西部謙司 フットボール・ラボ

ACL浦和レッズに見る「日本の戦い方」の変わらぬ景色。我々はいつまで弱者のサッカーを続けるのか?

ACL決勝の第1戦で強豪アル・ヒラルと引き分け、ホームでの第2戦に有利な状況で臨めそうな浦和レッズ。したたかな戦いぶりはワールドカップにおける日本代表と重なる。そこに見えるのは限界か新たな景色か?

日本が「世界」と戦うためのスタンダードが見えてきたが… 

ACL第1戦、浦和レッズはアウェイで勝ち点1を持ち帰ることができました。興梠慎三の得点はかなりラッキーではありましたが、アル・ヒラルの攻勢を1点に抑えての1-1は良い結果だと思います。

アル・ヒラルは国内リーグ最多の優勝18回、ACLも4回優勝しています。名門中の名門。歴代監督の名前も豪華です。現監督のラモン・ディアスは2回目。マリオ・ザガロも2回やっていますね。ラディスラオ・クバラ、ヴィレム・ファン・ハネヘム、サフェト・スシッチ、アルトゥール・ジョルジ、エリック・ゲレツ、レオナルド・ジャルディム…日本でもお馴染みのオスカー・ベルナルディ、ア・デモス、ペリクレス・シャムスカ、イワン・ハシェック、トニーニョ・セレーゾも指揮を執っています。

現在のメンバーはサウジアラビア代表にブラジル人のミシャエウ、FCポルトにいたマリ人のムサ・マレガ、FC東京でプレーした元韓国代表のチャン・ヒョンスもいますね。

試合は予想どおりアル・ヒラルの攻勢でスタートしました。浦和は4-4-2のブロック、ミドルゾーンの待ち受け守備で対抗。圧倒的にボールを支配されますが、まあ想定内でしょう。13分に先制されましたが、その後も粘り強く守り、53分に興梠のゴール。

大久保智明のスルーパスをアル・ヒラルのDFが引っかけますが、コースが変わったボールはポストに当たって跳ね返ります。そこに抜け目なく詰めた興梠が押し込んで1-1。この得点自体はラッキーですが、浦和は何度かカウンターからのチャンスもあり、奪ったボールを全く運べないわけでもなく、ホームの第2戦はもっと攻められるでしょうから優勝のチャンスはありそうです。

ところで、この試合の浦和の戦い方はカタールワールドカップでの日本代表を彷彿させるものでした。というか、日本が「世界」と戦うためのスタンダードが固まってきた感じがしましたね。

カウンターで結果を残してきた日本サッカーのジレンマ 

ひと言で「世界」といっても広うござんす。ですが、日本が対する「世界」は主にワールドカップであり、基本的に格上の相手と考えていいでしょう。ACLはアジアですが、アル・ヒラルはやや格上の相手ではあるわけです。

ボール支配力の強い相手に対して、日本がミドルゾーンにブロックを置いて耐え忍び、一発のカウンターに賭けるという構図は、関塚隆監督が率いて4位のロンドン五輪あたりから対世界のスタンダードになっています。ワールドカップで日本代表がベスト16に進出したのは2002201020182022年の4回ありますが、大雑把に戦い方はほぼ一貫していて、これ以外のボールを支配するスタイルのときは漏れなくグループリーグで敗退しております。

サウジアラビアは「アジアのブラジル」です。柔らかいテクニックとパスワークはトップクラス。アル・ヒラルは典型的なサウジアラビアのクラブといった趣。今回のチーム構成はフィジカルの強いパワー系の2トップ、速くて突破力のあるサイドハーフ、ボランチは長身でボール奪取に優れたカンノとサウジアラビア代表でもパスワークの中心であるアル・ファラジが司る、ある意味スタンダードな4-4-2でした。各ポジションにそれらしい選手を揃え、アル・ファラジを軸に巧みなパスワークを披露していました。

ただ、浦和のブロックの中にはなかなか侵入できず。そうかといって外回りで叩いてくるようなダイナミックな展開はあまりなく、様子をうかがっているうちに時間が経過してしまった感じ。

強いことは強いのですが、浦和とすれば戦いやすい相手だったかもしれません。浦和の整理された守備ブロックに対して様子見になってくれたので、ボール奪取からのカウンターの機会も出てきます。これは日本が「世界」に勝つときのパターンと言っていいかもしれません。

ただ、あえて難を言うとずっとこのままなんですよね。

このままでは「世界一」は夢のまま? ヒントは南米クラブにあり?

もう10年以上はこんな感じなので伝統といえばそうなのですが、ずっと立場が弱者のままです。

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