」があります。この「目指すべき状態」もなかなか大変だとは思いますが、具体的な目標を立てるのは大事かもしれません。

さて、では夏春への移行がこれらの理想にどう寄与するのかという話になります。

秋春制は本当に効果あるの? Jリーグの真の狙いを読み解く

夏春シーズンのメリットとしてJリーグがあげているのは、まずACLとのシーズンの一致です。そして欧州マーケットとの一致。3つめが猛暑の試合を減らすこと。

え、それだけ? と思うかもしれませんが、書いてあるのはそれだけです。シーズンを一致させることでACLEを4年に2回優勝し、欧州マーケットと合わせることで移籍金をがっぽりといただく。そして6、7月をオフにすることで猛暑の試合を減らし、まだ暑いに決まっている8月を底としてインテンシティは上昇して「山型」を描く……。

あの、もう少し説明がほしいです。だって、シーズンを合わせるだけでACLEを2回に1回の優勝なんてできますか? サウジアラビアのクラブはめちゃ補強していますよ。売り上げが倍増するとも思えません。お客さんにとって、6月や7月のほうが12月や2月より観戦しやすいのではないでしょうか。申し訳ないのですが、なんかデカイこと言っているわりに裏づけが希薄な感じがしてしまうのですが。

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