西部謙司 フットボール・ラボ

お金のないクラブに朗報? 王者・川崎も撃沈。J1上位勢の新たな倒し方とは?

川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島、サガン鳥栖、セレッソ大阪、浦和レッズなどポジショナルプレーを採用するチームの多くがJ1上位を占めている。充実した戦力(一部を除く)と洗練された戦術。とても中堅以下のクラブに勝ち目はないのか…と思いきや、どうやらそんなことはなさそうです。見事、川崎フロンターレを倒した湘南ベルマーレの戦い方は実に多くの示唆に富んでいました。

多くのクラブがぶち当たる「ポジショナルプレーの壁」 

28節の注目は川崎フロンターレが湘南ベルマーレに敗れたこと。暫定ながら首位の川崎が、残留争いの湘南に2-1で負けています。内容的にも湘南が圧倒とまではいえなくても、流れは湘南にありました。

その背景としてはコンディションの差があったと思います。川崎は中2日の試合、一方の湘南は10日以上試合間隔が空いていました。湘南としては試合勘の心配はあったかもしれませんが体力的にはかなり有利といえる状況です。

今回はこのコンディションの差が何をもたらすのかについて、話を進めていきたいと思います。というのも、それが今後のJリーグのあり方に何らかの影響を与えるのではないかという仮定ができるからです。

今季のJ1を俯瞰すると浮かんでくるのが「ポジショナルプレーの壁」という言葉です。

ここ数年で、Jリーグにもポジショナルプレーが浸透してきました。先行グループで上手くいっている川崎、横浜F・マリノスが優勝を争っていて、実力的にも現在のトップ2といっていいでしょう。サンフレッチェ広島、サガン鳥栖、セレッソ大阪、浦和レッズなど対抗勢力も濃淡はありますがポジショナルプレーを採り入れていて、FC東京も今季からアルベル監督を招聘してそちらに舵を切りました。

ポジショナルプレーを装備したチームの争いという様相なのですが、むしろポジショナルプレーがもはや特別な戦術ではなく、標準装備されるものになってきた感があります。しかし一方で、「ポジショナルプレーの壁」に直面しているチームも多い。そこをどう越えていくか。それぞれの試みがあり、今季はその意味で過渡期といえる状態にみえます。

そして壁の越え方の1つが、湘南対川崎に示唆されているように思いました。

「ポジショナルプレーの壁」の乗り越え方と「ポジショナルプレー勢」の倒し方 

「ポジショナルプレーの壁」とはどういうものなのか。その前にポジショナルプレーとは何かという疑問もあるかもしれませんが、それについてはこれまで何回か取り上げてきたと思いますので省略します。大雑把にいうと選手のプレー判断を助けてくれるツールであり、車のナビゲーションシステムみたいなものです。どういうときに、どこにいるか、どう変化するか。それがおよそ決まっているので、周囲を見なくても配置の見通しがある程度できるという利点があります。

では、ポジショナルプレーを装備したときの「壁」とは何なのか。

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