一本槍で戦うべからず? 欧州強豪vs Jリーグ勢の攻防で見えたサッカーの真理
マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンなどが行われた欧州強豪勢とのフレンドリーマッチ。ハイレベルな攻防のなかで何が見えたのか。横浜F・マリノス、川崎フロンターレの善戦が示唆するものとは?
局面が色分けされている現代サッカー
J1の中断期間に欧州強豪クラブとの親善試合が各地で開催されました。欧州勢はプレシーズンでコンディション的には底なので、シーズン中のJクラブはかなり善戦しています。「フィジカル」の差が埋まれば強豪相手でもけっこういい試合になるというのは前回記したとおりです。
試合の構図もJ1で行われている試合とほぼ同じでした。これは世界的にそうなのかもしれませんが、局面がはっきり分けられるんですね。守備側のハイプレス、ミドルプレス、ロープレス(いわゆるバスを置く撤退守備)があり、対する攻撃側には自陣ビルドアップ、中盤の組み立て、押し込んでの崩しという局面があるわけです。その中にカウンターがあり、その攻防がある。
1990年代ぐらいは、中盤のつぶし合いと裏の取り合いという、どちらが攻撃で守備かよくわからない展開が多かったのですが、現在はかなりスッキリしたと言いますか、局面ごとに色分けされているように感じます。
今回はマンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンの試合を中心に、そのあたりがどうなっていたのか、対戦したJリーグ勢はどうだったのかについて考えてみたいと思います。
バイエルン相手にビルドアップで完勝したシティ
ハイプレスvsビルドアップで最も優位性を示していたのはCL王者のシティでした。
バイエルン戦でのビルドアップの基本的な構図はこんな感じ(図1)。シティの6人に対して、4-4-2セットのバイエルンは4人のプレス隊です。もうこの時点でシティは自陣に2人の数的優位があるわけですが、フィールドの左右半分で見ると1人ずつ余っていることになります。この形になったときは、バイエルンはプレスしてもボールを奪えませんでした。
ハイプレスを続行したければ、バイエルンは援軍を送る必要があります。ボランチがこの局面に加勢するわけですが、そうするとボランチのいたスペースをインサイドハーフやCFが下りてきて縦パスを受けるという流れでした(図2)。
さらに、例えば引いてきたCFにバイエルンのCBがついてきたときは、バイエルンの守備の中央部が1人のCBになるので、シティのウイングがCBの左右のスペースを同時に急襲する動きを見せています(図3)。
ここまで段取りを組まれてしまうと、バイエルンとしてはハイプレスを強行すること自体が墓穴を掘ることになりますから諦めざるを得ない。何とかうまくはめ込んでもシティにサイドチェンジなどでキャンセルされるとやり直しになり、結局ボールは奪えないしプレスもかからない。というわけで、バイエルンはミドルゾーンまでは撤退することになり、シティのこのゲームでのボール支配の優勢が決まりました。
シティの初期配置がキマらないときのハイプレスは効果的でしたが、6対4の構図を作られてしまうとハイプレスはするだけ無駄。シティのビルドアップ対バイエルンのハイプレスは、シティの完勝となったわけです。
一本槍では闘えない? 面白かったマリノスとシティの攻防
シティのようにビルドアップで優位な構図を作って、守備側のハイプレスを外していく作業はJリーグでも行われています。
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